二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【REBORN】 皓々と照る月 【標的33更新してみた】 ( No.95 )
日時: 2012/10/16 20:07
名前: 苗字(元なゆ汰 ◆UpTya9wNVc (ID: gwrG8cb2)

「へえ、レヴィと仲良くなったんだ? 珍しい、レヴィがたかが新人を認めるだなんて。明日槍でも降るんじゃないかな」


 マーモンさんが、ふわふわと宙を飛びながら私に言った。マーモンさんは暫くふよふよと宙を彷徨って、たまたま通りかかったベルの頭の上に降り立つ。私には、わからない。——“へえ、レヴィと仲良くなったんだ?”マーモンさんの言った言葉の意味が、わからない。あの言葉に意味なんてないと言われればそれまでなのだが、私には何か意味深な気がしてならない。「マーモンさん、」フードの赤ん坊の名を呼ぶ。なぜだろう。彼を見ると、リボーンくんを思い出す。


「“さん”なんていらないよ。ついでに“くん”もね」
「あっれ、めっずらしー。マーモンが呼び捨て許すなんて」
「別に。ただすぐにヴァリアーなんて辞めるだろうから、短い間だけでも名前を呼ばせてやろうかなと思っただけだよ」


 それは、つまり私がここから逃げるということ。私の決心が弱いと、そうマーモンさんは思っているのだ。マーモンさんの言葉に少しムッと来たから、半ばヤケクソに彼の名を呼び捨てで叫ぶ。


「マーモン! ……今さっきの言葉の本当の意味は、なんですか」
「ふうん、あの言葉に意味が込められてるってわかったんだ? 結構やるね。——つまり僕が言いたかったのは、君みたいな弱者に、幹部と馴れ合うような時間はあるのかということさ。それとも何だい? 幹部に媚を売ってヴァリアーに留まろうとしているわけかい? これだからいやなのさ、弱者は」


 マーモンの声色が、いやに冷たい。背筋に冷たいものが走り抜けて、マーモンの殺気に眩暈を覚えた。“弱者”という言葉は、私の頭に何度も何度もリピートされる。ベルが、「ししっ」と笑った。さも、面白そうに笑った。けれど、私は笑えない。マーモンも、笑っていない。驚くほど無表情で、私を見ている。いいや、違う。彼は、嗤ってる。心の中で、私を嗤っているのだ。


「修行だって、そうさ。毎日一人ずつ幹部が君につくらしいけど、僕はごめんだ。君みたいな娘に殺しを教えるだなんて、そんな時間の無駄なこと。君がもしヴァリアーにこのままいて、任務に行くときが来たとしても、君はきっと足手まといに過ぎないんだろうね。僕はそんなのいやさ。君が失敗するだけで報酬が減るんだからね。それに君、本当は恐いんだろ? 本当は、戦うのも誰かを殺すのも、恐いんだろ。そんな覚悟もない君が、ヴァリアーの名を背負うのは間違ってる」


 沈黙。言い返したい言葉はいくらでもあるのに、それらはすべて喉につっかえて出てこない。マーモンが、溜息を吐いた。ベルは何も言い返さない私を見て、つまらなそうにナイフをいじってる。マーモンが「やっぱりね」と呟いて、ベルの頭から降りた。やっぱりね。その言葉が、耳の中を反復する。ベルも、踵を返した。


「——っ」


 声が、出ない。言い返したいのに、声が出ない。声を出そうと口を開くけれど、聞こえるのはやっぱり息をする音だけで。マーモンが、ベルが、私に背中を向けて歩みだす。思わず手を伸ばした。マーモン、ベル。待って。待ってくれ。お願いだ私。声を、出してくれ。決めただろう?目標を、見失わないと。「約束を、したのです」それは、掠れた、声だった。マーモンがぴたりと立ち止まり、ベルが白い歯を見せて笑いながら振り向く。もう一度、息を吸って声を出した。


「約束を、したのです。必ず強くなる、と。強くなって見せる、と。——私自身に。私自身に、約束をしたのです。だから、私は強くなる。今は弱者であろうとも、きっと私は強くなる。だから、ここに来た。だから、ヴァリアーに来た。」


 私はそれだけ言うと、マーモンの返事も聞かずに踵を返した。早足で、すたすたと長い廊下を歩く。


 目標を、見失わないと決めた。私は私自身に約束した。きっと、強くなると。復讐を、成し遂げる、と。