二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 黒子のバスケ〜拝啓、キセキの君たちへ〜 うたかた花火 ( No.5 )
日時: 2012/09/24 19:21
名前: このみ (ID: xhJ6l4BS)
参照: http://yaplog.jp/momizi89/


赤ち—ん、と呼ぶ声が後ろから聞こえる。
振り向けば、2mを超える巨人が覆いかぶさって来た。

「お腹空いたー」
「今黄瀬が場所取りをしている。そこに着いたらお菓子が沢山食べられるぞ」
「うぅ——」

息が出来なくて苦しいから、前に向き直してそう告げると、唸る紫原。
はぁ、と溜息を吐くと、鞄から飴玉を出した。

「?飴ちゃん?」
「これで我慢しろ」
「わーい!赤ちん大好きー」

ビリッと袋を破ってポイッと口に含む。体が大きすぎる所為か、飴玉が本当に小さく見える。
圧し掛かってくる紫原をズルズルと引き摺りながら歩いていると、大人数(全て女子)に囲まれている黄色い頭を見つけた。

「黄瀬」
「あ!赤司っち!場所取ったッスよ!!皆、ごめんね、友達が来たから」
「「「「「ええ〜〜〜〜!!!!」」」」」

騒ぐ女子たちをかわしながら近づいてくる。
モデルも大変だな。そう言ってやれば、仕事ッスから、と困った笑顔で返された。

「皆さん、もう始まりますよ」
「うわぁっ!!黒子っち、いつからそこに!?」
「最初からです」

お決まりのやり取りをする黒子たちの横に座り込む。
隣では早速紫原がお菓子の袋を開けていた。

「遅かったな」
「……その声は青峰か?夜だからお前が見えない」
「俺はそんなに黒くねェっっ!!」

もちろんちゃんと見えている。
あと何分だろう。携帯を開くと、ディスプレイに18時29分と書かれてあった。
パタンと携帯を閉じると同時に、赤司の前に大きいリラックマのぬいぐるみが置かれた。

「それが今日のラッキーアイテムか」
「ああ。もう少し大きい方がいいのだが、家にこれしか無かった」
「十分大きいがな」

そう言った時、「ひゅ〜〜〜〜〜〜〜…………」という音が聞こえ、

ドオオオン

花火が上がった。

色取り取りの花火。
美しい。だが、一瞬で散ってしまう。
それから何分か花火を見つめていると、情けない事に首が痛くなった。
見るのをやめて周りを見渡すと、橋の柱に寄りかかりながら花火を見上げている女性を見つけた。
それがただ見上げているだけならば、何も思わなかった。
でも、彼女は一人で、泣いていた。
静かに、涙を流していて————放って置けなかった。
後ろに座っている人たちに迷惑にならないように屈んで、彼女の元まで向かう。
皆には気付かれなかった。アホみたいに花火ばかり見つめていたからだろう。

「こんばんは」
『っ!?』

声をかけると、彼女は勢いよく振り向いた。
綺麗だなと、素直に思った。
綺麗に胸のあたりまで伸ばされた黒髪。涙の浮かぶ大きな瞳。
小さな口に鼻筋の通った鼻。自分より15cm程小さい身長。
彼女によく合う、浴衣。
それら全てを花火が照らし出していた。



18時37分54秒————
(そして僕らは出会った)