二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【いろんな短編】君と歩いた通学路【ジャンル多々】 ( No.5 )
日時: 2012/09/26 21:19
名前: 愛河 姫奈 (ID: sC1Xeyy3)
参照: http://id37.fm-p.jp/336/8710kuma/

「…また、来ちゃった」

私はあの博物館に毎日のようにいっていた。
理由は分からない。足が勝手に動くのだ。

9歳の初めて美術館に行ったあの日から
私はもう11年の月日を得て、20になりました。
絵の男の人はは肖像画に入ったまま。
姿は、あの日からまったく変わっていない。


私は、その肖像画を見るたびに焦燥感を覚える。


ー何故だろう。


この男の人、会ったことがないはずなのに。
どうしてか、酷く懐かしい。

私は
この人を
何故か
知ってる。


そっ、と肖像画に触れる。
しかし、肖像画は当たり前のように冷たかった。

涙が掠れる。
声を出そうとして、出ない。

アナタはきっと
そこにいるのに。
触れてるのに。

ー触れれないんだ、心には。


もう一度、触れる。
刹那、一瞬だけ優しい温もりを感じる。


「ギャリー…!」

口から出た言葉。
覚えていない筈なのに、覚えている。
きっと、この人はギャリーって言うんだ。



「私、イヴだよ…。
 覚えてる?

 …私も、そっちに残りたかった。
 ギャリーと、一緒に居たかったよ…」


泣き崩れる。
人の目なんて、気にしていられない。



「…メアリーのせいなの?
 メアリーを消せばー…アナタは…」


アナタは、戻ってこられるの?
全てを思い出してしまった私は
アナタを戻すことで精一杯なんです。


「だけど、できないよ。
 メアリーも、大切なの。

 でも、私にとってギャリーはそれ以上…でもっ」


ふと、手に痛みを感じてみてみる。
懐かしく感じる薔薇。



真っ赤な薔薇。
私の、命の結晶だった物。

あのゲームで使っていた薔薇。




私のLIFE。
アナタのLIFEもすぐ傍に。
青い薔薇。綺麗だった。
アナタの心のように。


真っ青な、美しい薔薇。
私は、まだ覚えている。




メアリーに、ちぎられてしまった薔薇は
今、どうなっているのだろう。


だけど
アナタは生きてるよね。
だって、温もりを感じたから。

ねぇ、好きでした。
否、今も大好きですよ。



アナタに「愛してる」って言いたいです。
だから、出てきてほしいです。






「ギャリー。出てきてよ」

大丈夫。
きっと、出てこれる。
三人で……一緒に行こうよ。





「…ばーか」

薔薇を投げる。
薔薇は—…



「え…?」



肖像画に吸い込まれていった。





薔薇の代わりにでてきた人影は


「え…?」


さっきの肖像画の人で—…。




「「きゃああああああああああああああああああ!!」」





女の子の上に降ってくるなんて、非常識だ。
だけど。


だけどー…



ギャリーが…!!



「おかえり、なさい…!!」

そう言うと、ギャリーは微笑んだ。



「ただいま」

















この日から

【忘れられた肖像】は

私の中で忘れられることはなかった。

















「あっ、ギャリー…」

家に帰ると、メアリーがギャリーを見て挙動不審になる。
だけど、ギャリーは優しかった。




「約束したのよ。イヴと。
 絶対、一緒に戻ってくるってね」


メアリーは驚いた。



「ど、どうして…戻ってこれたの?」



「それはー…」


ギャリーは少し考えたように言った。





「薔薇、かしらね」






「ふーん…。
 そ、そう言えばさ。ギャリー…怒ってないの?
 私は一度、ギャリーを殺した同然の事をしたんだよ?」


メアリーは言った。








「それでも」





「今のアンタは、後悔してるんでしょ?
 だったらいいわよ」







メアリーは涙をこぼした。

















後日、あの肖像画は名も見た目も変わっており





【闇夜に生える一筋の光】
と言う題名で
赤い薔薇が鮮明に描かれていた。