二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼〜言ノ葉ノ姫君〜 ( No.13 )
日時: 2012/10/20 17:32
名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)

5話 保護された者

土方と沖田が屯所に帰ると、幹部連中が多少慌しく動いていた。

「あっ。土方さん!!」

声をかけてきたのは、幹部の中でも最年少の青年。藤堂平助である。
手には水の入った桶を持ち、桶の中の水は血に染まっている。

「事情は後で説明する。千鶴は?」
「あぁ、今治療が終わってさ。…そうだ!土方さんを捜してたぜ!」

口早に伝えると、井戸の方へ立ち去っていく。

「土方さん、僕着替えてきてもいい?」
「あぁ、着替えてこい。」

沖田の言葉に軽く返してから、ひときわ明るい部屋に目を向けた。
その時その部屋の障子が開き、中から出てきたのは

「千鶴。」
「あ、土方さん!」

新選組屯所に保護されているワケありの美少女——雪村千鶴だった。

「ご苦労だった。…相手の傷の具合はどうだ?」
「はい。斬られていたのは瞼で、失明はないと思います。」
「そうか…俺を捜していたらしいが?」

土方の台詞にスッと千鶴の視線が落ちる。少しの間俯いてから、とても
言いにくそうに報告した。

「実は…お着物がだいぶ汚れてしまっていたので、もしかしたら他にも
 お怪我なさっているのかもと思って、脱がせて…もらったら…。」
「女だったってわけか。」
「はい…って、え!?」
「薄々そんな気はしてたが…ん?どうした?」

唖然としたのもつかの間。千鶴はすぐに表情を変え噛みついてきた。

「どうした、じゃありません!!私びっくりしたんですよ!?わかって
 いたなら、原田さんに言っておいてくれればっ…!!」
「確信がなかったんでな。すまなかった。」

土方に頭を下げられては、これ以上言う気はしない。大体千鶴自身、
女性ながら此処に保護された身なのだ。
…己が目的を果たすために。


その後二人で、少年の休んでいる部屋に向かった。

「こちらです。」

部屋の真ん中に敷かれた布団の上に、少年は顔の右半分を包帯で覆い
眠っていた。

「……見られただろうな。」

ふと呟かれた土方の言葉に、千鶴が小首をかしげる。

「いや、何でもねぇ。」
今だ眠っている少年を一瞥すると、土方は何も言わず、静かに部屋を
出ていった。