二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼〜言ノ葉ノ姫君〜 ( No.16 )
日時: 2012/11/25 09:38
名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)

八話 闇より出でし者

くるりと土方が背を向け、全員がそれに続こうとした時、一人の青年の
声が響いた。

「みーつっけたっ!」

声と同時に氷の飛礫つぶてが幹部達を襲った。全員でとっさに
かわす。

「何だ今のは!?」
「おい、全員無事か!!」
「っ…何とかね。」

今自分達がいた所を見ると、障子には大穴があき、襖はなぎ倒され、
廊下の木板は飛礫で抉られていた。避けなかったらと思うと、かなり
ぞっとする。

「いけませんよ、急襲など失礼ではありませんか。」
「はぁ…お堅い事で、燐華さん。」
「…何者だ、お前ら!?」

砂煙の中から姿を現したのは、若い一組の男女だった。二人とも、闇を
切り取ったかの様な漆黒の忍び装束を着ている。目印のつもりか否か、女性の方には裾に椿の花があしらってあった。

「失礼致しました、新選組の皆々様。私、蛇の目の隣華と申します。」

女性は見事なまでの無表情で一礼した。感情が全くない。
その美しい顔は、面なのではと思ってしまう。

「ども、蛇の目の凍真でーす。…ったく、やっと見つけたぜ、姫?」
「くっ………」

姫。凍真は今、確かに少女の事をそう呼んだ。怯えたように一歩下がると、少女は千鶴の腕にしがみ付く。

「参りましょう`千乃`様。兄上もお待ちして—」
「ふざけないでッ!誰がもう一度あんな所にッ!!」
「…しゃーねぇ。…なら力ずくだ!!」
「お赦しをッ!!」

幾つもの氷の塊とまばゆい光が一つとなって、千鶴と少女に向かって
くる。千鶴が目をつぶり諦めかけた時、自分の目の前に少女の背中が
見えた。

「西を守護セシ猛き獅子よ!!今我が身に宿り、力を与えたまえ!
 その剛身は我が身と共になり、その遠吠えにより悪しき物を遙か彼方
 へと退けよッ!!」

難しい一文を慣れた様に暗唱し、両手を前にかざす。すると、迫って
きていた氷と光は、何かに押し負けた様に消滅した。

「ひゅう。さすが姫さん。」
「やはりお戻りになりませんか…」
「私は戻らない!帰りなさい!」
「…………」

その様子を、幹部達は呆然と眺めていた。