二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼〜言ノ葉ノ姫君〜 ( No.17 )
日時: 2012/12/06 18:09
名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)

九話 言葉術

重く圧し掛かる様な沈黙と、身体を射抜くような鋭い殺気がその場を
支配していた。

「さぁ千乃様。参りましょう。」
「俺らも任務なんでね。わかってくれないかなー?」

じりじりと少女に手を差し伸べて迫って来る二人の姿は、良く言って
忠実な従者。悪く言えば、暗殺者に思えた。

「任務…?どうせ`あの人`からでしょ。…私を利用する為に!」
「あの人……?」

幹部達は何がなんだかさっぱりだ。只一つだけ言えるとしたら、急襲
してきた二人は、少なくとも少女が目的だという事。

「…はぁ。しゃーねぇ。……燐華さん!!」
「了解。」

凍真が呆れたようにため息をつき、燐華と声を掛け合う。そして

「全てを凍てつかせたる存在よ!今我の鋭き矛となりて、彼の者共を
 打ち滅ぼせッ!!」

少女に向かって、槍の穂先の様に尖った氷の飛礫が無数に放たれた。

「何度来ても同じ!北を守護セシ二対の水生よ!今我の意思と共に…」
「犠牲は好みませんが!」
「なっ!?」

呪文の様な言葉は途中で止められた。燐華の標的が、千鶴だったから。

「赦せ、名も知らぬ娘!…全てを消しさる紅き光よ!今我が力となり、
 全てを燃やしつくせッ!!」

少し幹部達から離れて交戦していた少女は、いくら走っても間に
合わない。千鶴に、幹部達に火柱が突進する。そして同時に、少女にも凍真の放った氷の矛が迫りくる。しかし、少女の眼中に氷の矛はない。あるのは、炎に飲まれそうになっている人間達だ。

…なん………様……い…………ああ……ぁぁ……ぁぁぁぁ

「ぁぁぁぁぁぁああッ!!!!!」

雄叫びと共に、彼女の包帯に覆われた右目が、淡青色に光った。少女が手を伸ばすと…

「…!」

氷も、火柱も、風も。…全てが、停止した。