二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼〜言ノ葉ノ姫君〜【「作者より」新更新】 ( No.19 )
- 日時: 2012/12/26 15:07
- 名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)
十一話 蒼い宝石
二つの悪意が消え去った、夜の新選組屯所。暫くの間、彼らはただ呆然
と立っているしかなかった。
「……………」
しばらく俯いていた少女が、意を決したように顔を上げる。そして、
新選組の面々、主に千鶴の方を向いて、深く、深く頭を下げた。
「ご迷惑をお掛けしました。…そして、ありがとう」
「………」
謝ったのは、今の二人が自分に関係があると分かっていたため。そして
最後の礼は、自分の怪我を治療してくれた事に対して。
長くも短くもある二秒間。頭を下げ終わると、目を軽く伏せたまま門に
向かって走り出した。
「っ!斎藤!!」
「待てっ!」
土方の指示で走りだした斎藤が、すぐに追いついた。当然、普段から
剣術で鍛えているかいないか以前に、足の長さで速さは決まる。
追いついた斎藤が華奢な肩を掴んで引き寄せようとすると
「っ!!!」
「く……!!」
手を乱暴に振り払い、ようやく少女がその顔を皆に晒した。
……美しかった。低い位置で纏められた黒髪は艶やかに輝いている。
横髪がその色白い小顔を縁取っていた。
そんなにも美しい顔なのに、どこか常人と外れた感じがある。それは、
左にある菫色の瞳に相対して、淡く水色に輝く瞳の所為だった。
不安と強い意志に満ち溢れ、涙で濡れたその瞳は、蒼い宝石だった。
「何故、ここから離れようとする?」
「…私が此処にいたら迷惑がかかる。それだけです」
斎藤の静かな問いかけに、彼女もまた静かに答えた。
「なるほどな。しかし俺達としては、お前を此処から出すわけには
いかない。」
「っ!!?」
彼女の腕を素早く掴むと、払う暇さえ与えず引っ張る。振りほどけないほどの握力がかかっているのは、彼女の白い腕を見れば分かった。
「言っただろう。お前には聞きたい事がある。…斎藤、引っ張って
きてくれ」
「御意…来い」
「な…離してっ…!!」
少女の願いもむなしく、斎藤は無表情に細い腕を強く握った。