二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

2 尖塔 ( No.11 )
日時: 2012/11/23 20:35
名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)



 *


 悪く言えば平凡、良く言っても極普通の家族だった裏辺家が崩れるのは一瞬だった。
 学校から帰ってきた俺に伝えられたのは両親が事故で死んだことだけ。
 詳細なんて教えられなかった。
 程なくして親戚に引き取られることになったが、事故の噂が広がるごとに俺の友人は俺から距離を取る様になった。
 それを知っていて、俺の身を案じてくれたのか親戚は俺を旅行ツアーに連れて行ってくれた。
 そこで出会ったのは事情を知らずに親しくしてくれる同年の十四人だった。
 特にへらへらと笑って接してくる一人の男子とはすぐに仲良くなった。
 その男子、トヨは意外にも学校が近く、ツアーが終わっても遊び続けられるようだった。
 しかしながら平凡な俺とは何か違う雰囲気を持っているトヨ。
 彼は俺とは何か違っていた。


 特に取り得の無い俺に与えられた圧倒的な力。
 巨大なロボットを操り、敵を倒して地球を守る。
 これだけ聞いても単なる夢物語としか思えないだろう。
 しかし俺はそれが現実だと知り、実際にロボットに乗っている。
 地球を守るために。
 平凡な俺なんかに地球は託されている。
 ならばそれに尽力しよう。
 俺に出来るなら。


 *


 全貌を現した三角錐の巨体はカイザーの姿を確認するとゆっくりと動き出した。
「来る……」
 二つの巨体が距離を詰めていく。
 ウラノの念でカイザーの拳が強く握られる。
「らああぁぁっっ!!」
 振られた拳は三角錐の中心を的確についた。
 装甲に大きな罅が入る。
 数歩下がった所をウラノは更に追撃する。
「おおおおぉぉぉっっ!!」
 迎え撃つ腕の無い三角錐は手の出しようも無く、二発目の拳もなすすべもなく受けた。
 しかし三角錐の方も、何もしない訳ではない。
 四本の足の前二つを突然に地から離したのだ。
 するとバランスを取れなくなり、巨体は倒れる。
「うわっ!」
 文字通り、身体全体でぶつかってきた三角錐をカイザーは受け止める。
 しかし最大限の衝撃を与えただけで、三角錐はすぐに体制を立て直した。
 そして間髪入れずに右側の二つの足を離す。
 右側に倒れ掛かり、すぐに後ろだけを地につける。
 すると三角錐の身体は左前方向に振られるように体制を立て直す。
 それはカイザーにとって、「強力な横殴りの一撃」になる。
 この行動を予測し切れなかったウラノは対処が遅れ、それが直撃した。
「っ、腕が……!」
 中ごろから砕け、左腕が海に落ちる。
 攻撃の要である腕を失わせた後も三角錐は攻撃を止めない。
 三角錐の最上部が光を収束し始める。
「今度は何だ!?」
 嫌な予感を感じ取ったウラノはカイザーを後退させる。
 光は巨大な球状を成し、太い閃光となってカイザーを襲った。
 左腕を砕いたのはウラノを警戒させるだけのもので、真の目的はこの閃光を安全に撃つ事だった。
 胸部に当たった閃光は、見た目ほどの豪快な破壊力は無く、しかし確実に装甲を削っていく。
「削られてんぞ」
「くそっ、どうすりゃ良いんだ!」
「とにかく反撃しなきゃ!」
「どうやって!」
「…レーザーは?」
「それしかないよ!」
「よし!」
 削られる胸部は浴びる光とは個別の光を収束させる。
 そして放たれたカイザーの閃光は、
「なっ!?」
「普通に考えりゃ、分かる事だろうがよ」
 三角錐の閃光とその場で接触、爆発し、カイザーを吹き飛ばした。