二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 2 尖塔 ( No.12 )
- 日時: 2012/11/30 23:46
- 名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)
*
元々俺は自分が特別な人間だなんて思ったことはなかった。
極普通に生き、極普通に人として一般的な生活を送り、極普通に一生を終える。
それが大半の人間の生き様であり、その大半に入るであろう自分もその枠を出る事はないのだろうから。
「もう少し頑張れない?」
親からはショッチュウそう言われてきた。
成績は中の上程度。
自分の長所らしい長所といえば、運動馬鹿と呼ばれるくらい運動が出来たという事くらいか。
親が死ぬまで、学校では友人が少なかったわけではない。
正確に言えば俺にとっては十分に満足できる人数だった。
しかしそれは果たして真に「友人」と呼べるものだったのだろうか。
どんな物語でも大抵、運動神経の良い奴の周りには人が大勢居るものだ。
それはこの世界の「一般的」なものの見方なのではないか。
運動が出来る、人が集まる。
勉強が出来る、人が集まる。
何かしら自分で長所を見出し、伸ばすことが出来ればそれに感心した人が寄ってくる。
しかしその人らは交友を真の目的として近づいているのだろうか。
勉強が出来る奴に近づけば、勉強を教えてもらえる。
だから自分も賢くなれる。
それと同じで運動が出来る俺に近づけば自分に何か恩恵が来るとでも思っているのだろうか。
そういった偽りの友情だのを考えさせるような友情は、俺が望むものではなかった。
結果的に、どんな奴が近づいてきても、俺はそれらを「偽り」としか思えない。
歪んだ感情だとは思うが、一度そういう考え方をしてしまうと飲み込まれてしまうのが人間だと思う。
親戚に誘われたツアーに参加したのも「偽り」の無い友人というものを作りたかったからだ。
そして出会ったのが十四人の同学年の子供達。
その中でも全く裏表が無さそうな奴が一人だけいた。
鈴千 豊助。
俺が望んでいた「真の友達」だった。
今この場で負けてしまえば、同じコックピット内にいる彼や他の皆にも危害が行く。
絶対に避けたい。
何が犠牲の百倍救えば、だ。
守りたいものを守るからこそ戦う価値というものがある。
負けられない。
皆を、地球を守るために。
*
胸部に深く開いた穴。
しかしそれでも戦闘に支障は無い。
「ほら、また来るぞ」
コエムシの言葉の通り、三角錐は再び頭に光を集める。
先程と同じようにはウラノは動かない。
「っ、だったら!」
光より早く、カイザーの身体中から閃光が伸びる。
一歩遅れて放たれた光は、先程とは逆に三角錐の傍でレーザーと相殺される。
爆発は三角錐の最上部を飲み込んだ。
「いいぞっ! たため!」
「分かってる!」
ウラノが念じ、カイザーの腕が動く。
それは背中の装甲を掴み、そして引き剥がした。
ココペリがやった様に。
長すぎるカイザーの指は装甲を剥がして造った剣をがっしりと握ることは出来ない。
五本の指それぞれで支えるように持ち、三角錐に向かって歩いていく。
爆発の煙が晴れ、見えたのは最上部——仮面から上が無くなった三角錐の姿。
三角錐が身体中からレーザーを放つも、全てカイザーの装甲に弾かれる。
危機を感じたのか三角錐は後退をし始める。
しかし歩幅はカイザーが勝り、逃げ切るには至らない。
「くらえっ!」
カイザーが腕を振るう。
手に握られた剣は、三角錐の中央に突き刺さった。
四本の足が滑るように倒れ、三角錐が力なく崩れ落ちる。
間髪入れずにカイザーが掴みかかる。
「後は急所を——」
「終わりだ」
ウラノが追撃を加えようとしたとき、コエムシが静止をかけた。
「え?」
子供達が一斉にコエムシを見る。
それらを特に気にせず、コエムシが続ける。
「終わり、だ。見事に奴の急所を潰したぜ」
三角錐の仮面に開いた十三本のスリットに灯っていた、十個の光がゆっくりと消える。
それは戦いの終わりを意味していた。