二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

3 命の秤 ( No.14 )
日時: 2012/12/09 22:36
名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)



 第二次特別災害と名づけられた事件から三日が経った。
 二体の巨大怪獣による戦闘。
 内一体は前日にも確認された二体の怪獣の一体と同一のものと確認された。
 戦闘は海上で行われたため近隣の住民への被害もほぼ無し。
 第一次特別災害での被害者は国防軍の兵四人。
 第二次特別災害では幸いなことに死傷者は一人も出なかった。
 と、思われていたが、昨日昼過ぎ、一人の遺体が浜辺に打ち上げられているのが発見された。
 検死の結果災害現場付近の観光地の観光ツアーに参加していた十四歳の少年と特定された。
 少年は災害当時、同じツアーに参加していた子供十四人と浜辺に怪獣の戦闘を見物に行っていたという。
 当事者の子供達曰く戦闘の際に起きた波に巻かれたとのこと。
 しかし十五人の内一人だけが波に巻かれるというのは余りにも不自然。
 さらに検死により、水や白色細小泡沫が見られない事から溺死ではない事が分かった。
 骨折や挫創も見られたがこれらは死後のものと判明。
 警察は他の子供達による殺害も視野に入れて調査を進めている。

 不幸な事件によりツアーは中断、参加していた家族は帰宅した。
 ウラノの葬儀も行われた。
 子供達は一通り警察に職務質問を受けた。
 事前の話し合いにより決まった「嘘」により辻褄合わせには成功。
 今後疑われないように一応は平静を装う事に。
 しかし、
「まだ疑われてるって事かな……?」
 新聞に『巨大怪獣出現』という大見出し記事と共に書かれた被害者の情報を見ながら、カオが呟く。
「ま、死んだ人間と一緒に居たってんだから疑われてもしょうがねえわな」
 それに対して、ふわふわと浮きながらコエムシが答える。
 カオがコエムシを睨む。
「……コエムシ」
「あ? どうした?」
「何でウラノも一緒に海岸に転送しなかったの?」
 次のパイロットとして選ばれたカオ。
 彼女には一つ、コエムシに聞いておきたいことがあった。
 それは彼女がパイロットを務めるにおいて、絶対に聞いておかなければならなかった。

「——、違う?」

 コエムシの丸い耳に手を当て、呟く。
「……何だ、ココペリのやろーから聞いてねえのか」
「誤魔化さないで」
 真剣な表情だった。
 コエムシはしばらくの間黙っていたが、
「その通りだよ」
 あくまでも表情は崩さずに言った。
「……やっぱりね」
 新聞を畳み、カオが立ち上がる。
 自身が座っていた椅子を見る。
 簡素な作りの木製椅子。
 カイザーのコックピットに現れたものと同じものだ。
「……母さんが来る。もういいわよ」
「あいよ」
 コエムシが消えると同時、部屋の扉が開く。
「乙女、ユウのお見舞いは行ったの?」
「ん、まだ。今から行く」
 真実を知った故、やるべき事が決まった。
 部屋を出て、歩きながら携帯を取り出す。
『もしもし』
「もしもし、サク?」
 相手は、ツアーも一緒だった幼馴染。
「病院、来れる?」
『……あぁ、行けるよ』
「それじゃ、ロビーで」
『分かった』
 それだけの短い会話で、通話は終わった。