二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 1 ココペリ ( No.4 )
- 日時: 2012/10/05 20:57
- 名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)
「この地球を、十五体の敵が襲う。迎え撃つのは巨大なロボット」
黒い塊、積層された装甲。
圧倒的な力。
無敵の存在。
「それを操るのは——君達」
子供達の心を掴むのは、これだけで十分だった。
「すげえ、面白そう! やろうぜ皆!」
「そうね! ロボット、カッコ良さそうじゃない!」
ほとんどの子供達は心を擽るその単語にはしゃいでいた。
「では、契約としてここに手をついて名前を教えて欲しい」
男性が妙な形の機械を引っ張り、子供達の前に出す。
「契約! かっこいい! 早速やる!」
一人がまずそこに走りより、手をつく。
「鈴千 豊助(れいせん とよすけ)!」
——通称、トヨ。
次の一人が手をつくと、それに呼応するように他の全員が近づく。
「ユズよ! 癒州 正義(ゆず せいぎ)!」
——通称、ユズ。
「俺は美星 戦(みぼし せん)だ」
——通称、セン。
「私は美星 愛(みぼし あい)」
——通称、アイ。
「えっと、繰流 商業(くる しょうご)です!」
——通称、クル。
「……佐藤 慎二(さとう しんじ)」
——通称、サトシ。
「玖比 恋(くひ れん)、よろしくね」
——通称、レン。
「裏辺 野空(うらべ のそら)だ」
——通称、ウラノ。
「天地 諭人(あめつち ゆひと)……」
——通称、アマチ。
「あー、酒月 羽楠(さかづき ばくす)」
——通称、サク。
「日向 穂滝(ひなた ほろう)よ」
——通称、ヒナ。
「皐月 舞弥(さつき まいや)です」
——通称、マイヤ。
「香窓 乙女(かまど おとめ)!」
——通称、カオ。
「狩野 由美(かりの ゆみ)よ」
——通称、ユミ。
十四人が手をつき、名前を言う。
残りの一人。
セントはずっと、興味なさげに壁に寄り掛かっていた。
「……セント? 早く」
「馬鹿馬鹿しい。くだらねえよ、本当に」
これが、セントだった。
はぁ、と溜息を吐いたトヨが走りより、セントを引っ張る。
「って、おい! ちょっ!」
トヨがセントの手をだん、と強く機械に叩きつける。
「早く! 名前言えって!」
「うるせぇ、俺に構うな!」
「面白そうじゃん、やろうぜ!」
「っ、あー! 分かった! 海鳴 泉斗(うみなり せんと)! これでいいだろ!」
海鳴 泉斗——通称、セント。
これで、十五人。
「まぁ、良いだろう。これで契約は終了した」
男性がさっさと機械を奥に追いやる。
「そういえば、おじさん、名前は?」
クルが聞く。
男性は頭を掻き毟りながら言う。
「あー、うん……ココペリ、としておこうかな」
ココペリ。
そう名乗って、子供達の間を歩いていく。
「ココ……?」
「何それ……?」
当然、こういう反応となる。
まさか横文字の名前が出てくるとは思ってもいなかったからだ。
しかしそれに返すつもりもないようで、ココペリは洞窟の入り口に向かう。
「それじゃ、ルールはまたいつか話そう」
ココペリの言葉に子供達は動揺が隠せない。
「いつかって……どういう……」
「ロボットに呼ばれる時が来る。その時にまた会おう」
さっさと出て行くココペリを目で追いながら、子供達は首を傾げていた。
「な、なんだったんだ?」
「さぁ? 変なおっさんだったな……」
子供達は、ココペリと名乗った不審な男性が残していった機械に目をやる。
特に目立った付属品もついていない。
ただ五角形を棒で固定させて立てているだけ。
しかも地面からコードを繋いでいるわけでもない。
契約といったものの、たったこれだけで何が出来るのか、と言わんばかりの代物だった。
「これ……結局何か意味があったのか?」
子供達は知らない。
この機械によって成された契約によって地獄の様な戦いに巻き込まれた事に。
「あのおじさん、不思議な人でしたね……」
子供達は知らない。
彼らに契約をさせたココペリの実態を。
「どうせ何かの悪戯だよ。ゲームなんかありゃしねえ」
子供達は知らない。
これはゲームなどとは程遠い。
恐怖と、死と、虐殺の「ただの」悪夢だという事を——