二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 2 尖塔 ( No.9 )
- 日時: 2012/11/16 21:40
- 名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)
翌日。
子供達は、好奇心故にロボットを見に行っていたという口実で何とか家族を説得した。
危なかったが怪我人が居なくて良かったという事で解決した。
奇跡的に陸地にはほとんど被害は出ず、死傷者は「四人」だけだった。
ロボットに乗ったこと、契約については十五人だけの秘密。
そういう事にした。
いつもの様に海で遊んでいる子供達だが、二人の姿が見えなかった。
「あれ? ウラノは?」
「トヨもいねぇぞ?」
「灯台のところじゃねーの? あいつらあそこ好きらしいし」
旅館付近の灯台の下は、二人のお気に入りの場所だ。
ウラノとトヨはツアーが始まって初めて友人関係となった二人であり、子供達全員が仲良くなる切欠を作った二人でもあった。
「なぁ、トヨ。昨日のアレ、どう思う?」
「どうって言われても……夢とは思いたいけど、実際死者も出てるしさ…本当なんだろうなぁ」
二人は灯台の下で、昨日の事について話していた。
「ウラノ……アレ、本当に乗りたいと思う?」
「あぁ。地球を守るって、かっこいいと思わないか?」
「……かっこいい、ねぇ」
トヨが少し考える。
「僕はさ、正直、地球を守れるかなんて分からないんだ」
「最初に面白いって契約したの、トヨじゃなかった?」
「それはそれだよ。ゲームだと思ってた頃とはワケが違うんだから」
ゲームではなく現実だという事を知ったことで、事情が変わってきた。
トヨ自身も、契約したもののどうするか、迷っていた。
「地球を背負ってるって分かったら、戦う意思ってのも無くなっちゃった」
「だったら、背負ってるものを幾らか捨てりゃ良い。犠牲が出ても勝てば良いんだ」
即答だった。
ウラノの目を見るに他意は無く、本気でそう思っているらしい。
「——、え?」
流石に聞き違いだとトヨは思った。
ウラノがそんな事を言うはずは無い、と。
「俺さ、両親居ないんだよね」
「え、だって……」
海の方を眺めながら、ウラノが現実を話す。
「先月親が事故で死んでさ、今回のは親戚が俺を心配して連れてきてくれたんだ」
「……」
トヨは唖然となっていた。
初日に見たときから、喜怒哀楽を共有する仲の良い理想的な家族だと思っていた。
その実態が、まさか真の家族では無かったとは。
「親に言われてたんだ。どんな形でも良いから人を沢山救えって」
ウラノの口元は笑みを浮かべていた。
「少し犠牲が出ても、その百倍救えればそれは成立すると思うんだよ」
彼なりの正義感。
犠牲以上の命を救えればそれで良い。
「ウラノ……」
「トヨ、俺はあのロボットで地球を救う。その上で犠牲が出るのは仕方の無いことなんだよ」
トヨは何も言う事が出来なかった。
彼が決めた断固たる決意。
友としてそれは黙認するしかなかった。
駄目だ、と言えるほどの勇気がトヨには無い。
トヨは間違った道を歩む友に対して、どうする事も出来ないでいた。