二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 『イナGO』-アドニス〜永久欠番のリベロ〜 ( No.32 )
日時: 2012/11/17 14:26
名前: 優騎那 (ID: hoeZ6M68)

第十四話 『おれのサッカー〈後編〉』

「痛ぇ……」

おれはグラウンド脇にあるベンチで死んでいた。
昨日、佐田先輩と雛野先輩がシュート練習に付き合ってくれたおかげで、おれは生きた屍になっている。
狩部監督にドクターストップならぬ監督ストップを食らって、新雲学園が誇るNo.1スピーダーは機能停止中なのだ。

「んが!!」

背中に漬け物石が乗ったような重さがのしかかった。

「何しやがる……」

おれにこんな—誰であっても—非常識なことをしやがるのは一人だけだ。

「真住ぃ………!!」

同学年の真住火朗志—まずみ ひろし—だけだ。
太陽より色素の濃いオレンジの髪を逆立て、後ろ髪がやや長い。
目つきが悪く、ぶっきらぼうな奴だ。

「天才の相棒でもへばることあるんだなと思って、イスに使わせて貰ってる」
「ふざけんな!!今すぐどけ!!重い!!このドS!!」
「てめぇの都合なんか知るか。ベンチに寝っ転がってるお前がアホだ」

こいつは……!!
いちいちかんに障ること言いやがる。

「何やってんのお前ら……」

根淵先輩が冷ややかにおれ達を見る。
佐田先輩も、雛野先輩も、樹田先輩も。

「助けて下さい!!このバカがおれをいじめるんです!!」
「バカはてめぇだ!!動くんじゃねぇ!!」

脇腹に綺麗な手刀が入った。

「うげっ!!」

脇腹痛い……。
雷門入った方がよかったかな、なんて今更ながら思った。
新雲には真住火朗志という鬼がいる。
橙鬼だ。

「真住の好きにしてあげて下さい」
「雛野先輩結構鬼畜っすか!!?てっきり清純だと思って夢見てたおれがバカでした!!」
「尊はバカですけど」
「うおい!!」

今の雛野先輩のストレートすぎるコメントは精神的に効いた。
辛口過ぎる!
水で割ってないそうめんのつゆみたいだ。
ちょっとは麺つゆを水で割って欲しかった。

自分がバカなのは百も承知だが、正面切って—しかも雛野先輩は笑顔で言うから—言われるとかなりきつい。

「お前、体しっかり休めとけ。ちょっとでも目ぇ離したら無茶して練習しそうだからな。こうやって押さえつけてやってんだ。ちったぁ感謝しろ」
「うわ〜、恩着せがましい」
「じゃかぁしい!!!」

まぁ、流石チームメイト。
おれのことよく分かってんじゃん。
以前、怪我をしていた時に練習に出ていたらめちゃくちゃどやされた。
それ以来おれも無い頭を使って学習したが、チームメイトの心配は抜けきっていないらしい。

「お前がお前のプレーを思う様できる時は、おれ達新雲全員が自分のプレーが精一杯できてる時だ。
ホーリーロードを勝ち抜くには、尊のパス回しが必要になる。
へばって貰っちゃ困るんだよ」
「………ギャー!!真住が眩しい!!何カラット!?この輝き何カラット!!?透明度何クラリティ!?」
「うっさいわボケ!!」

真住にボコられました。
でも、ぶっきらぼうな態度を取る割に真住は義理人情に厚い男だ。
今日はこいつの言うこと聞いて、大人しくしてよう。