二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 獣の奏者〜王獣を操るものと闘蛇を操るもの〜 ( No.1 )
日時: 2012/11/01 19:57
名前: 悠 (ID: hmaUISmg)

=1=  異変


ラミは、カザムルの大きな王獣舎を見上げてつぶやいた。

「・・・ここで、私を何かが待っている。」


ラミは、王獣舎の大きな取っ手に手をかけた。

少しさびたような音がして扉が開いた。
一瞬、目の前が真っ暗になった。
王獣舎は、真っ暗なのだ。まだ、エリン師がおられたときから王獣舎はこのように暗かったのだという。

理由は、分かっていない。



王獣、それは最強で美しい獣___________

真王ヨジェに献上される獣__________

そして、汚れた闘蛇を一瞬のうちに喰らうことができる獣______

だが、武器として王獣を使うことは禁止されていた。
500年前__________
エリンがその身をもって見せつけた、あの『悲劇』
それが、すべてを表していた。


王獣は、ただ、真王の象徴として飼われているだけの獣となった。

もう一生、王獣が武器として使われることはない。


            ☆


王獣舎に入ると一斉に警戒音が発しられた。
「ふぅ・・・よしっ」

ラミは、王獣たちに体の臭いになれてもらうためにそこに体育座りで座った。

ここに座って、王獣のことを考え続けていた数々の獣ノ医術師たちを思い浮かべながら。



            ☆


キーーーーキーーーー
と獣たちの警戒音で目が覚めた。


ミサル師だった。

ここ、カザムル学舎の教導師長を務める女性だ。

「まだ、こんなところにいるの。はやく学舎の中に入りなさい。」

「いえ・・・まずは王獣たちに匂いからなれてもらわねばいくませんから。」


(あら・・・エリンと同じような発送の持ち主のようね。)

エリンも、始めはそこから始めたのだという。
教導師長になると、読むことが許される、{エサルの記}にはそう記してあった。



             ☆


ぎいいいいいいいいいいいい


明らかに王獣の苦しんでいる時に発する声であった。

喉元を突き刺すような悲惨な叫び、思わずラミは耳を塞いだ。

そうすると、ミサル師が思いがけないことを言った。

「王獣が死するところまで見続けるのが〝獣ノ医術師〟の役目。目をそらしてはいけない。ミィ(王獣の名)はかなりの高齢、いつ死んでもおかしくなかったのに・・・35年も生きて・・・ここでは最高齢なのよ。」


ミィが、がくりと膝をおり倒れると一斉に王獣たちが〝弔い声〟を上げ始めた。


かんかんかん・・・

と、悲しく響きは足るその声を、ラミは唇をかんでたえていた。


そしてとたんに、体のしたがすっと寒くなるような不思議な感覚にとらわれ続けた。