二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: マギ —運命と魔導殺し— ( No.13 )
日時: 2012/11/09 20:12
名前: 黎 (ID: kgjUD18D)

 その瞬間、トーマは暗殺者のごとく素早くシンドバットの前で正坐をした。
「え…。御嬢さん・・・?」
 さすがのシンドバットもたじろぐ。
「…今まで気絶している間、この宮殿においてくださったことは感謝しています。…ですが、その本についてはお話したくはありません・・・。」
 と、土下座した。
 神々しいぐらいに。
「やめてくれ御嬢さん!おれは女性にそんなことはさせたくはないんだ!顔を上げてくれ!」
 シンドバットはトーマを立ち上がらせる。
「じゃあ…!」
 トーマはうれしそうに顔を上げた。
「ああ!さっきアラジンから聞いた君のルフについて知りたいんだ!」
 堂々とした物言いにトーマは慄然とした。
「わ…私…本当に…たいしたやつではないんです・・・・!この国の刊行者にすぎないんです・・・ッ!」
「君の旅行費は俺が責任を持って負担する!だから、ここにゆっくりいるといい!」
「いえ・・・ですから・・・・!」
「気にすることはない!」
 手を振って顔を引きつらせるトーマにシンドバットは笑顔で言った。
「・・・で、君のことを少し話してくれないか?アラジン君が言っていたことが気になってね。」
(・・・やばい…!このままだと…喰われる!!)
「・・・ゼロ・・・。」
「?何か言ったかな?御嬢さん。」
—結局こうなるのか—
「…すみません。陛下。」
 すっくと立ち上がると、窓を思い切り開け、トーマはそこから飛び降りた。
「!御嬢さん!!」
 シンドバットは窓から大声でトーマに呼びかける。
「限定・・・解除!!」
 空中でトーマはゼロ—ブレスレットに呼びかけた。
 すると、次の瞬間煙がトーマを包み込む。
「…あれは・・・ッ!」
 トーマが地に降りたとき、トーマの髪は銀髪、目の色は赤に変貌していた。服装は、黒騎士を彷彿されるような黒に近い藍色の、胸、ふとももに甲冑がついているロングスカート。
 そして、トーマは思いっきり天高くジャンプした。
 もう、シンドバットの目にはトーマの姿は見えなかった。
「シン?!さっきすごい音がしたのですか・・・。」
 バタバタと銀髪の男、ジャーファルが駆け寄った。
「さっきの少女ですか?」
 ジャーファルはちらり、と先程トーマがいるベッドを一瞥した。
「ああ。あの子は何か秘密がある…!」
 宝を見つけた子供のように、目を輝かせるシンドバットにジャーファルははあ、とため息をついた。
「…一応七大将に言っておきますね。」









・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
—こう帝国—
「…どうした…。マギよ・・・。」
 顔も見えない白いマントに包まれた男が、ボーっと壁に寄りかかっている黒髪の男、ジュダルに話しかける。
「…ルフが騒がしんだよ。黒いのも白いのも。…それにどこかに飛んで行ってやがる。こっちの方向は確か…。あのバカ殿の国だ・・・。」
 そう言って歩き出した。
「どこへ?」
「もちろんあの国だぜ。…後、このルフ騒動の犯人拉致っちゃうかも。」
 ジュダルはそういってたくらみたっぷりの笑みを浮かべる。
 そして、じゅうたんに乗り込んでいってしまった。
「さあて…。誰だ…?つえーやつだといいけど。」
 そう言ってニヤリ、と笑った。