二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼 浅葱色の風と放浪鬼 ( No.12 )
- 日時: 2012/12/01 18:06
- 名前: 流夢 (ID: O72/xQMk)
9話「鬼は邪魔を嫌う」
「土方さーん、連れて来たよ」
と、平助が障子を開ける。
土方は押し殺したような声で「おう、座れ」と声をかけた。
千鶴も後ろからひょこひょこと自分の席に座る。
真琴に一応声をかけて自分の席に座ろうとする平助が、他人の箸に気が着いた。
「っておい!!新八っつぁん!何俺の飯取ろうとしてんだよ!!」
「遅かったな平助。お前の魚は俺がもらったぜ!!」
新八は箸で魚をつまんでひらひらと平助に見せた。
負けじと平助は箸を握る。
「返せ!!」
飛び出したかと思うと、平助と新八が箸で同じ魚を掴んだ。
どちらも離す気配はなく、ぐぎぎぎ…と魚を引張る。
土方は眉間に皺をよせてこれを見ていると、ついに我慢ならなくなったのか怒鳴った。
「てめぇら!!いい加減にしやがれ!取り敢えず平助の皿に魚戻せ!!!」
その場は何事も無かったように静まり返った。
新八は無言で平助の皿に魚を戻す。
平助もまずいことをしてしまった、というように俯いた。
その様子を見た土方は、入り口に突っ立っている真琴のほうを見上げ、空いている席に座れと促した。
真琴は言われたままの席に座る。
斎藤の左隣、千鶴の右隣だった。
「てめぇの名と出身等、俺等はてめぇについて知らないことが多い。取り敢えず名前くらい言え」
真琴は心の中で「自己紹介しろ」とかいえないのか…。と思っていたが、顔には出さなかった。
「あーと、俺の名前は宵明真琴。真琴って呼んでくれればいいや。出身地は…東北。年齢は……えーと…うん、18!趣味は…唄と俳句・短歌。好きなものは俄然小動物のような可愛いもの!!あとは…旅、かな」
自己紹介として言えるものをだーっと言い切った真琴は、にっこりと明るい笑みを浮かべていた。
土方がぽかん、としているのを横目に、やはり総司が口を押さえて笑っていた。
「 ?…俺、なんか変なこと言ったっけ?」
「い、いや、何でもないよ…くくく…ぷ…」
「???」
「いや〜、面白い子が来てくれたじゃないか!良かったなトシ!」
「近藤さん…あんたなぁ」
「また楽しそうな奴が増えて良かったじゃねぇかよ、なぁ?土方さん」
「左之の言うとうりだ!」
「俺もそう思うよ。まぁ、飯には少し困るだろうけど」
「てめぇら…」
「副長、俺も反対ではありませんが」
「斎藤まで…!ったく」
幹部揃って土方を覆すような言い方をしたものだ。
土方は溜息をついて、面倒臭そうに箸をとった。
「…飯だ。食うぞ」
「いっただっきまーす!」
と、土方を先頭にして朝餉が始まった。
平助達のほうを見ると、やはり飯の取り合いをしていた。
今度は白飯だ。
真琴も自分の前に置かれた飯を着々と食べていた。
そして、右に居た千鶴に話しかける。
「あいつ等は何してんの?…何時ものことなの?」
「はい、何時もの事です…。真琴さんも自分のご飯を取られないように気をつけてくださいね!」
「あはは、俺?俺は大丈夫だよー……」
真琴がそう言った瞬間、真琴の朝餉にむかって手が伸びてきた。
後でみると、それは新八の手だった。
真琴の魚を取ろうとしていた、のだが。
カキィィン!!と澄んだ良い音と共に、新八がひっくり返った。
真琴は何時も通りに笑みを浮かべていたが、眼が笑っていない。
黒い光すら宿していた。
「新八さん、だっけ?悪いけど用なら後にしてよね。…それと、俺の飯の時間、邪魔しないでくれるかな」
今にも殺すといわんばかりの殺気を溢れさせていた。