二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼 浅葱色の風と放浪鬼 ( No.20 )
日時: 2013/01/05 17:50
名前: 流夢 (ID: O72/xQMk)

15話「副長と総長」


「・・・昼餉、出来たらしい。行くぞ」
「やっとお昼?四勝負もしたからお腹ぺっこぺこ。早く行こー」
「っとおい!押すんじゃねぇ!!」

真琴は遊び半分でぐいぐいと土方を押す。
それでもやはりお腹が空いているのか、力は弱いようだ。
土方は後ろを押され、真琴を叱ることが出来ない。
されるがままに押されていたが、丁度曲がり角になってひょいっと真琴を避けた。

「ったくテメェは・・・」

と怒り出そうとした瞬間に、ドンっと何かにぶつかる感覚。
先程までの勢いでぶつかった其れを睨み返すと、其処には新選組総長である、山南敬助であった。
山南はにこにこと笑っていたが、それは黒い。

「土方君、何をしているのですか?」
「あー・・・いや、違うんだ山南さん・・・」
「何が違うのでしょうかねぇ・・・。まあ良いでしょう。もう昼餉ですよ」
「お、おう」

副長である土方を圧倒させる佇まいと威圧感に真琴が関心した様子で見ていると、山南は此方にも笑いかける。

「君が今朝の朝餉で藤堂君達と騒いだ、という宵明真琴君ですか。私は新選組総長をさせて頂いております、山南敬助と申します」
「へぇ・・・。宜しく・・・?」
「宜しくお願いします」

真琴が遠慮気味に頭を下げて挨拶すると、山南はこれまた裏の読めない笑顔で返してきた。
そして過ぎ去ろうとするのを、土方が止める。

「山南さん、昼餉は良いのか?」
「ええ、構いません。どうぞ藤堂君や永倉君にあげて下さい」
「そうか・・・。無理しないでくれよ」
「お気遣い、感謝します。では」

そう言って、日の当たらない廊下を向かっていった。

「・・・不思議な人だな?」
「ああ」

真琴が言うと、土方は短くそれだけ答えた。
土方は暫くその後姿が消えても廊下を睨んでいたが、ぱっと真琴の方を向く。
と、無言で昼餉の席へと向かった。
元々決まっていた時刻より少し遅れて席に着くと、既に平助と新八が昼餉の取り合いをしていた。
そして、「遅いぞ!」と言われたのと、「飯位静かに食え!」と怒鳴られるのは必然的な事だった。