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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼 浅葱色の風と放浪鬼 ( No.25 )
- 日時: 2013/01/12 22:37
- 名前: 流夢 (ID: O72/xQMk)
17話「少女と真琴と唄」
真琴は呟くと、自室に戻ってカタン、と障子をしめた。
音からして布団を出したりなどはしていない。
まだ寝ないつもりなのだろう。
—同時刻、違場所
「あの月は、完璧にはなれぬけれど・・・僕等の、理想完成体だろう・・・欠けた月の片割は、今何処に居るのかさへ分からぬから・・・嗚呼・・・また、僕等は共になれるのだろうか、なってみせよう・・・あの月のように・・・♪」
かつん、かつん、と静かに道を渡っていく少女がいた。
年は、15・16位だろうか。身長は165cm程ある。
その目は閉じられているが、足元を見据えている。
ふと、気が付いたというように空を見上げる。
月明かりが、紫紺色の瞳に反射し、瞬いた。
十六夜月夜、少女は呟いた。
浅黄色の髪が、夜風になびく。
「今宵の十六夜月夜で何回目を迎えただろう・・・。もう数えるのも随分昔にやめてしまったわ」
そして、北方面を向いてから西方面を向く。
風も、その方向に吹いていた。
細く、長く溜息をついた。
「何処で逸れたんだろう。注意してたんだけどなぁ・・・」
少女はまたぽつぽつと歩き出す。
行くあては無い様子だったが、その足取りは真っ直ぐだった。
「兄上・・・」
最後に、小さくそう呟いた。
一陣の風が彼女を包むように吹き荒れる。
次に見たときには、その少女は見えなくなっていた。
「・・・茜音?」
場所は変わって、新選組屯所。
部屋の隅っこで小さく蹲って目を閉じていた真琴が、はっとした様子で顔を上げた。
そして天井を仰ぐ。
はぁーー、と長く盛大に溜息をつくと、顔を膝に埋めた。
「そんなわけ、ないか」
酷く辛そうな顔をして、浅く眠りについた。
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