二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼 浅葱色の風と放浪鬼 ( No.26 )
- 日時: 2013/01/13 21:25
- 名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)
18話「隠しごと」
朝早く、原田達十番隊は、まだ日も昇りきらない寅の刻前から、巡察を
開始していた。春なので冷気は感じられず、欠伸を噛み殺しながらの
隊務だった。
「じゃ、二人一組で周囲を見廻りしろ。日が昇ると同時に三条大橋に
全員集合だ。いいな!」
『はいッ!!』
隊士達が二人一組になって様々な方向に散っていく。一人、数が一組分
足りていないので、幹部である原田は当然単独行動だ。
…流れる時間。人のいない京の町に、隊士たちの足音が響き、浅黄色の
羽織が翻る。やがて、少しずつ太陽が姿を現した。
「お、日が昇るか。…組長が集合に遅刻って、締まらねぇよな…」
一人呟いて、三条大橋方面に走り出した時
「…………ん?」
自分の脇を、浅黄色の何かがすり抜けた。不審に思い、今まで自分が
居た方向を素早く振り返る。
「な…!?」
その視線の先を歩いていたのは、浅黄色の髪を持つ者だった。
(真琴!?…いや)
よくみると、それは真琴ではなく少女だった。しかし、浅黄色の髪等
そうそう在るものではない。声をかけようとした時
「組長ー!?何処ですー!?」
「っ!悪い、今行く…つっ!?」
自分の事を呼びに来た隊士に返事を返した時、後ろからものすごい
突風が原田を襲った。数秒で収まったが、その間はずっと目を伏せて
いなければならないほど。…風の後再び振り返ると
「何…?」
少女の姿は、長い長い一本道の上から、影も形もなく消えていた。
場所は変わって新選組屯所。巡察から原田が帰ると、真琴が千鶴の仕事
を手伝っていた。
「あ、原田おかえり!もうみんな広間に向かってんよ!!」
膳を運びながら原田に広間への集合を勧める。そんな真琴に、原田は
険しい顔で尋ねた。
「おい、真琴…」
「あぁ何!?俺今忙し……何だよ?」
原田の表情に気付き、能天気な真琴もさすがに足を止める。そんな真琴の、輝く浅黄色の髪を見て
「…悪ぃ、何でもねぇ」
静かに呟いた。怪訝そうな真琴は、眉間にしわを寄せたまま、膳を
手に駆けていった。その背中で浅葱色髪が揺らめく。原田は心の中に
広がる靄を、払う事ができなかった。
「真琴、お前何を隠してる……?」