二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼 浅葱色の風と放浪鬼 ( No.30 )
日時: 2013/01/14 16:57
名前: 流夢 (ID: O72/xQMk)

19話「必然たる出会い」


「「頂きます」」

全員の声がそろった。
真琴も大分屯所の雰囲気に慣れてきたようで、千鶴や斎藤とよく話すようになった。
新八と平助は何時もどおり、だ。
真琴は斎藤と話しながらも、痛い程の視線に気が付いている。
斎藤も真琴と話しながらちらちらと様子を伺っていた。

「真琴・・・お前は何かしたのか?」
「いや、何にも心当たりはねぇ・・・んだけど」
「では何故に左之はあんたをあんなに睨んでいる?」
「それ分かってれば苦労しないって」
「む・・・確かに」

仕舞いにはこそこそと話し合っていた。
そう、先程から睨むように真琴を見ながら食事を取っているのは、原田左之助だ。
異様な空気を敏感に察した斎藤と真琴は、様子を伺って箸が進んでいない。
千鶴は隣でにこにこと朝餉を食べていた。

「後で聞いてみる」
「うむ、そうしたほうが良いだろう」

そして二人は朝餉を口に含み始めた
隣の隣で喧騒が続くが、その他は今日は静かだった。

「「ご馳走様」」

また皆の声が揃う。
千鶴は手際良く皆の膳をかたし始めた。
真琴も手伝おうとしたが、何故か今回は難く断られた。
土方や近藤から順に廊下に出て行く。
左之助が出て行ったタイミングを見計らって、真琴は左之助に声を掛けた。

「おい、原田!!」
「ん?如何した真琴」
「如何した・・・って、そう聴きたいのはこっちだよ。何?朝餉中にじっと見てきて。何かあった?」
「・・・お前。何か隠してねぇか?」
「へ?何のこと・・・?俺なんか隠し事するような節あったっけ?」

真琴は本当に分からないというような顔をしていた。
左之助はその表情に少し安堵感を覚える。

「いや、思い当たらねぇなら良い。すまねぇな」
「・・・?うん」

左之助はこの後は非番だったため、町に出て団子屋によった。
真琴に団子でも買ってってやろう、と考えたのだろう。
団子屋から貰った包みと共に、左之は屯所に戻っていく。
町並みを見ながら歩いていた為に、前から来た少女に、気が付かなかった。
少女の頭と左之助の胸がぶつかる。
少女が急いでいたためか、何気に強い衝撃が二人を襲った。
左之助は身長が飛びぬけて高いためによろけただけだったが、少女は尻餅をついてしまった。

「いたた・・・」

その少女は、横髪を長く垂らし、その他の髪を後ろで団子結びにしている、珍しい髪型の少女だった。
左之助は、その少女の髪色に驚く。——浅葱色だった。
少女はすっくと立ち上がって左之助を見据える。
その瞳は紫紺色で、髪色からも目の色からも真琴を連想させる佇まいだった。

「申し訳ありません・・・。私、急いでいました故に周りを見ていませんでした」

目の前の大きな侍を恐れるわけでもなく、少女ははきはきと言ってみせる。
そしてぺこりと頭を下げると、左之助の隣を通り過ぎた。
左之助はぽけっとしていたが、はっとしてその少女を呼び止めた。

「おい・・・ちょっと待て。お前名前は?」
「・・・名前は、杏音と申します。本当に急いでいます故、本日は此れにて。また来日、声をおかけ下さい」

ぺこりと一礼すると、早足に、逃げるように去っていった。
左之助はまた屯所に向かって、杏音と名乗った少女とは反対方向に歩き出した。