二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼 浅葱色の風と放浪鬼 ( No.42 )
日時: 2013/03/02 09:30
名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)

28話「夜帷の鬼」

真琴の笑顔は半ば虚勢だった。千鶴は隣で、その悲しい笑顔を見つめ
ながら、残った半分の心に微笑む。

「さて。もう一曲如何です?お姫様」

冗談を言って、真琴が静かに三味線の弦を鳴らしたその時

「外に出すなッ!追えッ!!」
「おうっ」
「了解」

土方を始めとして、幹部達の鋭い声が聞こえてきた。

「なになに?何事!?」
「土方さん何が—?」

真剣な瞳を向ける千鶴と、半ば楽しげな真琴。それだけで土方は千鶴を
選び説明する。説明と言っても、一言の指示と現状報告だった。

「お前達は部屋に戻っておけ。…羅刹が脱走した…!!」


—時を同じくして、屯所前——

「えっと。とりあえず此処でいい、よね?」

茜音が足を向け、夜の帷が降り立った頃についた場所は新選組屯所。
千鶴が以前、浅葱色の羽織を着た隊士達と、仲よさそうに話し歩いて
いるのを、数回見かけていたからであった。

「うぅ、ちょっと緊張…早く聞いて出よ」

恐る恐る茜音が屯所の門をくぐろうとした時

「があぁァァァァッ!!」
「え、何!?」

見ると数歩先に、銀髪赤眼の男が、刀を持って立っている。
そして男は、血に飢えるような鈍く光る紅い瞳を、茜音に向けて、
嬉しそうに笑った。
狂ったように、笑った。