二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼 浅葱色の風と放浪鬼 ( No.43 )
日時: 2013/03/02 18:33
名前: 流夢 (ID: O72/xQMk)

29話「長き時間は一瞬にして」


「ががぁあア!」

間髪入れず、それは襲い掛かってきた。
茜音は、持ち前の分析力と冷静さで頭を回転させていた。
そして絡まった思考の迷路が、弌の出口に収まる。
—羅刹。

「う、嘘でしょ・・・?之ってもう作られてなかったんじゃっ!?」

慌てて何か掴むように腰に手をやるが、其処にはなにもない。

「何でこんなときに限って」

今度は、腰に伸ばした手を自分の袖口に潜り込ませる。
直ぐに目当てのものを見つけ、さっと手を引いた。
茜音の手には、刃渡り約20cm程の小刀が握られていた。

「ほんとは嫌なんだけど、御免ねっ」

目を瞑りながら羅刹の心臓を的確に刺す。
至近距離だったので、目元から頬にかけて血がつく。
羅刹は前のめりにばたん、と倒れた。
茜音はぺたんと座り込んで、ふぅーっと細く息を吐いた。

「あれ、何処に・・・ってうわ!?」

最初に屯所から飛び出てきたのは、沖田だった。
目の前に転がる羅刹の屍をみて、真っ先に顔をしかめた。

「あーあ・・・僕が殺りたかったのに」

そしてふと視線を上げたところで、茜音の存在に気が付く。
頬には血、手には小刀。
如何見たって彼女がやったとしか考えられない状況だろう。

「如何した総司」
「何だ?倒れてやがんな」

続いて、斎藤と原田がやってくる。
直ぐに羅刹を確認し、やはり目が茜音のほうに向かう。
二人とも顔を見合わせて首を傾げた。
てくてくと、原田が茜音に向かって歩いていく。
茜音を覗き込むように顔を見ると、「あ」と驚いたような顔をした。
茜音も、原田に覗き込まれ身体を揺らしたが、分かった途端にはっとした。

「貴方は・・・あの時の!」
「お前、あん時の!・・・杏音っつったか」
「え、何左之さん、知り合いの子だったりするの?」

総司が驚いたように、はたまた面白そうににやりと笑った。