二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼 浅葱色の風と放浪鬼 ( No.45 )
日時: 2013/03/17 22:10
名前: 流夢 (ID: O72/xQMk)

31話「空気の読める副長」


「っとと、申し訳ありません。舞斗(マイト)兄上。袴に血が付いてしまいますね」

自分が血を浴びている事をすっかり忘れていた少女—茜音が、ぱっと真琴を離れる。
頬はまだ少し赤く、とても嬉しそうに笑っている。

「えと・・・茜音?・・・・・・なのか?」
「え?・・・もしかしてとは思いますけど、源氏名、使ってますよね・・・?」
「あ、御免忘れてた・・・」

本名で呼ばれた事に驚いた茜音が真琴に問う。
真琴の源氏名—舞斗は、真琴自身余り使った覚えがない。
余り、というか一切使った事がないだろう。
それを聞いた茜音は、はぁーと肩を竦めて溜息をついた。

「ちょっと兄上、あれ程人前で源氏名を使って下さいと言ったではありませんか!?
では、何ですか。私一人がずっと源氏名使ってたというわけですね?ああもう!しっかりして下さい兄上!!」
「うん、そうだね。・・・言われたね、うん。御免、茜音探すのに夢中でそっちの事忘れてたよ」

真琴は、若干いきり立っている茜音に制止を求める。
そんな光景を見ていた幹部達は、ただぽかん、とするので精一杯だろう。
真琴の制止で落ち着いた茜音は、身体を半回転させて幹部の方に向き直る。
そして、申し訳無さそうにぺこりと頭を垂らした。

「私、宵明茜音と申します。此方にいる真琴兄上の実の妹です。
・・・千鶴さんや、其処の赤髪の方に名乗った『杏音』は私が旅の途中で使っている源氏名ですので、悪しからず・・・」

頭を上げて周りを一旦確認してから、土方のほうを向く。

「兄上が何かご迷惑を掛けておりませんでしょうか?兄上は・・・・その、玉に礼儀にかけるところがありまして・・・」
「いや、大丈夫・・・だが」
「そうですか、其れを聞いて少し安心致しました」

はきはきと言いたい事を喋る茜音に少し圧倒されながらも、土方は真琴の非礼を隠すように言う。
茜音はその言葉に、心底ほっとしたような顔を見せた。