二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼 浅葱色の風と放浪鬼 ( No.6 )
日時: 2012/11/11 20:18
名前: 流夢 (ID: O72/xQMk)

3話「眠たき鬼は楽しむ」


「あー…。何で俺一睡もさせてくれない訳…。クソ眠ぃよ…」

足と手を拘束され、無理矢理連込まれた部屋でじっとしていた。
その「じっとしている」時間は、夜が明けるまで続いた。
その間、一睡もしていない。
眠らせてもらえなかった、というのが正論だろうか。
約半刻毎に、幹部の誰かが見回りに来ていたから、気が抜けなかったのだ。

「眠い…寝たい…アイツを探したい…。そうだ!探せば良いじゃん!」

「俺ってば鈍感☆」と一人でテヘペロ、としてからまず手の拘束を無理矢理千切る。
かなりきつめに総司が縛った筈だったのだが、鬼の彼からしてみればそうでもなかった。
そして手で足の拘束を解いた。
手と足が自由になり、ぐるんぐるん、ばたばたと動かす。

「よーし!あいつ等にばれる前に出ていこ!」

スッと障子を開けて、辺りをきょろきょろ見回す。
誰の気配も無い事を確認し、ほっと胸を撫で下ろす。
そして忍び足でその部屋を出て行った。
パタパタと廊下を走っていると、その先で平隊士が話しているのが見える。
真琴自身のことが知られていなくても、見つかるのは不味い。
仕方なく引き返そうとした瞬間、衿を掴まれる。
誰に掴まれたかは分からないが、自分より身長が高いのは確かだ。
軽く持ち上げられる。

「うおっ!?だ、れだ!?」

突然の事に驚いて、咄嗟に手で手を叩く。
何とか逃れ、人物を見てみると、昨夜一度見回りに来た赤髪の男だった。
名を、原田左之助と言ったか。

「な〜にしてやがんだ?」
「お、俺にはやるべきことがあるから、抜け出そうと…ってあ!」

馬鹿正直に思っていたことを口に出してしまった。
はぁー、と気の重い溜息がつい漏れてしまう。

「取り敢えず、来い。土方さんが待ってる」
「土方…?ああ、昨夜おっかない表情して俺を脅した、あの黒髪の?」

少々寝ぼけた表情をして、軽々と言った。
左之助は一瞬驚いた表情をして、苦笑いしながら真琴に顔を寄せる。

「…今は土方さんがいねぇから良いが…絶対土方さんの前でそんな事言うんじゃねぇぞ。殺されるぜ?」
「ああおっかな。ほんとやんなっちゃうね」

頭の後ろで手を組み、呆れた様に言う。
そして左之助を指差し、

「で、その土方さんは何処にいるの?案内してよ」

と言うと、軽くウインクしてその手を横に払った。
如何やら、この状況を少し楽しんでしまっているらしい。