二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼 浅葱色の風と放浪鬼 ( No.8 )
- 日時: 2012/11/18 18:13
- 名前: 流夢 (ID: O72/xQMk)
5話「鬼と人鬼の漫才」
「なんでだよ〜!じゃ、三味線くらい返してくれよ!」
「取り合えずお前、囚われの身ってこと忘れてんじゃねぇだろうな!?」
「あ、そっか」
「そっか、じゃねぇんだよ!!」
土方と真琴のやり取りは、本当に漫才の様で、部屋の隅っこで総司がお腹を抱えて笑っていた。
部屋に集まっていた幹部が呆れ顔を見せている。
「ゴホン!…で、だな。てめぇ、昨夜見たもんが何だか分かるのか」
「え…?ああ、アレ、でしょ?分かるよ勿論。だってあれは爺さんが…」
「あ゛ー!分かった分かった!取り敢えずてめぇは羅刹を知ってんだな?」
「うん。知ってる」
「昨夜見たもんを周りに公表されちゃ困る。だから、てめぇは新選組に一時留まってもらう。良いな?」
「やだ」
真琴は、「留まってもらう」という言葉を聞いたときに一瞬だがしかめっ面になった。
そして、疑問符で言われたので正直に、真顔で断った。
土方はとうとう眉間を歪ませる。
そして額に青筋が浮き出た瞬間、怒りが爆発した。
「…やだ、じゃねぇんだよ!!取り敢えずてめぇは昨夜の件で新選組に留まる!異論は認めねぇ!!」
「……」
真琴は暫く土方を真直ぐ見つめていたけれど、弌溜息を付くと、
「分かった。異論無い」
とすんなり認めてしまった。
周りはほっと安堵した雰囲気になった。
土方の怒りが最大限まで行かなくて良かったと思っているのだろう。
「じゃ、俺の三味線、刀、その他もろもろの持ち物。全部返して?」
「…おい、平助。持って来い」
真琴が改めて要求すると、土方が重たい声で平助に言った。
真琴の荷物は、直ぐ隣の部屋に全て置いてある。
平助は指名されると一瞬びくっと肩を震わせたが、立ち上がると障子から出て行った。
そして、手一杯に持って部屋に戻ってきて、真琴の前に置く。
「よいしょ…っと。之で全部か?ちょっと分かんねぇけど…」
「えーと、之ある。あ、其れもある…。うん、全部。有難う」
「いや、礼を言われるようなことはしてねぇけどさ」
三味線を肩に掛け、刀を腰に差す。
そして細かい持ち物を全て決まった位置にぱっぱと戻していく。
立ち上がると、障子を開けて振り返った。
「暫く此処で世話になるけど、宜しく頼む!あ、俺が閉じ込められてた部屋借りるぜ!」
とだけ言うと、凄い勢いで走っていった。
開けっ放しの障子から、良い風が入ってくる。
桜はもう散り、緑と桜色が混じってきている。
「あ、そういえば」
ふいに、平助が口を開いた。
皆、其方へ注目する。
「あいつ、名前なんて言うんだ?」
「「「あ」」」
一番肝心な名前を聞くのを忘れていた。
彼等はまだ、真琴がどんな人物なのか、知らない。