二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 幽☆遊☆白書 - 化猫の憂鬱 ( No.1 )
日時: 2012/11/14 22:24
名前: 柚の葉 ◆ENxDGhzOpg (ID: y3F.fYKW)




 貴方は知っていますか? 化け猫の存在を。
 S級ランクの紅い化け猫。周囲はその妖怪を——“悪夢の紅猫”と呼びます。


 一話 「悪夢の紅猫」


「“悪夢の紅猫”を探すう??」

 
 気の抜けた声で青年——浦飯幽助は言われた言葉を復唱した。
 首を大きく縦に振りながら青白い髪を持つ少女——ぼたんは答える。


「そう! それがねぇ、“悪夢の紅猫”が人間界に来たらしくてねぇ」

「別に良いんじゃねぇか。何もしてねぇんだろ?」

「何かしてからでは遅いから言ってるんだろう!? 目的が分からないからとにかく探せと、コエンマ様からの命令だよ」

「面倒っくせぇ!! 生き返ったら生き返ったで何でこんな事になるんだよ!?」

「しょーがないだろー! ほらほら行くよ!」


 そうぼたんに言われ幽助はぶーすか言いながら家を出た。
 実質幽助はまだ生き返ったばかりであり、霊界探偵としての活動も始まったばかりだ。
 ので、まだぼたんも着いて行く事にしているらしい。


「って言うかよ〜、んなもんどーやって見つけんだよ?」

「位置情報は得られているから大丈夫だよ。あっちの森の方だね」

「つーか、どんな妖怪なんだ?」

「死ぬ気でかかっても死ぬ程の相手だよ。最高最強の妖怪だからね」

「どっちにしろ死ぬのかよ!? 勝ち目ねーじゃん!!」

「だだだだだから話し合いで何とかおさめようと思って——」

「そんな最強の相手と話し合いでおさまるのか!?」


 幽助の鋭いつっこみが入るがぼたんは緊張した面持ちで進んで行く。
 目的地の森に近づくと、幽助はさらに溜息を深くはいた。
 その時だった。幽助とぼたんの瞳が極限まで開かれる。鳥肌が一気にたち、体の震えが止まらなくなった。


「な、んだよ……これ」

「す、凄い妖気……! まだ離れているのに……!?」

「……っ」


 何とか幽助は足を動かし森の中へと進む。ぼたんも必死に着いて行く。
 幽助の頭の中で“悪夢の紅猫”の想像が繰り広げられる。恐ろしい顔つきをしているのだろうか、なんて思った。


(会った瞬間一瞬で殺されたらどーすんだ……っ)


 その時、妖気がおさまった。幽助とぼたんは息を吐く。
 が、その発信源がすぐ傍にある木だったと言う事に気づいた二人は体を硬直させた。
 恐ろしいイメージが渦巻く中、幽助は慎重に近づく。


「——んー、これおいしい。何て言うんだろ、この赤い物体」


 しゃりしゃりっと言う音が聞こえてきて、思わず二人は足を止めた。
 ぎぎぎぎぎと言った感じで幽助は木の上を見る。
 そして見事にまた硬直した。木の上にいたのは——イメージとかけ離れた人物だった。


「……ぼたん、“悪夢の紅猫”ってアイツか?」

「そ、その筈だよ……?」


 木の上に居たのは露出度の高い服の上にコートを羽織った女だった。
 林檎をひたすらかじりながら、茶色いサングラス越しに女は幽助達の方を見た。思わず幽助は驚いて固まってしまう。
 が、女——“悪夢の紅猫”は幽助の方を見ると手を出した。


「何か食べ物持ってない?」

「……は?」


 しばしの沈黙が三人を包んだ。