二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 【心霊探偵八雲】十三鳥居の神隠し・・・復活版
- 日時: 2010/01/19 00:26
- 名前: 慧智瑠 (ID: acQ6X1OT)
こんにちは!エチルという者です☆
読んで行ってくれると嬉しいです♪
題名に心霊探偵とか入ってますが、幽霊とかほとんど
出てきません。(笑)
ただ、少々グロいです、仮にも推理小説なので。悪しからず。
あと、この作者、挫折したりするので気をつけて下さい。
では、ルール説明に入ります。
ールールー
荒らし→やめときな。藁人形に釘ぶっ刺すよ♪(ヤメロ!)
八雲って何?→キャラクター説明を読めば、だいたい分かるはず。
我は推理小説嫌いじゃ!→戻った方が良いかもよ。うん。
〜登場人物〜
○斉藤八雲・・・赤い左目を持つ、寝癖の激しいスカした青年。赤い左目で死者の魂が見られる。
本人はこの瞳を嫌って、普段は黒いカラーコンタクトをしている。どんな時でも皮肉を言い、しょっちゅう欠伸をしているため、晴香からは『化け猫』と内心で呼ばれている。
○小沢晴香・・・八雲の同年代の友達。八雲に惹かれている八雲曰く『トラブルメーカー』
他人にお願いされると断れない性格。
双子の姉がいて、姉は七歳の時に事故死したがそのキッカケは晴香にあり、その事で十三年間苦しんでいたが、八雲によって救われた
○後藤奈緒・・・小学生の女の子。耳が聞こえないため、テレパシーに似たもので会話する。今回の依頼者とは親友で、よく遊んでいる。
○菊永悠爾・・・奈緒と親友の少年。今回の依頼者。母親は行方不明、父親は既に死んでしまっている。
この四人が中心となります。
それ以外のキャラは出てき次第追加します。
尚、原作になるべく似せて書きますが、キャラの設定が、
微妙に変わっていたり、特に決まっていないからと決めつけている
(五巻終了時点の設定になります。)場合があります。
それでも良いよって方、どうぞ!↓↓
Page:1 2
- Re: 【心霊探偵八雲】十三鳥居の神隠し・・・復活版 ( No.1 )
- 日時: 2010/01/19 00:28
- 名前: 慧智瑠 (ID: acQ6X1OT)
プロローグ・・・恐怖の伝説
「なぁ、今度肝試ししないか?」
「えっ、何処で?」
嫌な予感がする。
「十三鳥居に決まってるだろ!当然来るよな?」
「怖いから嫌だよ・・・。」
「じゃあ夕方にやろう。」
「・・・分かったよ。」
あの時、ちゃんと断れば良かった。
何故って、この鳥居には、ある子守唄が伝わっていたからだった。
『十三の鳥居は通りゃんせ。通れば天罰下るだろう。
神に身体を隠されて、御魂となりて散るだろう。』
更に、十三鳥居には、ある逸話があった。
『江戸時代の頃、時ノ司神社(十三鳥居のある神社の名前)に、十二の鳥居があった。
それらは、子の鳥居・丑の鳥居・寅の鳥居・卯の鳥居・辰の鳥居・巳の鳥居・午の鳥居・未の鳥居・申の鳥居・酉の鳥居・戌の鳥居・亥の鳥居と名付けられていた。
さて、この神社には、一人の尼がいた。とても美しく、菫草と呼ばれていた。
そして麓の村には、彼女と親しい、一人の若者がいた。お互い、時たま言葉を交わす程度の間柄だったが、幸せだった。しかし、ほかの村人は、これを快く思わず、
「新しく鳥居を作る。」と言って、若者を菫草の前で生き埋めにし、その上に鳥居を建てた。
菫草はその後、心の病に倒れ、亡くなった。
その後、十三本目の鳥居をくぐり、神隠しに遭う者が出てきた為、その鳥居は、
黄泉の鳥居と呼ばれるようになった。』
でも、この鳥居をくぐらないと何も始まらない。
傍に落ちていた太い木の枝を拾い、覚悟を決め鳥居を跨いだその時、
生温い風が吹いた。
「・・・?」
ザ———
鉛色の雲が垂れこみ、土砂降りの雨が降った。
季節外れの夕立だ。
森の中にあり、唯でさえ暗いのに、夕日も入ってこないとなると、暗いどころか、手元さえ分からない。
その時、
ペタッ、ペタッ、ペタッ、ペタッ・・・
雨でぬかるみ始めた道を誰かが歩いてきた。
「だ、誰だ!」
ゆっくりと振り返る。
視界の向こうに白い影が浮かんだ。
「うわぁぁぁぁああああ!!!!」
とっくに恐怖の限界を超えていた僕は、白い影によって暴走した。
「おぉぉぉばぁぁぁぁぁぁけぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
さっき拾った棒きれを、形振り構わず振り回す。
「うわぁぁぁぁぁ!」
白い影が叫ぶ。
この声には聞き覚えがある・・・。
「お、お前!」
「ゆ、悠爾じゃん!」
どうやら僕を脅かそうとしたらしい。
「ねぇ、手に持ってるの・・・何?」
「・・・バットだよ。護身用にな。」
気まずそうに言った。
「同じだね。」
自然と二人で笑っていた。
「なぁ、折角だし、中に入ってみないか?」
「・・・分かった。」
怖かったけど、二人一緒に夕立の中、そっと十三鳥居をくぐっていく。
子の鳥居・丑の鳥居・寅の鳥居・卯の鳥居・辰の鳥居・巳の鳥居・午の鳥居・未の鳥居・申の鳥居・酉の鳥居・戌の鳥居・亥の鳥居そして・・・
「なぁんだ、何も起きないね。」
黄泉の鳥居を跨いだが、何も起きなかった。
ガサッ
何の音?
「ねぇ、もう帰ろうよ。」
不安になり、友達の方に振り返った。
ガサリッ
突然女の人が現れた。
手に持っているナイフが、僅かな光を反射し、煌めいた。
ナイフを持った右手が動く。
「「わぁぁぁぁああああああ!!!!!!」」
二人で絶叫し、逃げた。
でも、その女の人はあまりに僕の母親に似ていた。
「お母さん・・・?」
一瞬お母さんが、頷いた気がした。
バラバラバラバラ・・・・
鉛色の空をヘリコプターが通り過ぎていった。
- Re: 【心霊探偵八雲】十三鳥居の神隠し・・・復活版 ( No.2 )
- 日時: 2010/01/19 00:28
- 名前: 慧智瑠 (ID: acQ6X1OT)
第一章・・・狂気の始まり
「やぁ!」
私はいつもの通り、八雲のいる〈映画研究同好会〉のドアを開けた。
八雲は〈映画研究同好会〉の部室に住んでいる。
学校側を騙し、勝手に私物化しているのだ。まぁ、この部屋を利用している私がとやかく言える立場でも無いが。
しかし、そこには普段見慣れない光景が広がっていた。
「何で僕が君達の怪談話を聞かなきゃならない。」
いきなり八雲の不機嫌な声がした。
そこまでは良い。いつもと違うのは・・・
———お兄ちゃんの意地悪!
女の子の声が、脳内にガンガン響く。
その声の主は、奈緒ちゃんだった。
旧姓は斉藤、八雲の異母妹だ。
彼女は産まれてから、先天的に耳が聞こえない。
その為、彼女はテレパシーのようなもので会話をする。
しかし、その隣にいる少年には、見覚えが無かった。
「・・・。」
暫く突っ立ってみたが、誰も話に夢中で、気が付いてくれない。
仕方なく、冷蔵庫を開け、昨日入れておいたジュースを取り出そうとした。
新商品で、皆がおいしいと噂していたので、試しに買ったのだ。
「私のジュースが無い!!」
「何だ、君か。入ってきて早々騒ぐなよ。」
「ねぇ、私のジュース飲んだでしょ!!」
「年下を責めるとは、君の人格はそんなに酷かったのか。」
欠伸をしながら飄々と言ってのける。
見ると確かに、奈緒達の前にジュースの入ったコップが置いてあった。
「・・・まぁ、いいや。」
「旨いね、このジュース。」
八雲がペットボトルを持っていた。
「やっぱり八雲君飲んだんじゃない!!高かったのよ!!!」
「余ってたからな。」
ニヤッと笑うと、ゴミ箱に投げ入れた。
奈緒が不思議そうに見ている。
今度絶対何か奢らせてやる!
「で、怪談話がどうかしたの?」
「何で知っている?」
八雲が不思議そうな顔をする。
「さっきからずっとドアの前に居たのに、気付かなかったのは何処の誰よ。」
「盗み聞きとはたいそうな趣味だ。」
本当にイライラする。
———十三鳥居って知ってる?
奈緒が話し掛けてきた。状況を察してくれたらしい。
「十三鳥居って、あの神隠しが起こるっていう鳥居?」
「そう、彼が言うには、そこで悠爾君がお母さんを見かけたらしい。」
八雲が補足した。
あの謎の少年は悠爾というのか・・・。
「僕のお母さんが、行方不明なんです。
それで・・・もしかしたらお母さん、神隠しに遭ったのかなって・・・・・。」
悠爾君がポツリと言った。
そして彼から、母親が一ヶ月程前から、行方不明な事。
突然ナイフを持って現れた女の人が、お母さんに似ていた事を、ポツリポツリと語っていった。
確かに、神隠しに遭って、幽霊として現れたと考えるのも無理はない。
しかし・・・
「その女の人が持っていたナイフって、本物だったの?」
「多分そうだと思うけど・・・でも、あの時取り乱してたから分からないんです・・・・。」
「八雲君はどう思う?」
「僕が思うに、魂とは死んだ者の想いの塊だ。だから物理的な作用は与えられない、
だとしたら、物を持つのも無理だろうな。」
『魂とは死んだ者の想いの塊』これは八雲の魂に対する持論だ。
「まあ、仮定だから何とも言えないが・・・。」
「要するに、僕が見た女の人は・・・本物ってことですか?」
「そういうことだ。」
腕組みをして、天井を仰いだ。
「・・・分かりました。お邪魔しました。」
ゆっくり立ち上がると、扉を開け、出て行ってしまった。
———待ってよ!
奈緒が悠爾を追いかける。
———晴香お姉ちゃん、またね!
二人とも出て行き、部屋が静かになった。
「奈緒ちゃん、よく喋るようになったね。」
「友達が出来たらしいからな。」
「友達ってさっきの悠爾君って子?」
「あぁ。」
「そっか・・・。」
この後、まさかあんな事が起こると知っていたら、
私達は、きっとこんな呑気にしてはいなかっただろう。
- Re: 【心霊探偵八雲】十三鳥居の神隠し・・・復活版 ( No.3 )
- 日時: 2010/01/19 00:29
- 名前: 慧智瑠 (ID: acQ6X1OT)
奈緒目線
———ねぇ、待ってよ!
「えっ?」
悠爾君が振り返った。
———置いていかないでよ。
———ああ、ごめん。
上の空のままだ。
———ねぇ、どうしたの?
———いや・・・これから、どうしようかなって思って。
父親がおらず親戚もいないので、母親が失踪した今、彼には身寄りの人が居ないのだ。
今は、私の叔父さんのお寺で面倒を見ている。
———先週、保護施設に、体験で泊ったでしょ?
———うん。
———何でお寺の方が良かったの?
———・・・迷惑?
———そうじゃないよ。けど・・・あっちの方が友達居たんじゃないの?
「あんな所に行くぐらいなら、死んだ方がマシだ!!!」
傍にいたカラスが驚いて飛び立つ。
———・・・!
こんな悠爾君が「死ぬ」って言うなんて、始めて聞いた・・・。
「・・・ごめん。」
消え入りそうな声で言う。
———ううん、大丈夫。
沈黙が流れた。
「・・・神社に忘れ物したから、取ってくる。」
誰に言うでもなく言うと、走って行ってしまった。
何故か、追い掛けられなかった。
———おはよう!
次の日、私はテレパシーで、クラスの中に悠爾君を探した。
このテレパシーは、限られた人にしか聞き取れないらしい。
実際、クラスの皆に試してみたが、聞き取ってくれたのは悠爾君だけだ。
その為、頑張って読唇術というものを学んだ。
しかし、普段なら返ってくるはずの挨拶が、今日は帰ってこない。
悠爾君の席を見ると、空席だった。
そう言えば昨日、神社に忘れ物をしたって言って、何処かへ行ってしまったはずだ・・・。
ポンポン
肩を叩かれた。
後ろを振り向くと、後ろの席の子が前を指差した。
急いで前を向くと、先生がコンコンと黒板を軽く叩いて、アピールしていた。
『ゆうや君、みかけた?』
チョークで大きめに書かれている。
急いで手元のスケッチブックに書き込み、頭上に掲げる。
『見ていません。』
先生が、困ったように首を傾げる。
何故か嫌な予感がした。
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン・・・
学校が終わり、急いでお兄ちゃんのいる大学へ向かう。
今、頼りになるのはお兄ちゃんだけだ。
途中、ランドセルは何処かの茂みに隠しておいた。
数分走り、大学の校門に駆け込む。
「おーい、部外者は立ち入り禁止だ!」
守衛さんに止められる。
『お兄ちゃんが忘れ物したんです。届けたいので入れて下さい。』
メモに走り書きし、渡した。
「忘れ物って?」
『これです。』
メモと共に、お兄ちゃんの生徒手帳を見せた。
昨日、こっそり盗んできたのだ。
最近、個人情報保護法に関して、確かニュースで報道していた。
「・・・お兄ちゃんの場所は分かるかい?」
メモに書く代わりに大きく頷くと、通してくれた。
大学構内を走る。
周りの視線は、この際どうでもいい。
目当ての建物はすぐに見つかった。
中に入ると、寝袋が置いてあった。
もしや・・・
———お兄ちゃん!!!
しかし、起きるどころか寝返りを打ち、寝息を立て続ける。
もう我慢の限界だ。
———起きろぉぉぉぉおおお!!!
思いっきり足で踏みつける。
半目だが目が開いた。
そういえばこの前、晴香お姉ちゃんが『八雲君は脇腹が弱点』って言ってた。
試しに突いてみた。
「いっ!!」
猫みたいに飛び起きた。
「・・・奈緒か。」
———忘れ物!
有無を言わせず、生徒手帳を渡す。
「まさか・・・取って行ったのお前か?」
寝癖をガリガリ掻きながら言う。
———こうでもしないと入れてくれないの!
「分かったよ、ところで用件は?」
さすが、お兄ちゃんは話が早い。
今日あったことを全て一気に話す。
天井を仰いでいたが、それでも聞いているのだろう。
「・・・神隠し、か。」
コンタクトをしていない、真っ赤な左目がこっちを向いた。
でも、小さい頃から見ているので怖くない。
———何か嫌な予感がするの。
「・・・そうか。」
そう言うと、ゆっくり起き上がり、出かける準備を始めた。
「やぁ!」
その時、晴香お姉ちゃんも来た。
「お前も行くか?」
上着を着ながらお兄ちゃんが聞いた。
———行ってくれるの?!
「行くって何処へ?」
晴香お姉ちゃんが、きょとんとした顔になる。
「十三鳥居に決まってるだろ。君の頭のネジは何処に行った。」
「ネジが外れてて悪かったわね!」
「分かってるじゃないか。」
そっとお兄ちゃんの脇腹を突く。
予想外だったらしく、普段よりリアクションが大きい。
お姉ちゃんの方を見ると、笑いを噛み殺していた。
- Re: 【心霊探偵八雲】十三鳥居の神隠し・・・復活版 ( No.4 )
- 日時: 2010/01/19 00:30
- 名前: 慧智瑠 (ID: acQ6X1OT)
ー奈緒目線ー
「突いたのお前か?」
お兄ちゃんが私の方を睨む。
———そんな事より、早く行こうよ!
お兄ちゃんが、溜息を吐きながらも外に出る。
———寒っ!
走っている時は大丈夫だったが、今はさすがに寒い。
「大丈夫?」
お姉ちゃんがベストを貸してくれた。
———ありがとう!
女二人が相手だと気まずいのか、始終黙ったままだ。
「八雲君、いつもより静かだね。」
普段のお返しとばかりに、お姉ちゃんが茶化す。
「君はそのお喋りなお口を閉じている事は出来ないのか?」
———だから、早く歩いてよ!!
「・・・分かったよ。」
勝った。
私はお姉ちゃんと、ハイタッチした。
「ここか?」
———うん。
住宅街を抜けた辺りに、一か所だけ、緑に囲まれた所がある。
江戸時代、まだ黄泉の鳥居が建つ前は、お参りすると長生きできると評判で、
神社の周りに記念樹を植える者もいた。
黄泉の鳥居が建った後、植える者はいなくなったが、
記念樹は成長を続け、今では大木になっている。
それらが陽光を遮り、薄暗い不気味な空間を作り出す。
「不気味ね・・・。」
お姉ちゃんがポツリと呟いた。
「これは?」
お兄ちゃんが、何かを拾い上げた。それって・・・
———ゆ、悠爾君の・・・靴。
「・・・行こう。」
神社の、急な階段を駆け上がる。
三段、ニ段、一段・・・着いた!
「あれが・・・十三鳥居か。」
お兄ちゃんが呟くように言う。
「ねぇ、これ何・・・?」
お姉ちゃんが震えながら、地面に落ちている物を指差した。
それは、悠爾君のランドセルだった。
それには、血がこびり付いていた。
「まさか・・・神隠し?」
お姉ちゃんの声が、異常なほど静かな森に、響き渡った。
- Re: 【心霊探偵八雲】十三鳥居の神隠し・・・復活版 ( No.5 )
- 日時: 2009/12/08 17:36
- 名前: 慧智瑠 (ID: acQ6X1OT)
ー八雲目線ー
「まさか・・・神隠し?」
晴香が呟く。
———そ、そんな・・・。
奈緒も絶句して、立ち竦んでしまった。
「現実に神隠しなんか、起こる訳ないだろう。」
「えっ、でも・・・」
———実際、神隠しは起きてるよ?
さすが、奈緒は晴香より頭はマシだ。
「あぁ。でも、それらの裏には大抵犯人がいる。」
「要するに・・・人攫い?」
晴香が、呆然としながら呟く。
「そういうことだ。ただ単に、犯人が分からないから神隠しとしているだけだ。」
「でも・・・ここでは、江戸時代にも実際に神隠しが起こってるんでしょ?」
「・・・『口減らし』って、知ってるか?」
———何それ?
奈緒にはあまり言いたくないが、これは真実だ。言うしかない。
「簡単に言えば、殺人だ。」
———・・・。
「・・・。」
晴香も奈緒も、押し黙ってしまった。
「昔、日照りや嵐になると、作物が枯れ、食べる物が無くなる事が多かった。
しかしその頃、子供やお年寄りはたくさんいた。
一家を養っていたら、食物が無くなってしまう、
それで、お年寄りや子供を殺し、養う人数を減らした。
これが口減らしだ。」
———そんな・・・。
「まさか、ここで神隠しに遭った人達って・・・。」
「口減らしで、殺されてしまった人達の事だ。」
「でも・・・何で文献では、神隠しになっているの?」
「まさか、後世まで残るかもしれない本に、
『私達は殺人を犯しました』なんて、正直に書くか?」
———ゆ、悠爾君は、誰かに攫われたの?
奈緒が呟く。
そうだった、本題を忘れるところだった。
「そうなるな。」
———先生には何て言えばいい?
そう言った奈緒の目には、涙の膜が張っていた。
こいつも気丈に振る舞ってはいるが、本当は辛いのか・・・。
「・・・病気だと言っておけ。」
———分かった。
重苦しい雰囲気が、薄暗い森の中を支配していた。
脇を、子供の魂が通り抜けながら言った。
『お兄ちゃんも、おいでよ。』
背中を冷や汗が流れた。
———僕は・・・悠爾君を見殺しにしてしまったのか?
生温い風が、ザワリと木々を揺らしていった。
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