二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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魔王のでし
日時: 2011/07/01 17:00
名前: 山田 (ID: 784/wjkI)

僕が5歳だった頃。
婚約者のアリスと一緒に鬼ごっこをしていた。
アリスが逃げて僕が鬼。
彼女の金色の長い髪の毛を見ながら、タッチするべく追いかける。
でも、アリスの方がこの時少しだけ足が早かったからかな?
僕は彼女に翻弄されっぱなしだった。

アリスとの婚約は、僕の両親とアリスの両親が仲が良かったので、僕たちが生まれてすぐに婚約を決めたらしい。
僕の家もアリスの家も貴族同士だし特に問題もなかった。

「あまり遠くに行っちゃ駄目よ〜」

 そんなアリスのお母さんの声がする。
アリスのお母さんはアリスと同じ金色の髪の毛を長く伸ばしていて、綺麗だな〜なんて思ったのを今でも覚えてる。
 この時僕達はそんな声を聞こえなかったことにして、森の中へと入っていた。
いつもこの森の中で遊んでいたし、きっとアリスのお母さんも1つため息を吐く程度で見逃していたのかもしれない。

 でもこの森に入った事が僕の運命が大きく変わる事になるなんて、小さかった僕はこの時わかるはずもなかった。

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Re: 魔王のでし ( No.1 )
日時: 2011/07/01 17:00
名前: 山田 (ID: 784/wjkI)

アリスの家の隣にある森の中。
僕達はそこで鬼ごっこをしていた。
長い金髪を揺らして逃げるアリスを追いかけて森へと入っていく僕。
 もしこの時森に入っていなかったら……
大きく人生は変わっていたかもしれない。


森の中へとドンドンと進んで行くアリスを追いかけているとアリスが急に立ち止まった。
どうしたんだろう?僕はそう思いながら彼女の所まで行くと目の前に居たのは、角の生えた魔族と呼ばれる僕らとは種族が違う人。
 人間と殆ど同じ姿形だけど魔族は角を額に持っていて、人間にはない瞳の色。
赤い瞳を持っていることが知られている。

何でこんなところに?
そう思いながらアリスの元へと僕は走った。
 魔族特有の赤い瞳がアリスを捕らえていた。
口元に浮かべる不気味な笑み、そのせいか彼女は軽く身体をビクビクと震わせて動けずに居た。

「まさか人間に見つかるとはな……
まぁ仕方あるまい、まだ子供だからな楽に殺してやる」

 魔族は腰にしていた剣に手をかける。
森の木々から降り注ぐ光を浴びて、不気味に鈍く光る剣を鞘から抜き、アリスを切ろう剣を振り上げた。
 僕はとっさに魔族とアリスの間に走りこみ、アリスを庇う様に魔族に背中を向けてアリスを抱きしめる。

 ヒュと音を立てて振り下ろされる剣。
それと同時に背中に広がるジリジリとした痛み……

「ぐああああ!!!」

 僕はその痛みに耐え切れなくて悲鳴を上げた。
僕は痛みで気を失いそうだったけど、持ちこたえて魔族を睨んだ。

「ほほう少年、いい目をしているな… 
そんなにその少女が大切か?」

 僕の血を剣から払い落としながらこちらを見て言う魔族。
その表情は当時の僕でも分かるぐらいに、狂気に満ちて居た。

「大切だ……」

 僕は魔族を睨みつけたまま言う。
アリスは僕の腕の中で震えていた。

「大丈夫だからね、僕が守るから」

 そう言って僕は無理矢理笑顔を作ってアリスに笑いかけた。
痛む背中の傷を彼女に心配させまいと必死に作った笑顔。
でも彼女は恐怖のせいか頷くだけだった。

Re: 魔王のでし ( No.2 )
日時: 2011/07/01 17:08
名前: 山田 (ID: 784/wjkI)

「気が変わった!ゲームをしないか?少年よ」

 魔族が狂気に満ちた赤い瞳を吊り上げ、不気味な笑みを顔に貼り付けて僕を見ながら言う。

「ゲーム?」

 背中の痛みに耐えながら僕は魔族に問いかける。
少しでも気を抜いたら、痛みで涙が零れそうだった。

「そうだゲームだ。今からお前に3回攻撃する。
もしそれに気絶せずに耐え切れたら、2人の命を助けてやろう。
もし耐え切れなかったら2人とも殺す。
 ああ、安心しろ?
3回の攻撃の間にお前の命はとらないからな。
後、手足を切り落としたりもしない……どうだ?やるか?」

 魔族は持っていた剣を指でそっとなぞりながら、そう言った。

 アリスを助けたい!

 そう思っていた僕はこのゲームに乗った。
そして僕が決心して、小さく頷いた瞬間だった。

「それじゃあ1回目だ」

「ぐあああああ!!!」

 魔族は容赦なく左肩を突き刺し、素早く引き抜いた。
先程とは比べ物にならない痛み、そして多分生暖かい自分の血が背中を伝う。
痛い、痛みで意識が飛びそうだったけどアリスの事を思い浮かべて、意識を繋ぎ止める。

「ケイト?!ケイト!?」

 僕の名前を腕の中で震えながら叫ぶアリス。
そんな彼女に僕は少しでも安心して欲しくて……

「大丈夫……大丈夫だよ」

 と無理に作った笑顔で笑いかける。
大丈夫、アリスを護るんだから、小さくたって僕は男なんだから……
お父さんがよく言っていた、男は騎士、女は姫様だと言う言葉が頭を過ぎった。

「ほう…少年よ耐えたか、じゃあ2回目だ」

「ぐあああああ!!!」

 感心したような声が聞こえたと思った瞬間に、今度は右肩を突き刺して来た。
切られた背中、突き刺された両肩から血が溢れ出る。
ここで気絶したらアリスが死んじゃう!!
ただそれだけを思いながら僕は2回目の攻撃にも耐えた。
痛みで朦朧とする意識の中アリスに言う。

「大丈夫だよ…大丈夫だよ…」

「ケイト!ケイト!」

 少しでもアリスに安心して欲しくて、口を無理矢理開くようにして紡いだ言葉に、アリスは泣きじゃくりながら僕の名前を呼ぶだけだった。


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