二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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とある世界の重力掌握
日時: 2012/11/02 07:15
名前: 将軍 (ID: 8nwOCftz)

「さて、あと10分で実験開始だ!みんな気を引き締めろ!」

『はい!!』ここは東京郊外のとある会社の秘密研究所。

ここで今まさに試作品のテストが行われようとしていた。

この会社が開発していたのは、新型の小型原子力エンジンだ。もしこれが実用化できれば一般車や小型舟艇なんどにも搭載可能になるということで、おおいに儲けが期待できるのだ。

なので、今回のテストではもちろん細心の注意を払い万が一にも事故が起こらないように配慮して事前に何度もシュミレートを繰り返した。

だが、この世に100パーセントの安全などあるはずがないのだ。

「ん・・・・・なんだ、あの子は?!」

「馬鹿なすでに実験は始まっているんだぞ!」

「どこから入った!?」

「早くあの子を外に出せ!」

怒声が研究所内に響く。

監視塔にいる男の眼に映るのは、年のころ16歳くらいの少年。

「くそ!どうなってるんだよ!?なんだよ!?不良どもから逃げるためにこの廃墟に逃げ込んだのに・・・・なんで今日に限って人がいるんだよ?」

少年、古門護は自分の運のなさを呪っていた。

「そこの君!はやくそこから離れなさい!危険だ!」

そう後ろから言われても、ここで止まったらいかにも重要そうな施設には無断侵入したことをとがめられ、多分退学になる・・・・

「そんなの、ご免だ!!」

そのままフルダッシュして南門から出ようとする護だったのだが.......

「うそ!こっちにも?」

すでに門の前には、『捕獲準備完了』とでも言わんばかりに捕まえる気満々でネットを構えたごッつい男たちが待ち受けていた。

「くそ!こうなりゃあ、あの手だ!」

護は踵を返し、研究所の中央にある小屋を目指す。

その小屋が外に通じていることを彼は知っていた。

だが彼はあくまで部外者である。

その小屋が持つ意味までは分かるはずがなかった。

「おい!あの子。例のものが置いてある小屋に入ったぞ!」

監視塔にいる研究者の言葉に焦りの色が混じる。

「はやく、テストを中止するんだ!」

「はい!ただちに!」あわてて助手らしき男が装置をいじる。


だが・・・・事態はすでに悪化していた。

「大変ですチーフ!原子力エンジンが暴走を起こしています!このままでは私たちごと......いや敷地ごと吹っ飛んでしまいます!」

研究チーフの顔が真っ青になった。

「ただちに施設から避難するよう指示を出せ!すぐにだ!」

「あの少年はどうするんです!」

助手の言葉に研究チーフは振り向きもせず言った。

「放っとけ!」

小屋に飛び込んだ護は、ドアの外で急に足音が遠のいていくことを不思議に思った。

「いったいなにが?・・・・・にしても、なんか熱すぎないかこの小屋・・・・ん?!」

次の瞬間、彼の視界は突如莫大な光に包まれた。

「これは・・・・いったい・・・」

それが彼の最後の意識だった。

彼は忽然とこの世界から存在を『消した』のである。

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Re: とある世界の重力掌握 4話目 ( No.3 )
日時: 2012/11/02 07:28
名前: 将軍 (ID: 8nwOCftz)

「あ、お帰りなさい白井さん…..ってだれなんですかその人?」

黒子に有無を言わさず連れてこられた風紀委員第177支部に入ったとたん妙に甘ったるい声が護の耳をうった。

「それを知るために、ここに連れて来ましたの…初春、この方がバンクのデータに乗っているか確認なさい 」

「はあ…わかりました白井さん。ところで、お名前はなんというんですか?」

突然、質問されあわてながらも、護は自分のフルネームを答えた。

「わかりました。古門護さんですね。すぐに調べます。」

そう言って常人ではできないスピードでキーボードを叩く初春を見てだいたいしってるけどここまでとはね……と素直に感心した護だが、同時に不安もいっぱいあった。

まず、ここが学園都市ならバンクにすべての学生の情報を保存しているはずである。

即ち、気がついたらここにいた自分がデータに残っているはずがなく、一発でよそ者だとかってしまう。

次に、もしバレれば不法進入で外に出されここ以上に知識がない外の町を彷徨うことになる。

それは絶対にさけたい。

なんとか言い訳を考えようと、思考の迷路に入りかけていた護だったのだが……

「検索、終わりました。護さんはちゃんとデータが残ってます。一昨日付で学園都市の住民登録がなされていますよ。」

思いがけない言葉に、護は自らパソコン画面に映し出されているデータを確認する。

そこには、どこで手に入れたのか無表情な護の顔写真と生年月日家族構成等々が書いてあった。因みに護は孤児である。

「えっと住所は、第7学区の…このアパートですね。」

そう言われても護にはさっぱり分からない。

「とりあえず、そこまで私が案内してさしあげます。初春! そのデータをコピーしてくださいな。」

印刷機からでたデータをチラッとみただけで、もう憶えたのか黒子はふんふんと頷くと、護に向き直った。

「一緒について来てくださいな。ついでにいくすがら学園都市の説明もして差し上げます 」

そう言われ、ありがたくそうしてもらうことにした護だったが行くすがら聞かされた話はだいたい知っていることだったので記憶がないふりをするのは大変だった。

そんなこんなでやっとアパート前につくと黒子は管理人らしきお姉さんとなにか話したあと、護に部屋の鍵をわたした。

「この部屋があなたにあてがわれた部屋ですわ。管理人さんのお話ではすでに業者の人が色々と荷物を運んでいるそうですから、たぶん部屋の内装などは完了していると思いますの。それと、なにやら無印の手紙がきてるそうですわよ。まあ、なにはともあれ、わたくしはお役ごめんということで帰らせていただきますわ。ああ、お姉さま! 」

なんか一方的に言われて、いくつか質問したかったのに黒子は、さっさとテレポートしてしまった。

「まあ、悩んでても仕方ない。とりあえず、部屋にはいろう 」

管理人さんに部屋のある階を聞き、エレベーターで3階にあるその部屋に向かう。

「すでに表札かかげてあるし…どうなってんだろ? 」

色々と疑問におもう護だったがとりあえず、中に入り……おもわず目を疑った。

部屋の中には、(なぜか)大きなタブルベットがドンと置いてありそれを置いても差し支えないくらい広々としている。

なんか最新っぽいハイビジョンテレビや、ハイテクすぎでどう扱えばいいか困るようなマッサージ機能つきの椅子など、誰がそろえたのかと気になるぐらい大量の家具がおかれていた。

「そういえば、手紙があるとかいってたよな…」

部屋のインパクトある内装に、気をとられすぎたがようやく肝心なことを思い出し、郵便口にさしてあった便箋をとり、机に置く。

つばを飲みながら便箋を切ると、中には一枚のコピー用紙が入っておりそこには護がこれから通う高校の名と、追伸として次のようなことが書かれていた。

『君が異世界からきたことは承知している。だが心配するな、私が君の邪魔にならないていどにサポートする 』

「僕が違う世界からきたことを知っている人がいる? 」

護にとってこれは結構衝撃的だった。

いったい誰が自分を支援してくれてるのか。

そして、一体なんの目的で援助するのか。

謎だらけである。

「ふう……いま、考えても仕方ないか。学校に通うのは2日後と書いてあるし、あしたここの人達に場所をきいたり、街を見て回ろう。とにかく今日はなにもかも急すぎで疲れた……..... 」

護は部屋のタブルベットに転がり、天井を見上げた。

「ここで寝て、目覚めたら戻れんのかな?…....当たり前の日常がこんなに恋しくなるなんて、元の世界では違う世界にあこがれて、違う世界では元の世界が恋しくなる……僕ってバカだな 」

自嘲しながら、護はまぶたを閉じた。

護は、まだこの世界を受け止められてはいなかった。

だが護が迷い込んだこの世界はすでに彼を取り込み始めていたのである。

Re: とある世界の重力掌握 5話目 ( No.4 )
日時: 2012/11/02 07:29
名前: 将軍 (ID: 8nwOCftz)

「う.......朝か…... 」護はまだだるい体を無理やり起こす。

「やっぱり戻れない……か 」

ココロのどこかで甘い希望を抱いていた自分がいた。

だが、どうやら、これは夢で目醒めれば戻れましたみたいな甘いオチは起きそうにもない。

「僕は……この現実を受け入れるしかないんだろうか 」

そんな思いに囚われ、なんだか落ち込んでしまった護だったが、落ち込んでばかりもいられない、なにしろ今日はしなければならないことが沢山あるのだ。

幸い冷蔵庫の中には、(なぜか)大量の冷凍食品が入っており、護は適当にそれらをレンジで温め、食べた。

(学園都市って冷凍食品の分野でも進んでんのかな?かなり旨かったけど )

そんな事を考えつつ、護はまずご近所さんへのあいさつから始める事にする。

まず1部屋目、左となりの部屋、表札は『土御門』?

「ま…まさか… 」ごクリとつばを飲み込み、インターホンを押す護。

「はいはい、誰なのだ?」

「ん?」

予想していたのと違う声に一瞬戸惑った護だったが、すぐに思い出した。

(そういや、土御門には義理の妹の舞夏がいるんだっけ )

「すいません。僕はとなりに引っ越してきた古門っていうんだけど、挨拶にきたんだ 」

「そりゃあ、悪いな〜。でもいまは家事で忙しくて手がはなせなくてな〜、悪いけどドアの前に置いといてほしい。あとでばか兄貴に取らせるから堪忍な 」

「因みに、お兄さんの名前は? 」妙な質問だと思われたのか、しばしインターホンは静かになったが、しばらくして……

「元春というんだぞ〜これから、よろしくな〜 」

となると、どうやらここは土御門兄妹が住むアパートと見て間違いなさそうだ。

「うん。有難う。こちらこそよろしく。」

とりあえず、左となりへの挨拶を完了したところで護はふと重大な事を思い出した。


「たしか........土御門兄弟の隣が上条さんの部屋だったよな......なんか、都合が良すぎな気がするぞ 」

昨日の手紙の主は、護が別の世界からきた事を知っていた。

その誰かさんがなんの理由もなくと禁シリーズの主人公格の人間達が暮らすアパートに護を住まわせるだろうか?

「悩んでいても仕方ない.........か。まずは上条さんに挨拶しなきゃな。ついでに高校の場所も聞かなきゃならないし 」

いよいよ作品の主人公と会う事になる。護は異様に胸が高鳴る感覚を覚えていた。

だが、2度、インターホンを押したのだが、反応がない。おかしいなと思いながら押し続けていると....
..

ドンガラガッシャーン!と景気よく何かが崩れる音と、外にまで聞こえる大声で、主人公の定番口癖である「不幸だあぁぁぁ!!」というセリフが。

「やっぱり、不幸体質なんだ......」

思わず呟いてしまった護だったが、上条さんと話すには今がチャンスである。

もう一度インターホンをおすとようやく上条さんがでた。

「はあ..........この上条さんになんの用でございますでそうか?.......」

なんか、凄まじく暗〜い声に若干下がりながらもなんとかわけをはなす護。

「そうか.......んじゃあその高校の名前を教えてくんないなかな?」

そういわれ、紙に書いてあった名前を告げると、意外な言葉が返ってきた。

「これ、俺と同じ学校だぜ。」

ここもそう、もはや仕組まれているとしか考えられないような、都合のよさ。

「なんか、あさいちばんに寝起きの邪魔しちゃって悪かった。ごめん 」

「いや、気にすんな。あんな事しょっちゅうだから.......もはや自分で認めてるって.......不幸だ........ 」

なんだか、またブルーモードに突入してしまった上条さん。

「なんか、悪い事したよな 」

と後ろめたさをおぼえながらも護はその後、ご近所さんへの挨拶を一通りすませた。

「さ〜て。一仕事終わったしこれから街に散策にでも乗り出そうかな?」そんな事を呟きつつ部屋の前まで戻ってきた護だったが…..

「うん?手紙?」

郵便口にまた無印の手紙がさしてある。それはつまり、手紙の主からの連絡がある事を意味している。

「ええっと......学校で身体測定システムスキャンを受けろ? 」

その手紙には、システムスキャンを受けに学校に行くようにという手紙と、GPS機能付きのハイテク携帯と解説書が入っていた。

護はしばし考え込んだ後、ポツリと呟いた。

「今日の散策は後回しだな...... 」

その1時間後、部屋にあった制服に着替えた護は同じ学区内にある某高校へと着いた。

そこでここの名物教師である、小萌先生とあって感動したりしながら、様々なテストを受けることとなった。

正直なところ作品の大まかな流れや用語は知っていても、詳しい内容までは知らない護としてはただ、言われたとおりの事をやるしか無かった。

そうして、約30分でテストは終了し、廊下で待つ事になった護だったが、内心不安で仕方無かった。

普通に考えて、自分に超能力などあるはずがないのだ。

「またせたね。結果がでたよ。一緒に着いてきてくれ 」

なんだか汗をかきつつ上擦った声で話す教師にもしかして、無能力者とばれたんじゃないかしらとビクビクしながらついて行くと.....

「へ?運動場?なにするんです?」

護が連れてこられたのは高校のグラウンドの中だった。

「ここで、君の能力のレベルチェックを行なう…....あそこが見えるかい?」

男性教師に指差され見た先にはなんだが超凶暴そうなゴリラ顔の教師が、なぜかヤリを構えてたっていた。

おもわず凍り付いた護などお構いなしに、教師は説明を続ける。

「あの先生が投擲用のやりを君に向かって投げるから、君はそのやりに上からの力をかけるようイメージをしてください 」

いや、普通に考えて無理でしょうと言う暇もなく問答無用とばかりににヤリが30メートルさきからすっ飛んできた。

「死ぬ!!」

もうこうなったらやけくそだ!と観念し、ヤリに上からの力をかけるイメージを全力でした瞬間だった。

ズズン!!と明らかにヤリが刺さるのとはまったく違う音が響いた。

「え?........ 」

護は目の前の光景が信じらなかった。

先ほどまで真っ直ぐに自分に向かってとんできていたヤリが、1メートルほど先で地面に横向きで埋もれているのだから。

「これは…いったい? 」

「それが君の力だよ。詳しい事はこの資料に書いてあるけど、かいつまんでいえば君の能力は重力を操る力。いまなら、上からのG.......重力を通常の倍近くかけてヤリを地面に埋めた訳だ 」

「重力を.....操る? 」

そう言われても、中学で勉強した程度の知識しかない護からすれば、どう答えれば良いか迷ってしまう。

そんな護の心情を汲み取ったのか、男性教師は付け加えた。

「そう難しく考えなくていい。要は、重力をかけるイメージをすれば使えるんだ。ただし、使い過ぎは危険だがね。なにしろ扱う力が力だ 」

教師は、次にグラウンドの端に置かれた廃車の前に連れてきた。

「この廃車に真上からさっきより強い力をかけるイメージをしてみろ 」

言われるままにさっきよりも強い力をかけるイメージをする護。

次の瞬間、ズグワァァン!という凄まじい音と共に、目の前の廃車は真上からかかった異常な重力によってただのスクラップと化していた。

「ふう........ここまでとはね、正直驚いたよ。測定結果レベル5で決定だな。君がこの高校で初のレベル5になる訳だ 」

護は教師の話を半分も聞いてなかった、レベル5といえば1人で国の軍隊に対向できる能力者を指すはず、この学園都市にも7人しかいない、最強の称号。

それに、自分がなると言われても実感がない。

なにより自分は『よそ者』。

いきなりレベル5級のちからがあると言われてもそう簡単には信じられない。

「序列とかは、後で統括理事会とかで出されて連絡とか行くと思うからまってるといい。いやあ、しかしウチに超能力者が誕生するとはな。先生は嬉しいぞ。ん?おいおいそんな不安相な顔をすんな 」

男性教師は護の不安げな表情を、能力に対する自信のなさだと受け取ったらしい。

「君の能力の使い方は、それだけじゃない。その力はまだいくつも応用が聞くだろうし........なにより、それは君の全力じゃないはずだ。気後れしなくても大丈夫だよ 」

確かに護は気後れしていた。それはレベル5という称号に対してだけではない。

新たな『自分だけの現実パーソナルリアリティ』自体に対しても気後れしていたのだ。

もし、この力を完全に受け入れてしまえば、この世界を、現実を『自分』の現実としてしまうこととなる。

あくまで、外から来たよそ者として、元の世界を『自分だけの現実』とするか、それともこの世界をそれと認めてしまうか。

それは、そう簡単に答えが出せる問題では無かった。


Re: とある世界の重力掌握 6話目 ( No.5 )
日時: 2012/11/02 07:33
名前: 将軍 (ID: 8nwOCftz)

「はぁぁぁ.......なんか色々ありすぎて心が追いつけてないかも....... 」

護は身体測定を終えた後、第7学区の街中を散策していた。

思ったより早く身体測定が終わってしまい暇を持て余すこととなった護はすぐにアパートには戻らずに、当初の予定だった散策をすることにしたのだ。

「しかし.......僕たちの世界にあった作品なんだから当たり前といえば当たり前かもしれないけど、なんか、現実と非現実がまじりあってるなこの街は...... 」

護はすでに大体の建物や店を見て回ったが、なんだかハイテクすぎてどう扱えばいいかわからない電化製品を扱う店から、そもそもこの作品世界のことを扱っていた雑誌を扱う店まで......元の世界にあるものも、こちらの世界にしかないものも複雑にまじりあっている。

「でも、今ではどちらが『現実』になるんだろ.....目に入るこの世界は今の僕にとってはたった一つの確かめられる『現実』だ......でも、この現実を認めたら僕は......戻れないような気がするんだよな.....だって認めることになっちゃうんだ。この世界が僕の生きる世界だって...... 」

すでにこちらの世界に来てしまってから、3日目になる。

3日もさめない夢はあるのか。

いやそれ以前にここまではっきりとした夢などあるのか。

試しに頬をつねってみてその痛みが本物だということを認識する。

「うう.....ほんとにどうすれば...... 」

ずっと考え事をしていると無性に甘いものが食べたくなった。

昔何かの番組で、疲れた時は糖分を摂取するとよいと言っていたことを思い出した護は、さっき通りかかった広場にクレープ屋台があったことを思い出しそこに向かった。

「さて......クレープも食べ終わっちゃったしこれからどうしようかな.....」

護は広場のベンチで1人座り込んでいた。

いまがまだ平日の午前ということもあり学生の姿はほとんど見えない。

広場には全くと言っていいほど人はいなかった。

「これから、家に帰って昼食にしようかな.....せっかく探索して料理屋も見つけたんだからそこで.....ってそうだ財布持ってきてないんだ.....どのみち、一度はアパートに戻らなきゃいけないか・・・・ 」

がっくりと肩を落とした護はふと自分の手に目をやった。

「重力を操る力か.....あの先生は力の使い方はこれだけじゃないとか言ってたけど.....そもそも重力の仕組み自体よく知らないしな......今のところ分かってるのは縦向きにかかる重量の強さを変えることができるってこと。じゃあ、想像するだけで力を使えるなら......横向きに重力をかけることはできるのかな?」

護は周りに目をやり人がいないことを確認してから、ベンチの横に置かれたごみ箱を目の前に置く。

「あれに横向きの重力をかけるイメージをする....... 」

護がイメージをかけた途端、ごみ箱は右からかかった強力なGにより吹っ飛び......広場の近くの銀行店の窓に直撃した。

「あっちゃあ、やっちゃったよ!」

頭を抱える護。

それと同時に気づいたことも1つあった。

(あのごみ箱、僕が一瞬力を使っただけで飛んで行って窓ガラスを割って止まった。もし僕がイメージした瞬間から自分で止める意思を持つまでGがかかり続けるならあのごみ箱はばらばらになるまで横にすすみ続けたはず。つまり力が働くのはイメージしている時だけということになるのか...... )

「おい!誰だごみ箱を投げたのは!」

店長らしき茶髪男のどなり声が響く。

ここで知らぬふりをしてにげだすという手もあったのだが、良くも悪くも正直な性格の護は素直に自首してしまい、その後、午後3時までの4時間、店の片付けと店長の説教、そして店の雑用の三重苦を味あわされることとなった。

「つ....つかれた....もう、動けない..... 」

なんか色々と雑用を押しつけられそれを全部こなすのに3時までかかったしまった護はさっきの広場の別のベンチに座り込むなり、即、意識が薄れてきた。

考えてみれば朝もそんなにご飯を食べていないし、昼も昼飯抜きで作業したせいで、ほとんど腹に食べ物が入っていない.....だが、それ以上に疲労が急激な眠気を引き起こしていた。

「ほんとは.....さっさとアパートに戻るのが一番なんだけど....もうげんか...zzzzzz.... 」護の意識は深い闇の中に落ちて行った。

Re: とある世界の重力掌握 7話目 ( No.6 )
日時: 2012/11/02 07:35
名前: 将軍 (ID: 8nwOCftz)

夢の中で護は逃げていた、たくさんの同年代の子供たちと一緒に。

夢の中で護は6、7歳程の姿になっていた。

必死に逃げ続ける。

周りの風景は見えない。

ただ前に向かって走っている。

だが周りの子供たちは次々と後ろから迫ってくる強大な化け物の手でつかまれ、消えていく。

そしてついに、自分ひとりになった。

もう、おしまいだ.....そう思ったときに『あの子』が現れた。

緑の服に身を包み、悲しげにほほ笑む少女。彼女は右手を一振りするだけで化け物を倒した。

その圧倒的な強さで、護を救ったた少女はそのまま護を守ってくれた。

「一緒に逃げよう? 」そういって護の手を引き駈け出した少女。

護を守り、励まし、勇気づけ、ともに泣いてくれ、ともに笑ってくれた少女。

その少女は、護のために.........

「うあぁぁぁ!! 」大声をあげて飛び起きた護に、まわりのベンチに座る学生たちからの痛い視線が飛んできて思わず身が縮む思いをする護。

だがそれよりも護の頭を占めていたのはさっき見た夢のことだ。

(あの、女の子.....誰なんだ?......)

護は夢の中の少女に覚えはない。

というより起きてみるとなんだか記憶があいまいでどんな顔をしていたかなどの肝心なところがあやふやなのだ。

(でも、なぜか懐かしい感じがする夢だった....どうしてだろ.....? )

頭をひねっても、なんら浮かんでこない。護はとりあえずこのことを考えるのはやめることにした。

「いま、何時だろ....って3時30分?まだ30分しか寝てなかったのか 」

まだ少し体はだるいが寝る前ほどではない。

家に帰るくらいの体力は回復したと感じた護はとりあえずベンチから起き上がろうとした......だが、次の瞬間背後から聞こえた爆音が護の行動を停止させた。

「んん!?いったい何が.....ってあれは!」

先ほど自分が迷惑かけた銀行店のシャッターが無残に爆破され3人組の強盗が外に出てきている。

「この場面....レールガンの一話であったやつだよな......たしかこの後、黒子が二人倒して、美琴が一人を車ごと超電磁砲レールガンで吹っ飛ばして......じゃあ、ここは大丈夫か 」

ほっと安心して立ち去ろうとした護だったが、ふと大事なことを思い出した。

「そういや、黒子や美琴のほかに初春と佐天さんもいるんだった!たしか初春はバックアップに努めていて、佐天さんは、男の子を...... そうだった!」

そう、佐天は強盗の一人がさらおうとしていた男の子を助けようとして一人で強盗のところに向かいけがを負ってしまうのだ。

「いくら、原作介入してしまうとしても....どうしてもそれだけは避けたい..... 」

実はというと、と禁、レールガン両シリーズのファンである護が作中、どうしても納得できなかったのがこのシーンだった。

そうしなければ美琴が介入するきっかけを作れず面白くなかったのかもしれないが、かといって無能力者である佐天さんがけがを負わなくてもよいはずだと護は思っていた。

なにも佐天さんが傷つかなくても黒子が最初から3人いっきに倒せばいいのに.....という理不尽な考えまで浮かんでくるほどだった。


実際は、警告されていたにも関わらず行動したのは佐天なのだから、怪我した責任は彼女自身にあるのだが......そういった理屈を踏まえていても納得できなかった。

なぜなら佐天さんはもっとも読者である自分に近いと感じていたからだ。

特殊な力を持たない、なにか特別な技能を持つわけでもない、生まれが特別なわけでもない、『普通』の少女。

そんな子が傷つくのを護は納得できなかった。

「だけど.....ここで動けば....原作へ介入すれば、もう後戻りはできなくなる......この世界で起こるすべてのことに巻き込まれる立場になってしまう..... 」

護の前に用意された選択肢は2つきり。そして時間はそうないし、待ってはくれない。

「それでも、構わない。だれが、何の目的で僕をこの世界に送ったかなんてわからない 」

護は唇をかむ。

「だけど、目の前で起ころうとしていることが分かっている以上....それを見ないふりできるような器用さは僕にはないんだよ!! 」

あまりにも幼稚な言い訳、あまりにも無責任な言い草、だがなんであれ護は選んだのだ。この世界を新たな『自分だけの現実』とすることを........


「離せ!」「だめー!!」

佐天は強盗犯から子供を取り返そうと、必死で子供をつかんでいた。

もとより体格や力が違う男相手にかなうはずがないことくらい分かっている、それでもこの子がさらわれそうなのを見つけた時、頭で『私にもできることはある』と思うより先に体が動いた。

「くそ!」男が前蹴りの構えをとる。「!!」思わず身構える佐天。だが、男の蹴りが放たれることはなかった。

「な....なんだこれ.....足が....上がらねえ! 」

「女の子相手に何やってるんだ、あんたは 」  

「んん!?」

強盗犯の男は前から平然と歩いてくる少年にいぶかしげな目を向ける。

「なんだ、てめえは 」

「古門 護。3日前、この学園都市に編入になった者だ」

「ホウ....要するに新参者ってことだ.....なんだこの能力は? 」

「さあね....何て呼ばれることになるのかは僕も知らない......まあ、それなりにかっこいい言葉にはなるんじゃない?なにしろレベル5の力だからな! 」

「レ....レベル5だと!3日前に入ったばかりの新参者がレベル5だと?なめんじゃねえ! 」

「それじゃあ、見せてあげようか?レベル5の力を 」

「ん?.....なんだ? 体が重い..... 」。

「重力だよ。僕の能力は、重力を自在に操る力。きみがどう動こうと勝ち目はないよ。」

「なめんなよ.....クソガキ....! 」

男は必至で動こうしているようだが上からかかるGによってその場に縫いとめられているかのように一歩も動けなかった。

男が動けない状態なのを確認した上で護は先ほど自分の力を試していたときに考え付いた技を試してみようかと考えた。

だが今の自分では一度に重力を使用した技を複数使うのは難しい。

ここでこの技を試そうとすれば男の動きを止めている重力の増加を解かねばならない。

だがそれでも決着をつけるため護は重力の増加を解いた。

ぜいぜいと荒い息を吐いてへたり込む強盗の男を見つめながら、護は自分の掌を前に突き出し、周りに普遍的に存在する重力をその掌に集めるイメージを行う。

その途端護の周囲半径1メートルの空間の重力がほぼ一瞬で護の掌の前で無色透明な力の塊となった。

一瞬で重力を抜き取られ無重力状態になった護の周囲の空間は圧力が0の真空となる。

よって無重力になった空間にあった空気は近くの重力がある空間すなわち護のすぐ周りに流れ込みその空気に運ばれて小石なども護の周辺で渦巻く。

その姿に銀行強盗の男は自分では勝てないと悟ったのか慌てて腰を上げバンに向かおうとする。

「直接重力の塊をぶつけたら下手したら強盗を殺してしまう......だったら..... 」

護は男がバンへとたどり着く前に彼に当たらない角度に掌を構えた。

護が狙ったのは強盗たちが乗ってきた車だった。

超重力砲グラビティブラスト
! 」

護の声とともに護の掌にためられた重力の塊が車に向かって放たれ、その側面に直撃する。

刹那、車は轟音とともに車体をゆがませて吹き飛び、はるか先の路上で横転して大破した。

その光景に声もあげることもできずに腰を抜かしている強盗たちを黒子が素早く拘束しているのを見て護は安堵のため息をついた。

群がって一部始終を見ていた、ギャラリーから歓声がわく中、護は子供を抱いたままぼうぜんとしている佐天のもとに駆け寄る。

「佐天さん。大丈夫?」

「へ?はい、私は大丈夫ですけど...... 」

「自分に能力がないからダメとか思わないでよ? 」

思わぬ言葉に佐天は思わず護を見つめた。

「佐天さんが子供を助けようとした時のあの行動は、そうそう誰かがマネできるもんじゃないよ。僕があの場所にいて、こんな能力を持っていってもきっと動けなかった.....すごいよ佐天さんは 」

「あ.....あの....」  

佐天はまだよく状況を理解できていなかった。

「どうして、私を助けてくれたんです?」

この質問に護はしばし沈黙し、やがて思い切ったようにこう言った。

「なにか特別な理由があったわけじゃない。ただ、君が傷つくのを止めたかった 」

一瞬、その場のときが止まった....ような気がした。

「あの....それって...... 」

佐天が何か言おうとした時だった。

「佐天さん!」

遠くから美琴が走ってきた。

「まずい!彼女の性格上、間違いなく勝負を仕掛けてくるにきまってる。ここは逃げるしかない!」

猛ダッシュで人ごみの中に突入し、姿を消す護。

佐天は、護が消えた人ごみをみながらぽつんとつぶやいた。

「古門 護さん.....か.....にしても、なんで私の名前を知ってたのかな?」

Re: とある世界の重力掌握 8話目 ( No.9 )
日時: 2012/11/02 12:40
名前: 将軍 (ID: 6Z5x02.Q)

「ふわぁぁぁぁ......眠い..... 」

護はかすむ目をこすりつつ、ベットから体を起こし時計を見る。

「まだ、5時か......どうせなら2度寝しちゃおうかな..... 」そう言ってベットに戻ろうとしたが、直前で思いなおして起きることにした。

(元の世界でも、そうやって起きる時間を延ばしたあげく遅刻してたからな.......さすがにこっちで同じことをするわけにはいかんよな)

「さて、朝飯何にするかなーってうん? 」護は郵便受けに白い封筒があるのに気づいた。

「そういえば、昨日帰った時には来てたっけ。異様に頭が重くて、読む気にもなれずに、そのあとベットにバタンキューだったから。さっぱり忘れてたけど。 」

封筒をとり、確かめる護。封筒の差し出し人は『学園都市統括理事会』。

「あそこから、来たってことは順位付けと名前が決まったってことか 」

手で、封筒を破り、なかから小さなコピー用紙を出す。そこには......

「本日付で、第7学区在住生、古門護を学園都市レベル5、第4位とする。なお能力名は『重力掌握(グラビティマスター)とする 」と書かれていた。

「『重力掌握(グラビティマスター)』か.......なかなかカッコいいじゃん。にしてもレベル5の第4位か.....まあ一方通行(アクセラレータ)や垣根帝督の末元物質(ダークマタ—)にはさすがに及ばないと思っていたけど、美琴より下だったか........ 」しばし落ち込む護だったが、逆に利点もあると思いなおすことにした。

「もし第3位とかなってたら、プライドをズッタズタにされた電撃姫(みさかみこと)が雷の槍とかぶつけてきそうだし......そういう点ではラッキーだったと思うべきかな?」

だが考えてみれば、そもそも新参者で、記憶喪失としている護が同列に並ぶことは、どの道、彼女のプライドを傷つけることになるかもしれないことに気づき、なんだか暗い気持ちになってしまった護だった。

「まあ、気を取り直して。朝食食って準備して散歩でもして学校に行こう。今日が初の登校日だし。」

その後、朝食を食い、散歩に出かけ、(なぜか)アパートの近くにいた美琴に追いまわされ、何とかまいて上条といろいろと雑談しながら登校し、教室で紹介され(また偶然に上条たちと同じクラス)、土御門と青髪ピアスを始め、クラスの生徒に質問攻めにされ、なんだかんだいって学校生活初日を楽しんだ護だった。

「ふう.....昨日とは対照的に今日はなかなか有意義な一日が過ごせたな。上条や土御門もいい奴だし....まあ青髪ピアスも悪い奴ではないしな........ 」初日ということで居残りなどもなく護は帰り道を急いでいた。

「えっと......話の通りにストーリーが進んでいくとすると、次に起こるのは『連続虚空爆破事件』のはず......あれは最終的に上条さんがその右手の幻想殺し(イマジンブレイカ—)で打ち消して防いだおかげで事なきを得たけど......僕が原作に介入した以上、なにか原作どおりにいかない事情が生まれてもおかしくはないはず.....だったら自分からも何か動くべきだよな 」

とはいっても護に、犯人を捕まえるあてがあるわけではない。そもそも『連続虚空爆破事件』の犯人の名を護は知らないのだ。『メガネをかけたウラナリ』とは覚えているものの名前は覚えていなかった。

「それでも、分かっていることは幾つかある。まず、やつは風紀委員(ジャッジメント)を標的(ターゲット)にしてるってこと。そして幻想御手(レベルアッパー)を使っているということ...... 」

レベルアッパーを使っている彼は、外に出歩いているときは、うつむいて歩きながらヘッドホンを常に耳にかけて歩いていたはず、人相はアニメでしっかり覚えているのでこの特徴をもつもので、風紀委員に敵意をむき出しにするやつを探せばいいのだ。

「と盛り上がってみたものの.......そんだけじゃ当てはまる人が多すぎて絞り込めないよな.....」

一機にテンションが落ちる護。

「となるとやっぱり、作品の流れが正しいことを信じるしかないか.......でも、それまでに大勢の風紀委員が傷つくのを防ぐぐらいなら、完全じゃないけどできるはず......それでいくしかないな。」

「あの....... 」突然背後から聞こえた声にびくっとなる護。

だが直後に聞き覚えのある声だと思いだす。

「第4位の古門 護さんですよね?昨日はありがとうございました 」

後ろにいたのは、昨日自分が助けた少女、佐天涙子だった。

「びっくりした.....佐天さんだったんだ.....いいよお礼は。僕が自分でやったことだし。」

「でも、あの時護さんが助けてくれてなければ私怪我してたかもしれません。それにあの時言ってくれたこと嬉しかったです 」

護としては、あんなこ恥ずかしいセリフ早く忘れてほしいところなのだが、それを自分の口から言い出せるわけがない。

「ところで、護さん。何をうんうん唸りながら歩いてたんですか?」

「え?見てたの? 」

「はい、護さんを見つけて話しかけようとしたんですけど、なんかそんな雰囲気じゃなかったんで、すこし距離を離しながら話しかけるころあいを図ってたんですけど...... 」

(まさか、連続虚空爆破事件とかの話しも全部聞こえたりしてないだろうな.......)と心配になる護だったが、佐天はそんなこと知る由もない。

「ところで、時間あいてますか?護さん 」

「うん?まあ、後は家帰るだけだから暇といえば暇だけど...... 」

そういった瞬間、護は佐天の眼がきらりと光った....気がした。

「だったら一緒についてきてくれませんか、今日『セブンスミスト』って店で初春や御坂さんたちと会う約束してるんですけど、御坂さんたちに護さんのことを紹介したいんですよ 」

護としては今朝、美琴に追いまわされたばかりであり、あえて蛇のいる穴な飛び込むような真似は避けたいところなのだが........

「そういえば、御坂さん知りたがってましたよ。護さんが去り際に何を言ったか。どうしようかな、思い切って話しちゃおうかな 」

ぞざぁぁぁと背中を冷や汗が流れていく感触を覚える護。明らかに佐天は脅迫している。

要するに、『ついてきてくれれば、あの話は言いませんけどついてこなければ..... 』という脅迫なのだ。

「分かった、行くよ。でそのなんとかっていう店はどっちにあるの? 」

ここで断って御坂の耳にあの話が入ったらと思うと寒気がする護。ここは素直に従うしかなさそうだと観念したのだ。

「ええと、私が案内しますよ。こっちです 」

なんだかにこやかな笑顔の佐天に護は(女の子ってみんなこんな風に黒いところあんのかな?)などと全世界の少女をてきに回すような不埒なことを考えていた。


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