二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】−白い絆− last up.091003 ( No.4 )
日時: 2009/10/07 17:55
名前: 暁月 ◆1pEIfYwjr. (ID: mdybEL6F)

 うとうとうと。かっくんかっくん首が揺れる。あんのクソガキ。覚えとけよ。
 昨日の夜新しく入ってきたガキは、途轍もなく寝相が悪かった。何度蹴られた事か。何度殴られた事か。おまけに布団は奪うわ……。布団を奪われたせいで、凍死するかと錯覚するほど寒かったのだ。

 先生の授業は聞かないけれど、先生を見ているだけで楽しかった。うん。けれど次々襲ってくる眠気の所為で目を開ける事もままならないのである。ああああああ、先生が遠くに感じてしまううううう……。

 いや、駄目だ!起きろ俺!
 ぱちん!自分の手の平で自分の頬を叩いた。ぐらり、と一瞬視界が揺れるとぱっちり目が開いた。

「え…と…何かあったのですか。晋助」
 先生が心配そうな顔をして晋助に言った。体調が悪いなら、部屋で休んでおいで、と言われたが耳の裏まで真っ赤にしてぶんぶん首を横に振った。

 こんな事になったのはあんのガキのせいじゃぁぁぁぁ!!


 四、アカネイロ


 ばしん!
 竹刀と竹刀とがぶつかる音。ちょうど今は剣の稽古の時間らしい。先生が指南している。

 零は女だからという事で剣の稽古は出れない、と思われていたのだが。松陽先生は男女平等うんたらかんたらで何とか剣の稽古も付けると言う事でまかり通した。

 女のくせに、などと一部の子らには言われたが年端がいかずとも剣の腕が立つ。自分より年下の、ましてや女に負けるとは誰も思ってはいなかった。零は今の所全戦無敗。ついさっきまで天人達と命をやり取りをしていた零だ。負けるはずが無い。

 それ故、良く思われる事はあまりなかった。虐め、とまではいかなかったが、最初に返り血塗れで現われた零。コイツに関われば殺されてしまうのではないか、と不安になり、その結果零はいつも一人だ。ので、誰よりも早く稽古場へ行き、誰よりも遅く教室に残っていた。


「ぅげ……忘れ物…」
 部屋に戻って初めて気付いた。ずぅーっと懐の中に仕舞っておいた飴玉。今日食べようと思ったのに。
 焦る銀時の傍でげらげら笑う小太郎と晋助に、銀時は苛立ちを覚えた。

「取ってこいよ。ついでに零も呼んで来てやれ」
 
 必死に笑いを堪えてクールに装う晋助だが、顔がひくひくと引き攣っている。その後ろでは小太郎が腹を抱えてぴくぴくぴくぴく。
 そーかそーか、そんなに面白いかコラ。







 どてどてと態と足音を立てて教室へ向かう。さっき晋助と小太郎を叩いたせいでひりひり痛む手を摩りながら。

 授業が終わった後は、誰も教室には寄りつかない。零がいるからだ。別に銀時は零の事を嫌いなわけではない。確かに生意気で五月蠅い所はあるが、それだけではそんじょそこらのガキんちょと同じ。寧ろ今まで自分たちが通ってきた道だ。
 そして、自分と境遇が似ている。俺だって先生に拾われるまでは零と同じ様な事をしてきた。褒められるような事はしちゃいねェ。

 ただ、決定的に違う事がある。零は俺達を避けている。きっと。自分が傷付くのを嫌がるかのように。




 がららら、と教室の戸を開けると、やはり零がいた。窓際でぼぉっと外を眺めている。夕日の光が零に当たって、とても綺麗に見えた。髪も着物も真っ黒な闇の様な瞳も全部茜色。
 

教室の入り口で立ち止まって、ただただ、零を見たいただけなのに。どくん、と自分の心臓が高鳴った。