二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ-At the time of parting- ( No.641 )
- 日時: 2010/04/25 16:40
- 名前: 亮 (ID: ycpBp.uF)
【−Another Story3− 涙とサヨナラ】
必死の顔でお願いされた。
今にも泣き出しそうな顔で、抱きしめられた。
「辛いなら、言ってくれ」
「お願いだから、泣いてくれ」
アナタの荷物になりたくない。
だからサヨナラ。
涙とサヨナラ。
「辛くないよ。 大丈夫だよ」
本当は、いつまでもココロが泣き叫んでいるのにね。
110 相違点
「それから、隼人とは会うてへん」(オサム)
オサムは、切なそうに目を細める。
「“復讐”なんてアホなこと、リサが望んでるワケあらへんのになァ」(オサム)
辛いのは、自分だけだと思っていた。
今のオサムに、かける言葉が見つからない。
自分の知っているどの慰めの言葉も、適さないだろう。
香澄は、黙って話しをきいた。
「これからも、アイツと会うことはないやろな」(オサム)
裏切ることだけはしたくない。
「ま、全部知っててBRの責任者になっとるヤツなんか、会いたくもないけどな」(オサム)
香澄は、その言葉が引っかかった。
“会えない”と、“会いたくない”は違う。
香澄とオサムの経験は、似ているようで、違う。
「違いますよ」(香澄)
香澄は、勇気を出して口を開く。
それまで下を向いて話していたオサムは、顔を上げた。
「何がや?」(オサム)
少しだけ、口調が厳しくなる。
自分のココロの、一番深いところに、今、香澄が立ち入ろうとしている。
「本当は、会いたいんですよね。 違いますか?」(香澄)
会って、これまでのコトを全部、確かめたい。
無事を確認したい。
今の気持ちを聞きたい。
また、一緒に笑いたい。
「“会えない”と“会いたくない”って違うと思います」(香澄)
香澄は続けた。
「それに、会わなきゃ分からないことたくさんあります。 実際に、私はこの目で中務さんを見ました」(香澄)
「何か、分かったことでもあるんか?」(オサム)
オサムは、冷めた目で香澄を見る。
奥底の、しまい込んでいたココロが顔を覗かせる。
「きっと、あの人、苦しんでます」(香澄)
今にも泣き出しそうな顔で、香澄達を見ていた。
「オサムさんだって、そうですよね?」(香澄)
最後に隼人の顔を見た日。
どうしようもなく、苦しかった。
それは、今でも。
「会ってください。 会って、話してください。 それで、支え合ってください」(香澄)
香澄は、何故だか必死だった。
気持ちが分かるから、痛いほど、分かるから。
だから。
「会えるのに、会いたいのに、会わないなんて間違ってます」(香澄)
オサムのココロの奥で、何かが動く。
あの日の隼人が目に浮かぶ。
リサでいっぱいだったココロの中に、ぽっかりとあいた穴をう埋めることが出来ずに。
支えもなく、寄り添えるトコロもなく、自分を守る楯もなく。
1人ぼっちで、生きる隼人が。
リサ、俺は、間違ってるんかな?
いつでも、リサはオサムのココロの中にいる。
問いかければ、笑顔で応えてくれる。
だから、寂しくなんか無い。
だけど、アイツは—————————————————————————————————?
「会えなくなってからじゃ、遅いんです!!」(香澄)
思わず、声を荒げる香澄。
ごめん、ごめんね。 皆。
気がつくのが、遅くて。
もう、会えなくなってから、全てに気がついたんだ。
本当に、ごめんね。
「香澄ちゃん・・・」(白石)
オサムは、ふっと笑ってベンチから立ち上がった。
そして、香澄達に背を向け、校舎の方へと歩き出す。
「気が向いたらなァ」(オサム)
手をヒラヒラとふりながら、明るい声でオサムは言った。
あの日から、俺はいつでもリサと共にいた。
だけど、アイツは違うんだ。
いなくなった現実の中で、ココロの中のリサをも失い、
ずっと、ずっと、1人ぼっちだったんだ。
1人ぼっちで、泣いていたんだ。
あの日から、ずっと。