二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: バトテニ-At the time of parting- ( No.686 )
日時: 2010/05/01 21:14
名前: 亮 (ID: cX1qhkgn)


 114 このキモチは?




「香澄」

私を、呼ぶのは誰?

「こっちへ来いよ、香澄」

桃?

「何だよ、何で、泣いてんだ?」

うるさいなァ、何でもないよ。



私が笑うと、キミも笑う。



「——————————————————もう、離さない」

ずっと、一緒。





朝。
目が覚めて、何もなかったことに気がつく。
ふと、隣を見ると、青学のレギュラージャージが掛けてある。
それを、しっかりと抱き寄せた。

「桃——」(香澄)

夢の中で感じた、あの懐かしい温もり。
別れ際の、あの台詞。
すべてを、包み込むように。
すべてを、胸の中にとどめるように。

涙を、飲み込むように———


「おはよーさん。 香澄」(白石)

振り返ると、そこには笑顔の白石が。

「あれ。 朝練は?」(香澄)
「俺ら3年は、引退した身やで?」(白石)
「あ、そうですね」(香澄)

白石は、何の違和感もなく、香澄の隣を歩く。
かつての、桃のように。
そういえば、桃の後ろは心地良かったな。
自転車に、よく2人乗りしたっけ。
安心できて、暖かくて。
少しだけ、汗のにおいがして。 でも、そんなの気にならなかった。
思えば、あの時はもう。  桃のことがスキだった。

ああ、何故、あんなコトになるまで気がつかなかったんだろう。

考えないようにしていたコトは、些細なことで浮かび上がってくるモノだ。
香澄はボンヤリと、遠い目をして考えにふけっていた。
白石は、そんな様子を見かねた。
が、なにも言わなかった。


やっぱり、まだ、香澄は。


そんなコトは、百も承知で。
もし彼女が、もう彼らのことを吹っ切れた、とでも言うならば、それはそれで薄情だろう。
白石は、どうしていいか分からない。
彼女のそばにいたい。
でも、ただの推測ではあるが———
彼女にとって自分は、一番、“彼ら”に近い存在。




テニスが大好きで、何よりもそれに熱中していた、“彼ら”に。




「ほな、3年の靴箱あっちやから」(白石)

白石は香澄に笑いかける。
香澄も、微笑む。
この表情のやりとり、出会ってから何度繰り返しただろう。

「はい、それじゃ」(香澄)

自分の胸の内など、彼女は誰にも言わない。
それは、すごくすごくすごく寂しいことで。

「ん」(白石)

それだけ言って、立ち去った。

分からないことは、もう1つ。










高鳴る、この鼓動。










これの、正体は————————————————————————————————————————?










分からない。
分からないことだらけだ。


分かっていることは、1つだけ。
















彼女の全部を、知りたい。
その上で、それごと、彼女を、キミを守りたい。










このキモチは、このキモチは。
もしかして。