二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【REBORN!】幻覚花弁。—*angraecum*— ( No.17 )
- 日時: 2010/03/20 09:23
- 名前: むく。 ◆Y1ybAG.6mU (ID: mwHMOji8)
◎ #04 レックレス・ドライビング
———ガチャ…
司令室から花を抱えて出てきた私は、左へ曲がって野猿と衝突した廊下の曲がり角の方まで戻った。
自分の足音だけが辺りに響く。外はまだ薄暗くて、フクロウがこっちを覗いているような雰囲気だ。
野猿も私と同じように朝早くに起きてしまったのだろう。
「…ん、ちょっとそこの人」
すると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
マイペースで無表情なあの顔を思い出させる声が。
「…スパナか」
私は体を前に、視線だけ彼の方へ向けた。
「なんだ、あんたか」
予想通りその人物はスパナで、彼は片手には薄っぺらいノートパソコンを、口の中にはいつもの飴を咥えている。
「んー、緊急事態が発生した」
スパナは何度も唸りながら、ちらちらとパソコンに目を遣りつつ続ける。
「ウチのモスカが脱走した」
………。
あの大型機械が脱走するのは何度目だろう。
そうは思ったものの当然ながら怒ったり呆れたりする事はなかった。
「発信器をつけて置いたからモスカの位置は把握している。ただ…アレはまだ正常な段階ではない。暴走してるかも」
体を百八十度回転させ、”してるかも”というスパナの曖昧な発言に私から訂正する。
「…それは確実に暴走してる」
四分休符を二つ程の間を置いてから、
「モスカの現在地は——第二格納庫」
「…正解だ。さすが郁だな」
スパナは僅かに口元を緩めた。
「格納してある大砲や戦闘用の爆弾の数々を爆発させたら地上に大きな反響があると思う。最悪、地割れを起こす可能性も」
私はスパナを見上げながら言う。
「へえ」
すると彼は感心したように相槌を打った。
「郁がいんならもうこのパソコンは要らないな」
モスカの暴走元はパチンと音を立てながらパソコンを閉じた。
——ドガアァアン!!…
すると同時に、まるでパソコンを閉じる事が暴走スイッチだったかのように凄まじい爆発音が耳の鼓膜を貫いた気がする。
「上に影響を与える前に暴走を阻止しよう。地上に反響が生じるまでまだ間に合うから」
私はスパナの返答も待たずに、早い足取りで第二格納庫へ向かった。