二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.210 )
- 日時: 2010/11/24 20:13
- 名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: /fPzXfuw)
- 参照: 新幹線は詳しくないのでよくわかんない
蓮がバスの中で夢の世界に入り始めていた頃、新幹線は東京を出発し、博多へと進んでいた。深夜であるし、時期が時期なので車内はガラガラ。ところどころぽつぽつと座る人々も大人の風貌の人間が多い中——明らかに周りから浮いた人間が二人、隣同士に座っていた。一人はまた私服姿の涼野であったが、横には見慣れない少年がいた。
年のころは涼野と同じくらいだろう。炎を思わせる横に跳ねた真っ赤な髪。頭の上では何やらチューリップのような形になっている。少しきつめな金色の瞳は自信に満ち溢れたような光を宿し、鋭い観光を宿している。服は両袖部分は白く地の部分は黒いジャンパーの様な上着に、緑がかかった黄色の短パン、藍色のスニーカーを履いている。今は足組みをし、頭の後ろで手を組みながら、不機嫌そうに涼野を見ている。
「涼野 風介、おまえ長い間どこに行ってたんだよ」
窓に頬杖(ほおづえ)をついて外の景色をボーっと眺めていた涼野は、めんどくさそうに横にめをやった。めをやっただけであった。何事もなかったかのように、再び視線を窓の外に向ける。外は真っ暗で、時折見える街灯の光を除いては何も見えない。
「雷門イレブンを追っていただけだ、南雲 晴矢(なぐも はるや)」
涼野はめんどくさそうに答えた。横に座る『南雲 晴矢』と呼ばれた人間は露骨に嫌そうな顔を作る。
「それだけのためには、ずいぶんとなげー外出だったよなぁ?」
「キミには関係のないことだ」
ガラス越しに涼野が嘲笑う表情が見え、南雲の顔はますます強張った。涼野はまだ嘲笑うような表情を浮かべながら、南雲の方に身体を向けた。
「キミこそ、何故私の後をついてくるのだ」
南雲は苛立ったのか舌打ちをすると、
「風介、てめーがオレを京都行きに誘ったから、し・か・た・な・く! 着いてきてやったんだ」
”仕方なく”の節々に力を込め、南雲は吐き捨てるような勢いで涼野に噛みついた。金色の瞳でぎっと涼野を睨む。猛獣が見つめるような恐ろしい視線だが、涼野はまったく物怖じしない。鼻で笑うと、冷笑を浮かべた。
「”仕方なく”? 冗談も休み休み言うことだね。キミも私も考えることは同じだろう。京都に行けば、確実に蓮に会える。彼に会いたいからこそ、私に着いてきたのだろう」
正鵠を射る(せいこくをいる)ことを涼野にずばり指摘され、南雲はばつが悪そうに俯いた。そして悲しげに蓮の名を呟いた。
「……蓮」
「彼とは5年ぶりの邂逅(かいこう)だったが」
涼野は口元にほほ笑みをつくると、再度窓の外を見やった。また南雲に背を向けた。
「印象はずいぶんと変わった。あれほど私とキミの背に隠れて泣いていた蓮はずいぶんと強くなったぞ。いや、今も泣いていたらおかしいな」
自分に言い聞かせるかのように涼野は、南雲に語りかけ、自嘲めいた笑みを浮かべた。南雲は顔を上げ、席わきの窓ガラスが映す涼野の表情を黙って睨んでいる。と、急に涼野が少し顔を下げ、しゅんとなった。傍から見てもわかるほど寂しげな面持ち。南雲は目を瞬く。
「だが。あの……愛嬌(あいきょう)のある笑みは、昔と変わらないね」
何か思うところがあるのだろう、涼野はそれっきり口をつぐんでしまう。憂いに満ちた瞳がガラスを通じて南雲の瞳に飛び込んでくる。正確には涼野は視線をげていて、南雲を見てはいなかったが、嫌でも窓ガラスを見ていれば涼野の瞳は見えてくる。
南雲もまた口を閉ざしていた。退屈そうに席前の網に手を突っ込んでペットボトルを取り出すと、ごくごくと飲んだ。列車が線路を走る音だけが定期的に聞こえてくる。
「あいつ。なんでオレ達の前から姿を消した」
ややあって南雲が恨みがましく口を開いた。ペットボトルにふたをし、乱暴に網の中につっこむ。涼野が振り向く。
「また蓮が私たちを裏切ったと言うのか」
非難するような口調で涼野が尋ね、南雲は目を細め、苛立ち混じりの口調で答えた。
「いなくなるタイミングがよすぎるんだよ。お前が作り話してなきゃ、確かになんかあったのかもしんねーけどよ。……オレは自分の耳で蓮の言葉を聞かない限り、あいつを完全に信じることはできない。それにあいつは雷門イレブンなんだろ?」
「ああ」
「話は変わるが、風介こそ正体がばれたらどうする気なんだよ」
涼野は考え込むように視線を数秒宙に彷徨わせ、南雲をしっかりと見据える。青緑の瞳に強い意志の様な光が宿っていた。
「そのことなら何度も考えた」
瞳に宿る光同様、迷いのない声で涼野は続ける。
「正体が判明していまえば私と蓮は今のままではいられないだろう……だが」
ためらうように涼野は一度言葉を切った。顔に戸惑いの色が出ている。
「だが?」
南雲がせっつき、涼野は迷いを払った顔で南雲をまっすぐ見つめる。
「だがこのまま敵同士でいれば蓮とは必ず会える。それだけで私は幸せなのだ」
「…………」
「5年前のように行方知れずになることもなく、ずっと蓮と会い続けることが出来る。それがどれほど幸福なことかわかるか?」
「わかんねーよ」
南雲は呆れたように返事をした。涼野がふっと笑う。
「なら、たとえ話をしようではないか。たまたまスーパーで何でもよい、私がある菓子を買うことをためらったとする。欲しい私は翌日再度買いに行く。すると、そのある菓子はスーパーの棚から既になくなっていた、つまりは入荷しなくなっていて、二度と買えなかった——そんな経験は一度や二度、キミにもあるはずだろう」
「……まーな」
「この話と同じだ。菓子を買わない……ためらっていては、私は菓子を二度と買うことが出来ない——つまりは蓮と二度と会うことが出来なくなってしまうと思うのだ。彼がどこに住んでいるかなど私は知らないし、この戦いが終わったら蓮がどこへ行くのかわからない。敵だからと躊躇(ちゅうちょ)していては、彼は名字の通り、渡り鳥のごとく、どこか遠くの地へ——行ってしまう。そんな気がするのだ」
〜つづく〜
お久です^^久々なせいか、愚作であり意味不明な言葉満載になってます。やっと南雲出せました〜ファンの方長いことお待たせしました!これからがんがん出てくるので、その辺はご安心を!
いやはや11月にもなると勉強という名の幻想が私を包む……といいますか、本当にいっぱいいっぱい+中間テストがありました。
こんな中で私はなんと短編を始めてしまいました(ご存知の方も多いと思いますが^^;)。興味のある方は、ぜひぜひ調べてみてください^^タイトルは「忘れな草」ですv向こうもそろそろ書かないと(汗)