二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン〜試練の戦い〜 ( No.214 )
- 日時: 2010/12/11 13:57
- 名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 9GT/oPaY)
北海道を発った雷門中学校サッカー部一同は、再度南下を始めた。
途中瞳子はSPフィクサーズに京都のどこの学校が襲撃予告を受けたのか調べるよう塔子経由で尋ねた。いくらチームに総理大臣の娘がいるとはいえ、公共の機関をただで使うのはどうかと思われるが、塔子に言わせると大丈夫だそうだ。蓮は、前の秘密の北海道旅行という弱みを握られているので口出しすることはできなかった。
休憩しながら高速道路を南下し、イナズマキャラバンはいよいよ京都の街に入る。わずか数百年前の首都まで首都だった街。大きな路線の駅前はビルが並びかつての面影(おもかげ)は見られない。だが、一度駅前を離れると寺やTVで見るような昔ながらの街並みが広がり雷門サッカー部はおおいにはしゃいだ。壁山が土産を買いたいと叫んで、みなの失笑を買っていた。
北海道に比べると温度は心地よいもので、外でサッカー練習などもやりそうである。
イナズマキャラバンは京都駅から一時間ほど走った、郊外のような場所で止まった。街から少し離れた、畑と田んぼが織りなす緑が永遠と広がる殺風景な場所だ。瞳子に言われるがままイナズマキャラバンを降り、10分程歩くとこじんまりとした丘が見えてくる。丘にはなぜか竹林があった。空に向かいまっすぐのびる竹の長さは数メートル程。まめに手入れされているのか長さは均一だった。
建物の一部と思わしき赤い壁面と石造りの屋根が竹林の間から顔をのぞかせている。。
「あれが漫遊寺中学校? なんだか中国のショウリンなんとかに出てきそう」
蓮が竹林の間に見える建物らしきものを指さしながら言った。すると先頭を歩く瞳子が後ろを振り返り、
「ええ。SPフィクサーズからの情報によるとあそこで間違いないそうよ。漫遊寺は、“裏の優勝校”とも呼ばれる実力があるそうだから、それで狙われたのかもしれないわね」
その話を聞いていた鬼道が腕を組む。
「聞いたことがある。表のフットボールフロンティア優勝校が帝国学園(ていこくがくえん)だとすると、裏の優勝校は漫遊寺中学校だと」
思いもかけない話に雷門サッカー部は素直に感嘆の声を漏らす。世の中はまだまだ知らない未知のことだらけだ、と蓮は考えていた。
それから漫遊寺中学校の内容をとりとめもなく話していると、あっという間に丘のふもとについた。
竹林が日の光を遮り、辺りは薄暗い。そして少し肌寒い。竹林の足元には緑の藻(も)が多く張り付いていて、京都と言う土地柄のせいかどこか歴史を感じさせる。
そんな竹林の間が、ある縦のラインだけ不自然になくなっていた。漫遊寺中学校へと続く石段があるからだ。横幅は大人四人は楽々通れそうなほど余裕はあるが、段数はかなり多い。ゴール地点の段は灰色の点のように見える。
あまりの長さに雷門サッカー部は絶句しながら、一段目へと近づく。光が差さないせいだろう。灰色の石のあちこちにコケが生えている。
「んじゃあ行くぞ!」
円堂が張り切りながら拳を天に突き上げ、意気揚々と階段をのぼりはじめた。
「おー」
他の部員たちはやる気がなそうな声を出しながら、弱々しく拳を上げた。
調子よく階段を進んでいく円堂と対照的に、いかにもだるそうな感じでゆっくりと階段を上り始める。手すりと言うものはないので、自分の力で上るしかないのだ。
円堂はわくわくしているのだろうか。階段を一段や二段飛ばしながらどんどん進んでいく。
「白鳥! 早く来いよ!」
「ま、待てよ! 円堂くん!」
初めから円堂の横にいた蓮は不幸にも、円堂と同じペースで進まなければならなくなっていた。慌てて階段を一段、二段とまたぎながらぐいぐい上って行く。
「ほら、もうついただろ?」
円堂に追いつくことだけで必死だった蓮は、大した疲れも感じないうちに学校前についた。
漫遊中は本当に中国にありそうな学校だ。校門は日本にある寺の入り口のようだ。違うのは寺は屋根部分などは黒などが多いが、こちらは赤いと言うこと。校門の向こうはグラウンドらしく、サッカーゴールとプレイしている選手の姿が視界に飛び込んでくる。
蓮がぼーっと漫遊寺中学校を見ていると、円堂は一人校門の中に駆けこんでいった。蓮は我に返り、円堂の後に続いて、
「どわあっ」
「わっ」
二人分の悲鳴が上がった。砂煙が派手に上がる。グラウンドで練習する選手たちは誰も見向きもしなかった。
煙が止むと、深さ二mほどの穴の底に円堂と蓮が倒れているのが見えた。円堂がうつ伏せで穴の底に倒れ、その背中に蓮がやはりうつ伏せで乗っかっている。二人とも苦しそうに呻いていた。
円堂は落ちる時に、とっさに蓮のジャージの袖を引っ張ってしまった。そのせいで蓮はまき沿いをくらって、共に落ちてしまったのだ。
「なんで落とし穴があるんだよ」
蓮は円堂の背中から起き上がりながら、憎々しげに上を見上げる。すると上からこちらを見ている一人の少年と目があった。
ベージュの道着をまとっているから、この学校の生徒なのだろう。悪魔の角を思わせるように、左右で二対ずつ跳ねている藍色の髪。小さな顔からすると結構大きめな山吹色の瞳。見上げているので何とも言えないが、かなり小柄な体格のように思える。
初めこそ不思議がるようにこちらを見下ろしていたが、蓮と視線がぶつかった瞬間、口元が歪んだ。嘲笑するような顔つきになり、馬鹿にするような視線を投げかけて来た。
「うっしっし〜ひっかかったなぁ」
少年は拳を口元に当て、実に楽しそうに笑った。蓮は目つきを細め、上にいる少年に尋ねる。
「この落とし穴作ったのキミだね?」
「そうだよ。オレが作ったんだ。うっしっし」
少年は明らかに蓮を小馬鹿にする態度で答え、愉快そうにニヤリと笑った。蓮は呆れたようにため息をつくと、腕を組んで少年を睨みつける。
「ずいぶんとひどいじゃないか」
睨みつけられた少年はわずかにびくついたが、べ〜と舌を出して見せる。
「ひっかかるほうが悪いんだよ」
さすがにイライラが募ってきた蓮は、目つきを鋭くした。怖い、と言うか迫力のあるもので、少年は蛇に睨まれた蛙のように硬直した。顔から一気に血の気がうせ、青ざめていく。逃げ出そうとそろそろと穴から離れようとする。逃げられる前に叱り飛ばそうと、蓮は大きく息を吸い、怒鳴ろうと思った瞬間、
「こら! 木暮(こぐれ)!」
耳の鼓膜が破れるかと思うくらい大きな怒鳴り声が聞こえた。蓮は怒鳴るのを止め、反射的に耳を両手で塞いだ。同時に少年が青ざめた顔のままどこか遠くへ走って行くのが目に入ってきていた。
〜つづく〜
やっと定期テストが終わりましたぁ!受験が終わるまで週一更新ですが、よろしくお願いいたします。
気付いたら参照が3700!
このような愚作を見てくださってありがとうございます!
木暮をやっと出せましたv落とし穴を作ったりとやんちゃな子ですが、好きですよ〜!最近はいたずらがめっきり減って悲しい限りです;;