二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【D灰】…空白の歯車…8/5up!!! ( No.144 )
日時: 2010/08/09 10:09
名前: なさにえる (ID: G9UEx1he)

           パスカヴィル
     第5夜 Side.異端者



ギザのピラミッドを背後に異端者二名はひたすらにエジプトの街を歩いていた。
歩き始めたのは昨日の昼なのにすでに日も地平線に隠れようとしていた。



「なぁ、ルナ」
ヴォルフは酒ビンを振り回しながら前方を歩くルナに尋ねた。

「なんだ」
「その研究所って言うのはいつ着くんだ」
「あと五時間二十分だ」
よどみなく語られたその言葉にヴォルフの表情が凍り付き、そして___





_______ブチッ!!!



瞬間、ヴォルフの手が危険に赤黒く輝くと酒ビンは一瞬で消し飛び周囲が数メートルの球を描いて崩れるようにして塵に変わった。


           ヘル
「……こんなところで地獄なんか使うな」

紅い瞳でヴォルフを睨みつけるルナ。その周囲は青白い光で守られている。

「これでちょっとはすっきりした」

そう言った瞬間ルナの能力付きの蹴りが飛んだ。
鈍い音をたててヴォルフが光る手に打ち当たる。
「……なにがすっきり。家屋破壊、歴史建造物の損害、勝手な能力乱用…」

「……だめだ、ルナの説教聞いて余計にイライラしてきた」
「いい加減にしろ」
「……」
「…どうした?」
「いや、いつものパターンだとここら辺でギルのヤロォが叫ぶ頃だと思うんだが」
「フム……」
納得顔で立ち止まったルナは周囲を見渡した。
「ところでギルバーシュは何処だ」
「しらねぇな」
「……」
「……」
「「フム……」」
二人は同時にそう呟いて腕を組むと__







「「まぁ、平気だろ」」

薄情とも言える結論を下してすぐに歩き出した。
脇を一組の男女が通るが二人は気づかず、

「で、あと何時間だっけか」
「五時間十七分」
「なげぇ……」
「文句を言うな」
「だってよ____













「うわぁあぁぁぁぁん!!!不幸だあぁぁああああぁあぁ!!!!!」

突っ込むものも反応するものもいないエジプトの市場でギルバーシュは叫ぶ。

見事にヴォルフとルナの姿を見失っている。
「ここどこおぉぉおぉぉぉ!!!???」
無駄にでかい叫びは周囲の人間の視線を集中させ……






気がつけば市場のすみでギルバーシュは色黒の男達に囲まれていた。いわゆる”からまれた”状態である。

「うわああぁぁあん!!!やっぱ不幸だあぁぁぁ」

「いい加減黙ってくれよ。おじょーさん」
リーダー格らしい男は叫ぶ彼女をあきれた目で見た。

「さぁ、ちょいと俺たちについてきてくれるかな」
「オレたちへのボランティアだと思ってさ」
無茶苦茶な言葉をギルバーシュに投げかける男達。すでに現状は”からまれた”というより”売られる”状況に傾いている。

「やだよおぉぉ」

ギルは脅えたように呟いた。

「拒否権はないんだよ、おじょーさん」
リーダー格の男は銀色のナイフを取り出してギルの首筋に近づけた。
ギルの顔に恐怖の色が浮かぶ。

「だから、そんなものしまってよ。余計に危ないからぁ」

「危ない思いしたくないなら一緒にくればすむんだよ」
男は笑っていった。
しかし、ギルバーシュは動こうとせずに更に恐怖と焦りの表情を浮かべた。
「もう、そのナイフをしまってよぉ」






































                        、、、、、、、、、、、、
                 「出来るだけ殺しはしたくないんだよぉ」











「?」

男達の頭上に『?』が浮かぶ。

__この女、自分のおかれてる状況がわかってるのか?__



そう考えると同時にリーダーの男は底知れない恐怖がわき上がってくるのを感じた。




しかし、リーダーの心のうちなど知らない一人がギルバーシュに詰め寄った。

「このアマ!?なに言っテヤ_____ガッ!!!」

瞬間、そう言って彼女の腕を乱暴に掴んだ一人が大量の血を吐いて倒れた。



「ッ!!??」

そして、ギルは静かに笑った。

              ◆・◆・◆・◆・◆・◆


ひたすら道を歩いていたヴォルフとルナ。
たびたび文句を言っていたヴォルフも言っても無駄だと判断したのか今は無言で酒を煽っている。
ふとルナはギルのことを思い出した

「勝手に能力使ってないだろうな……」

「…………なぁ」
「ギルバーシュが暴れてるならお前が暴れても良いという制約はない。黙って歩け」
「……」


              ◆・◆・◆・◆・◆・◆



「だから言ったのに」
ギルは寂しそうに呟いた。さっきまで叫びまくっていたのに落ち着いた物で、いつの間にか口調が正常に戻っている。


「イルネスはすぐに暴れたがるから___僕は面倒ごとは嫌なのに」


そういうギルバーシュは血のように赤く輝く瞳を残った男達に向けた。
「でも、もう良いよね。面倒だし」



紅い瞳が男達に向けられる。
吸い込まれるような紅い瞳__赤く__紅く__垢く__深く____


男の視界が紅で埋め尽くされ__

















































「ルナとヴォルフどこまでいっちゃったかなぁあぁぁ」


口を尖らせるギルバーシュ。
輝くようだった紅い瞳はもとの赤に戻りギルの雰囲気も空気もさっきまでの叫び続けていた少女のものになっていた。

しかし__彼女の足下には折り重なる死体と血の海が出来上がっていた。


「早く行かなきゃな」
足を進めようとして、目の前を影がかすめるとギルバーシュの足下に一本のダーツが突き刺さった。

「!?」

驚いて振り返ると青髪の青年がギルバーシュを見下ろしていた。
その黒いコートの胸に刻まれた特徴的な模様。

「……エクソシストか」

軽い口調で呟くギル。


「俺は単なる通行人で「もう、てっさいあさぁん。いきなり何処行くんですかぁ」
無駄に明るい声が青年__テッサイアの台詞を遮った。
じとっとした視線を少女に向けたが少女__グロリアは気づかずこの状況に息を飲む


一方ギルは面白そうな目で二人を代わる代わる見ると尋ねた。



「随分騒がしい子が来たね。アンタもエクソシスト?」




____美シク
  ______妖艶デ__









                   __________危険ナ笑ミヲ浮カベテ