二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: *VOCALOIDのお話* ( No.2 )
- 日時: 2010/04/25 14:19
- 名前: 黒蝶 (ID: rdOgUgjF)
+第1章『見捨てられたVOCALOIDのお話』+
1粒:歌わせて
「へたくそ」
胸の奥にとげが刺さったような気持ちになった。
ずっと歌って言いたかったのに最近はマスターによく下手とか言われる。
苦しくて、苦しくて。
「お小遣いを前借りして買ったのに」
マスターの視線が、痛い。ずきずきする。
私は下を向いてへこんでしまう。
マスターの方をみるとマスターはかちかちとマウスを動かしてパソコンの閉じるボタンを押した。
「今日はもう、使わないから」
バタン
そう言うとマスターはどこかに出掛けてしまった。
もっともっと・・・・・・・・・・・歌いたかったのに。最近はすぐにパソコンを閉じる。
何で?
私はVOCALOIDの初音ミク。
VOCALOIDを買ってくれた方に抽選で、初音ミク。という感情のある等身大の機械が送られる。
勿論、鏡音リンレンや巡音ルカ、その他のVOCALOIDも抽選がある。
私はこのマスターの元に当たった。
当たる前は、とても楽しみで不安な気持ちもあったけどわくわくしながら待っていた。
一番最初に・・・・・・・・・メイコ姉が当たったかな・・・。次はカイト兄・・・。
そして次に私が当たった。
其の後にリンちゃんやレン君も当たったみたい・・・。
・・・自分のことが一杯一杯で調べることもままならない。そんな時間があったらマスターに見捨てられないようにしないと。
「・・・・・・・・・・・・っ」
涙が、出てきた。でも、絶対にマスターの前では泣けない。更に使って貰えなくなるから。
近くにあったハンカチで涙を拭う。布団に汚すことは、できないから。
このハンカチも、マスターに買って貰ったもの。身の回りのものは一番最初に買って貰った。
あの時のマスターの顔は、楽しそうだったのに。
『ただいま』
「っ!?」
マスターが帰ってきたみたい。一階から声が聞こえて、階段を上る音が聞こえる。
急いで涙を拭ってハンカチを元通りにして、精一杯の笑顔を作る。
ガチャ
マスターがこの部屋に入ってくる。
私はマスターの方に振り向いて、精一杯の笑顔を向ける。
するとマスターは驚いたような表情をした。
私、笑っていたらおかしいのかな?不安になってくる。
「御前・・・」
マスターがそう言った。きっと、なぜ驚いたのかその理由を言ってくると想う。
もう、失敗は赦されない。笑っていて駄目なら、マスターを元気にさせようと想って・・・とか言おうかな。
「なんで、笑いながら泣いてるんだ?」
・・・・・・・・・・・・・・・え?
嘘、目から涙が出てる。何で?一生懸命笑ったのに。
でも笑いながら無いているのは事実。
おかしいな。何がそんなに哀しいのかな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・哀しすぎて何が何だか分からない。
きっと哀しい気持ちを抑えていたリミッターが、外れたんだ。
だから、笑いたいのに笑えない。
いや、笑っているけど涙が出てくる。
私の気持ちと裏腹に勝手に涙を流す。
お願い、止まって。これ以上私をマスターから引き離さないで。