二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 鋼の錬金術師 —消えない嘘— ( No.16 )
日時: 2010/05/19 17:21
名前: ちー ◆m6M0e7LQrQ (ID: MnGilHyY)

 いつも、あんたは嫌な事ばかり言うじゃんか。
……でも、そんな姿、初めて見たよ。

       第5話 「初めて見る姿」

「真実の……錬金術師……? へぇ……。だから、オレの能力も分かったんだな……」

 エドワードが言うと、その軍人は深くうなずいた。
だが、話はそこまでだった。

「う゛っ……!」

「! もうすぐ、“あの人”達がきます! 錬金術師どの、頑張ってください!!」

 苦痛に顔を歪める少女をその軍人は励ましながら、エドワードが少女に押し付けているコートを、一緒に強く押し付けた。
ますますコートは赤く染まって行く。

「なぁ、あんたが言った、“あの人”って誰だ?」

「あぁ。それはですね——。おや、ご到着ですよ」

 軍人がニッコリと微笑んで、横を向いた。
 エドワードも軍人と同じ方向を向いた瞬間、梅干しを丸ごと飲み込んだような顔をした。

 そこには、エドワードの上司、ロイ・マスタングと、その部下、リザ・ホークアイがいた。
 ホークアイはまだいいものの、ロイはエドワードの苦手(嫌い)な上司なのだ。

「待たせてすまなかった。御苦労。彼女は今、どういう身だ?」

「ハッ! 強盗に脇腹を撃たれ、出血がとまりません!!」

 軍人が敬礼しながら、ロイに言った。ロイはうなずくと、エドワードを見た。
いつもはからかうはずのロイが、今日は真面目な顔で言った。

「悪いが鋼の。少しばかり、手伝ってもらうぞ」

 そう、真剣な声で言った。

「あ、あぁ。分かってるよ」

「それならいい。おい、そこ! 客達の中に、この少女以外怪我人はいなかったんだな!」

 ロイは担架を持っている救急隊に向かって、そう叫んだ。
救急隊は慌て、担架を下ろし、敬礼しながら言った。

「はい! おりません!」

「なら、その担架にこの少女を乗せ! 鋼の。悪いが、そのコートはおさえたままにしておいてくれ」

 エドワードはうなずいた。

「よし。すぐに少女を担架に乗せろ! 今すぐだ! そして直ちに病院へ迎え!!」

てきぱきと指示するロイを、嫌みを言わないロイを、エドワードはただただ見つめていた。

   〜つづく〜