二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 東方 『神身伝』 ( No.24 )
日時: 2010/05/10 11:37
名前: お⑨ (ID: Gx2AelYh)

第三章 続4

飛び上がった当の本人はと言うと。

「おいおいおいおいおいおい、何処まで行くんだよ。」

焦っていた。
本気の力で飛んだは良いが、自分の限界を知らない冬馬は、自分の予想の範疇を超えた高さに、かなりの焦りを覚える。

「着地できるのか・・・・・。」

およそ高さにして30メート程のところで止まり、其処から重力に逆らう事無く下へ下へと降下を始める。

「くそ、今までは此処まで飛ばなかっただろ。」

そんな愚痴をこぼしている内にも、地面は迫って来る。

「膝を使って。」

祈るように言葉を発し、地面につく瞬間、全ての衝撃を体全体で和らげるように意識して着地する。
冬馬の心配は無用だった、着地は見事に成功したのだ、しかも大した衝撃が身体に掛かった感覚も無い。

「すごいわね〜、一気にあそこまで上がるなんて、私でも出来ないわよ。」

「え、ああ〜うん、ありがとう。」

自分が思っていた以上の力が自分に備わっている。
この事実に驚愕していたせいで、霊夢の言葉に返事をするものの、生返事になってしまう。

「どうしたの?大丈夫?」

「いや、なんでもない。」

冬馬の生返事を疑問に思った霊夢が、心配そうに顔色を伺ってくるが、直ぐに取り成して答える。

「よし。」

自分の力に自信が出てきた冬馬は、それなりに広い境内の中を、高速で移動してみる事にした。

その結果は、すさまじいものだった。
冬馬には他人の目にどのように映っていたのかは解らないが。
霊夢が言うに、最早、目で捉えるのは不可能な物だったと言う。
そして何より、結構な時間、身体を動かしたのにも関わらず、疲れも無く息切れ一つ起きていなかったのだ。

「飛べないけど、それをカバーするには十分な身体能力ね。」

再び部屋に戻った二人は、卓袱台をはさんですわり、霊夢が入れたお茶をすする。

「っで、冬馬はこれから行く当てなんて無いんでしょう?」

「え、そう・・・なるね。」

考えていなかった訳じゃないが、自分の力の事で頭が一杯になっていた冬馬は、その事を完全に忘れていたのだ。
 
「なら、落ち着くまで此処に居ればいいわ。
部屋は余ってるし、一人増えた所で生活が苦しくなることも無いしね。」

この瞬間、霊夢が女神に見えたのは言うまでもない。