二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: あまつき【天竜桜*〜ココロノ君へ〜*】 ( No.8 )
日時: 2010/05/15 18:16
名前: ターフ ◆lrnC2c/ESk (ID: 3c0JYUg8)
参照: http://名前変えたよ★(元はトコ)

梵天がこの森から去った数日後、菖蒲は変わりなく空を見ていた。
彼女の心が和らぐのはこの青い空だけ。
何も混じりも無い空が大好きだった。
サラサラと風に煽られた葉が木々の間を通って音を鳴らせる。
瞼を閉じ、深呼吸をしたその時………———。
「——あれ?俺…迷った?」
「——!」
ガサゴソと彼女がいる場所の目の前から、茶髪で変わった浴衣を着た青年が来た。
菖蒲は少し首を傾げた。
「誰ですか…貴方は……?」
その声に気付いて菖蒲の方に向いた。
青年は少し焦ったように言う。
「す、すみません!俺、六合鴇時って言います。…少し道に迷っちゃってしまったので」
苦笑してけろっとした顔をした。
菖蒲は少し亜然した。
ここの森には迷わないように地図があった筈なのだが、この鴇時と言う青年は持っていないようだった。
菖蒲は少しため息を付けて聞いてみる。
「何処に行きたいのですか?…知っている所は教えますけど」
「本当ですか!実は俺……——坂神神社に向かいたいんですけど」
「——…!」
菖蒲は驚いた。
天網とはまったく内容が違うのだ。
しかも人間など……——あまり来ない筈だ。
鴇時は少し首を傾げた後、言葉の続きを言わない菖蒲に言う。
「あの…大丈夫ですか?」
ハッと我に帰って少し苦笑して言う。
「ごめんなさい、少し考え事をしていたので……。坂神神社なら、此処から真っすぐに行って大きな木の左の道を進めばありますよ」
「本当ですか!教えてくれてありがとうございます!」
鴇時はペコリと礼をして、真っすぐの道を走ろうとしたら……——急に止まった。
菖蒲は行き成り止まったのに少し首を傾げた。
鴇時はくるっと菖蒲に向かって言った。
「あの…——せっかく教えてくれたので、あなたの名前は?」
「名前ですか…?」
「あっ、言えなかったら良いです!」
鴇時は苦笑して菖蒲に向かって言う。
菖蒲をフルフルと首を横に振って鴇時に返す。
「私の名前は園国菖蒲です。六合さん、また会えたら良いですね」
ニコッと鴇時に対して笑顔を見せた。
鴇時はまたペコリと礼をし走って消えて行った。
ポツンと残った菖蒲は少し呟いて言う。
「彼は……変わった人ですね」
六合鴇時……———。
何故か彼の笑顔に惹かれた。
これは何だろうか……。
三年と言う月日よりも今日が……——始まりだったのかもしれない。

      第5話 〜六合鴇時〜