二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: <  脱線 ! >【銀魂】2うp。 ( No.20 )
日時: 2010/06/01 19:48
名前: 帽子屋 ◆8ylehYWRbg (ID: vtamjoJM)
参照:                ────もう暴れまくれ!!




< 三 ! >


パトロール、という名のサボり。
昼間巡回ほど、面倒臭いモノったらねェや。

沖田はそんな思考の中で、いつもの様に平和なかぶき町の道を歩いていた。
天気は快晴。そんな天気でさえも沖田の心を憂鬱にさせた。
土方をバズーカで撃つのも飽きたし。
土方のマヨにタバスコ大量に入れるのも飽きたし。
土方に呪いをかけるのも飽きたし。
山崎は地味だし。

何もする気が起きなかった。
パトロールしている様で何もしていなかった。ただただ道を歩いていた。
甘いマスクのドS少年は、今日もつまらなそうに道を歩くのであった。

そんないつもと変わらない時間の中、沖田の耳を貫いたのはとても五月蝿い金きり声だった。

< 第三訓 やられ役って大抵は強いんだよ、最初だけ >

「キャアアアアアアッ!!」

女性の叫び声だった。
そんなキンキン声に沖田は少しよろめく。
その叫び声に、周りの人々も何だ何だと騒ぎ始める。

ああ? 何だってんでィこんな昼間から。
沖田は面倒臭そうに叫び声が聞こえた方へ目を凝らした。

沖田が居たその場から数百メートル離れたそこには、がたがたと震えた今にも泣き出しそうな顔の女性と、筋骨隆々な体つきの厳つい暴漢、
それと頭から顔へダラダラと血を流す黒髪の少女が居た。

その光景に周りはどよめき、沖田も目を見張った。

暴漢は割れた大きいビール瓶の口を握っており、
血まみれの少女の周りにはガラスの破片が落ちていた事から、暴漢はそのビール瓶で少女の頭をかち割ったと考えられた。

暴漢はもう錯乱状態に陥っており、ハァハァと荒い呼吸で胸を上下させていた。

『……いってェ』

血まみれの少女はそう小さな声で呟いた。

これは一大事だ、という事雰囲気が、辺り一面に広がる。
沖田もそれを感知し、その騒ぎの中心点へ駆けた。


『へぇ……、図体でっかいわりには、随分姑息な手段使うんだ? いたいけな女の子の頭かち割るなんて。私フラッフラなんだけど』

立っているのもままならない様子の少女は、そう暴漢に言う。
「あの子あんな状態になってまでまだそんな事言ってるよ」と野次馬達は呆れ、そして同時に心配をする。

暴漢はまた、「うあああ!!!」と言う叫びと共に欠けて威力が増したビール瓶を、少女の頭に向かって振り上げた。

今度こそ終った。
あの少女の人生は今ここで終ってしまうのだと、周りが思ったその瞬間だった。

パァンッ!! と何かが発射された音がし、
「いっ!!」と暴漢は苦痛の声を上げた。

少女の手には拳銃が握られており、その銃口からは紫色の煙が上がっていた。
ガチャンッという音と共に、暴漢が握っていたビール瓶は跡形も無く地面に落ち、割れていた。

やっと現場の近くに辿り着いた沖田も、その衝撃の瞬間を目撃していた。

少女が拳銃を暴漢の手に撃ったのである。
その少女の表情は冷徹さと怒りを帯びていた。

『それ以上やるんだったら、今度はどたま打ち抜くけど、どうする?』

暴漢の顔がサァッと青くなる。野次馬の血の気も引く。

「あ、あっ、お、鬼……!!」
暴漢は先程と打って変わって、恐ろしさのあまりその場に尻餅をついた。

『え?』と少女は口元を吊り上げる。

『今の私が鬼だったら、さっきのアンタは何なのさ』
そう言い、少女は空に向かってパァンと1発、銃を撃った。
『ほら、まだやるの? それとも逃げんの? 早くしないとさ、私キレちゃうから』

この一言で野次馬達は悲鳴を上げ、その場から逃げ出す。
暴漢はもう泡を吹いて倒れそうなくらい真っ青な顔色だった。
返事を返さない暴漢に苛々が最高潮に達した少女は、拳銃の引き金にそっと指を掛けた。

その時である。
座り込んだ暴漢と少女の間にシュッと出てきた、一本の刀。

「はい、そこまででィご両人」

沖田であった。

沖田を見やった少女は、つまらなそうに拳銃を懐の中に入れる。
暴漢はもう白目を剥いて仰向けに倒れ伏した。

少しだけ肌寒い風が、沖田と少女の間に流れた。
暫しの沈黙の間、両者は睨み合っていた。

『…銃刀法違反の疑いとかで、もしかして連行されちゃったりする? 私』

少女が口火を切った。
参ったという表情で、両手を上に上げる。

「疑いじゃねェ、現行犯逮捕でさァ」

沖田はそう言って手錠を出し、少女に掛けようとする。
しかし、少女はそれを払いのけた。

『手錠は付けないでよ、手首に痕が残ったら嫌だから』

< 続く ! >