二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

好きと好き ( No.221 )
日時: 2010/09/10 19:29
名前: 宮園 紫奔 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
参照: 書いてるほうが恥ずかしくなるわ!

(好き!)


「きっどーう!」

 後ろからまるで犬のように飛びつかれ、ぐらりとバランスを崩してしまう。うあっと声を上げ、なんとか倒れないように抵抗を試みる。しかしその抵抗は全くの無意味に終わり、鬼道は塔子もろとも地面へと倒れこんだ。
 悪意の全く無い、純粋で明るい塔子の笑顔が、腕をつき立ち上がろうとする鬼道の顔を覗き込んだ。無理矢理に目を合わせられた鬼道は、居心地悪そうにすぐに目線をあらぬ方向へと向けた。

「あはは、ごめんね! 鬼道、大丈夫?」

 悪戯っぽく鬼道に笑いかけて、そう問いかける塔子。立ち上がりマントについた砂をはらっていた鬼道は、そんな塔子を見てため息をつき、少々呆れたような——それでいて、楽しそうな——表情で、言った。

「……塔子、お前は犬か」
「え、あたし猫のほうが好き」

 全く見当違いの言葉を返してくる塔子を見て、さらにため息を吐き出す鬼道。
 すると塔子はにっと笑みを口元に浮かべて——

「でもね、鬼道のほうがもっと好き」

 さらりと、なんの恥ずかしげもなくそういった。な、と鬼道の口から戸惑いの声が洩れ、頬に赤みがさす。
 俯きながら、えへへっと女子らしく笑っている塔子に、鬼道が言った。

「……俺もな」

 今度は、塔子が赤くなる番だった。


(大好き!)