二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 鏡音 瑞様リク ( No.522 )
- 日時: 2010/10/16 00:45
- 名前: 氷橙風 ◆aeqBHN6isk (ID: yjS9W/Zh)
+*命の陰に約束*+
唐突に胸元から喉へと噎せ返る苦痛が襲いかかり、苦しさに耐えられずに吐き出す。赤い飛沫が空中を舞って、白い汚れのないベッドのシーツに染みていく。ああ、また汚してしまった。
「リン? 大丈夫?」
「……れ、ん」
そこまで大きくはなかったと思うけど、その音を聞いたのかレンが駆け寄ってきた。焦っているのを隠しているだろうと思われるレンの綺麗な顔は、双子の姉としても自慢できるもの。
あたしなんかのために、こんな綺麗なレンが色々してくれていいんだろうか。レンには、たくさんの女の子が待ってるっていうのに。
「これ、薬……。もう苦しくない? 飲めるか?」
「うん、平気だよ」
本当は喉元が焼けるように熱くて喋ることすら思い通りにはいかないけど、これ以上レンに心配させたくなくて嘘をついてしまう。だけど苦しむのはあたしだけだからいいんだ。それに薬を飲んだら、ちょっとはこれもよくなるだろうし、結局は嘘をついてないことになる。……わけないよね。
「よかった。じゃあここ、水置いておくから。困ったことあったらすぐ呼んで」
レンが、ベッドの傍にあるサイドテーブルに水の入ったコップを置いて、黄金色のベルを指さす。
あたしが大声をあげることのできない体だとわかっているレンが、遠くにいても呼べるようにと置いてくれたベル。
こんなことまで道具がないと駄目だなんて、あたし、本当に駄目なんだなあ。
何度も感じていることなのに、またそんな思いが沸き立ってくる。
大きな窓の向こう側にある子供の遊ぶ光景を見ると、自分がどうしようもなく情けなくなって。レンが部屋から出ていったのを確認した途端、目元に熱が押し寄せて、また泣いてしまった。
**
もともと体は弱かった。でも、その時はまだ少なかった医者との守り事をきちんと守っていれば、今頃あたしも元気に遊んでいたはずだった。
なのに、「なんとかなる」なんて馬鹿らしい勘違いをして、外で駆け回って。それはとても楽しかったけど、あの時あんなことしなかったら今だってその楽しさは続いていた。馬鹿だ、本当に。
このままじゃいろんな人にずっと迷惑かけていく。あたしが馬鹿だったから。どうしよう、どうすればいいの? 誰か教えてよ、ねえお願い。
本当は知ってるんだ。どうすればいいのか。
あたしがここから消えてしまえば大丈夫。消えてしまえば、死んでしまえばいいんだから。
それはとても簡単なことで、あたしにとっては天使のような選択。
だけどね、あたしはそれを絶対に選ばない。それだけは決めてるの。約束してるもの。きっとあの人は覚えていないんだろうけど——。
**
「リン、今日珍しい果物が買えたんだ。リンも食べられると思うから、今持ってくる」
朝、にこっとした笑顔でそういったレン。その笑顔は、窓から入ってくる太陽の光よりも眩しくて、——遠くて。
でもいくら遠くても、心配することなんてないの。あの人の記憶に残っていなくたって、あたしの心にはずーっと残ってるから。あの約束は消えることなんてないから。
「レン、」
振り向いた彼に、そっと呟いてみた。
(どこにいたって、レンとあたしはずっと一緒だよ)
+
調子に乗っていることがバレバレですね。
病気がち× 重病○ どういうことでしょうこれは。なんか自分好みのものに改造しまくりです……すみません。
リク、有難う御座いました!