二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 爆想サザエさん ( No.9 )
- 日時: 2010/09/12 17:18
- 名前: ACT (ID: HQL6T6.Y)
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「ただいま、帰ったぞ〜」
玄関で呼んだが返事はない。昔は「お父さーん」とカツオ達が迎えてくれたものだ。しんみりとした気持ちになる。彼、磯野家の主、磯野波平は長年務めてきた山川商事をリストラされた。不況のあおりという理由もあるが一番の理由は、フネとワカメの死であろう。そのせいで仕事中でもボーっとすることが多くなり、仕事が手に付かなくなった。そしてリストラである。
不幸なことが立て続けに起こった為か、大事に育ててきた頭のてっぺんにある一本の毛も無くなってしまい、頭は焼け野原のようにつるっぱげだ。これに関しては泣きたくなる思いの波平。
結局一人で居間に来たがそこにはサザエしかいなかった。ボーっとテレビを観ている。カツオはまた帰ってきていないようだ。
「サザエ、飯」
「あっ作るの忘れてた。ごめんごめん」
すっとぼけたような顔でサザエが言う。
昔なら、「忘れただと、ごめんで済むものか、この馬鹿が!」と言うだろうが今の波平にはそんな元気残っていない。そうか、とだけ言うと寝室へ向かった。ここ最近サザエの様子がおかしい。先程のようなことが何度もある。やはりあの事件の影響なのだろうか。
波平も事件の影響というものがある。それはギャンブルだ。今日もパチンコに行ってきたばかりだ。金は10年前から高級盆栽を買うために貯めておいたもので補っている。しかし数カ月前から底を尽きたため、ある所から借金をしている。それがとてつもない額になってきている事に波平はまだ気づかない。
止めたいが、次こそは勝てると思ってしまうのでなかなか止められない。儲かった時の快感が忘れなれないのだ。典型的な破滅タイプである。
寝室に着いた彼は自分で布団を敷くとそこに寝そべった。
自分もいずれはフネのようになってしまうのか、と極度の不安に駆られる波平であった。