二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: [銀魂] れんれん.  |  ( No.70 )
日時: 2010/10/09 10:36
名前: みんと水飴 ◆DUNn3svPYc (ID: nQ8cdthw)
参照: http://amenomori22.jugem.jp/

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ゆるぅり、ゆるぅり、
頭を撫でられる柔らかな感覚が懐かしい。
瞼を開けたいのに重くて、重くて───。
少女はこの感覚を知っていた。
淡く、薄れかけたあるだくの記憶に深く刻まれている名前を、そっと呼んでみる。

「……銀、兄?」

ピクリと頭部を行き来していた手が反応したのが解った。しかし───そこからまた少女の意識は沈んだ。

 ◇

瞼の裏が僅かに光を捕えて目を開ければ、そこには見慣れた自室の天井では無くて。
見覚えのある顔が、目覚めたばかりの少女の顔を覗いていた。

「おはよう」
「お早うございます」

目覚めた少女は、昨晩神威と逢った時とは違う瞳をしていた。
穏やかで、穢れを知らない瞳。
見当外れかなぁ、と神威は思ったが、阿伏兎と約束をしてしまった手前、暫くはここに置かなければならない。

「昨晩はあの屋敷から自分を連出して頂き、有り難う御座います」

穏やかで、じわりと耳に染み入るような声が、少女の口元から発せられた。

「いいんだヨ。俺が気に入ったから連れて来たんだ」
「では、気に入らなければ?」
「あいつ等と同じ様に殺してたね」
「そうですか」

神威の言葉に一瞬だけ、急に雰囲気が変わった。
昨晩と同じ、修羅の匂いが少女からした気がした。
昨日は神威が背負ってここまで連れてきた。
歩きながら軽く自己紹介をして、お互いの名前を知った。


少女は無黯と言った。


数年間あの屋敷のあの御簾の内に“姫”として閉じ込められていたらしい。

「外の空気はお体に触りませんか? お姫様、」
「その呼び方はやめて下さい」
「いいじゃないか、素敵だけどねー」

する彼女の表情は綺麗だった。
透き通るような白い肌、橙色の髪と紺碧の透き通るような瞳。
そしてほんのりピンクの頬に、色づいた唇。
姫と呼ぶのに相応しい容姿だった。

「“素敵”って言葉が似合うのは、神——」
「お取り込み中悪いけど神威、そろそろ任務出発の時間だよ」

無黯の台詞は、突如聞こえた声によって遮られる。
振り返れば、全身を神威と同じような異国の服に身を包んだ、青年が立っていた。
外見だけ言うなら神威より年上にも見える。
黒い髪と所々に入れられた紅色のメッシュが何とも印象強い。

「邪魔しにきたの? 祇跡。殺すよ?」
「今何時だと思う?」
「……あ、ほんとだ。つまんないのー」

祇跡と呼ばれた青年と神威は笑いあってるが、間には殺気めいたひんやりとした空気が流れていた。
その様子を見て、無黯はクスリと笑う。



何故だろう。何処か懐かしい。



「無黯、俺達任務だから行くヨ?」
「……はい。神威さんも祇跡さんも気をつけて」

神威の声で我に返った無黯は、笑顔を添えて二人に手を振ると、ほんのり頬を染める祇跡。

「どうしたんだい祇跡、顔が赤いじゃないか。二日酔いかい? 随分余裕じゃないか。
 仕事をナメてるのかい? 死ぬヨ?」
「神威こそ、青筋立てて顔色悪いよ? 寝不足? 泣いたって、助けてやらないから」

今にも喧嘩が始まりそうな二人は、言い合いながら部屋を出て行く。
その二人の姿を見届けてから、無黯はもう一度クスリと小さく笑った。


(兎と猫)
今よりもっと君を、笑顔にできますように