二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: テニスの王子様 〜お姫様現る!〜 ( No.108 )
- 日時: 2011/12/07 16:25
- 名前: 黒羊 (ID: epn654T8)
〜闇の雨〜
夜は明けた。
勝者、敗者はまたそれぞれの日常に戻る。
テニスから離れる者もいれば、またテニスに励む者もいた。
そして、黒宮柚子香は———
* * *
青春学園の校舎に、授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。中学生達は、部活へと足を速める。
柚子香もそのうちの一人だった。それに、今日は特別だ。なんといっても“あの”越前リョーマと対戦するのだから。
着替えを済ませてコートに着くと、すでに賑わっていた。今日の試合のうわさをしている部員たちが、準備運動をしたり乱打をしたりしていた。柚子香が来たのを見つけたカチローとカツオと堀尾が、駆け寄って来た。
「黒宮さんっ!」
「今日、試合だね…」
「越前は強いぜ〜? あいつが勝つかもな!」
「「堀尾君っ!」」
無神経な堀尾を、二人がたしなめる。だが柚子香はたいして気にしていないようで、ガットをいじっている。
「あのっ 黒宮さん頑張ってね!」
「楽しみにしてるから…」
カチローとカツオは、堀尾のほおをつねりながら言った。
「ん、ありがと…」
今日の部内の様子から見るに、リョーマに勝って欲しいという考えの者が多いらしい。それもそのはず。2・3年生は去年のリョーマの活躍を目の当たりにしているし、いくら柚子香が強いとはいえ所詮女子。都大会で勝てるメンバーとしてはリョーマの方が力があるだろう……
そして、試合は始まった。
「ザ・ベスト・オブ ワンセットマッチ! 越前サービスプレイ!」
リョーマは球を2,3回弾ませて、柚子香を見据えた。柚子香は、構えの姿勢を取る。
大きくトスを上げ状態をそらしラケットを振り下ろす。弧を描いた球は柚子香の顔面へと向かっていく。
柚子香は、とっさに 避けた。
ガシャン、と フェンスに球が当たる音が静寂を破る。
「でたーーっ! 本家ツイストサーブ!!」
、、
——本家?
柚子香は疑問に思った。自分のツイストサーブが越前リョーマのコピーというわけではないのに、どうして。
——まぁ、父さんのコピーといえばそういう事になるんだけど…
——なにも越前リョーマがツイストを編み出したわけじゃないからアイツが本家ではないよね
「ねぇ」
そんな考え事をしていた柚子香に、もう次のサーブの構えをしたリョーマが言った。
「どんどん行くよ」
そして、またツイストサーブ。柚子香は軽いフットワークでそれを返す。リョーマは、柚子香のいる所とは逆に返球する。そのままクロスでのラリーが続いた。
「2ポイント目でこのラリー…」
「長いな…。それに深い球だ」
柚子香の打った球を、リョーマが素早く前に出てボレーをする。するどいボレーはそのままコートの外に出て行った…。
「サーティ・ラヴ!」
太陽が照りつける。
次のポイントも、クロスでの深いラリーが続く。そして柚子香は前に出て…
ボレーを決めた。
さっきのリョーマの取ったポイントとまったく同じコースに、同じ速さで回転で。
* * *
スマッシュされれば、スマッシュし返す。
ドロップボレーなら、ドロップボレーで。
目には目を、歯には歯を、技には…技を。
取ったり取られたりの“ゲーム”をする。
それは、まるで鏡を見ているような錯覚。
柚子香は完全に
遊んでいた。
「スリーゲームス・トゥー・オール!」
蒸し暑いと感じた柚子香はジャージを脱ぎ捨てる。
部員のみんなが見つめる中、リョーマは言った。
「ねぇ…アンタさ…」
何かを思い出すようにして彼は言う。
「真似するのは確かにおもしろいけどそれだけじゃ勝てないよ」
「まだまだだね」
【続く.】