二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第四章 ( No.41 )
日時: 2010/12/22 15:14
名前: 双海 (ID: BdM.OEZp)


 ベッドの縁に座っていた僕の頬を一筋の冷たい液体が伝う。
 その液体は滴り落ち、僕のズボンに幾つもの染みを作る。
 その染みが消えると共にまた、新しい染みができる。
 それを見て初めて僕は、その液体が涙だということを理解した。

 どうして、泣いているんだろうか。

 思い出すのはさっきのこと。

 あれから僕は、その場にナイフを捨て、一目散に王宮へと走った。
 そして、王宮で、始めに会ったのはネル。
 ネルは僕の格好を見て、事情を察したらしく、三時まで休んでいていい、と言ってくれた。
 
 ネルにとって僕は、弟のような存在らしく、何かと僕に気を遣ってくれる。
 ネルのその気遣いは嬉しいが、今の僕には逆効果であった。

 僕の手を伝う、あの生温かい液体。
 彼女のあの苦悶の表情。

 一人になると、そんなことばかりを考えてしまう。
 それなら、仕事に没頭していた方が良かった。

 未だ頬を流れ続ける涙。

 とめどなく流れる涙を、僕は止めることができず、ただ泣いた。
 こぼれそうになる鳴咽を抑えながら、…ただただ泣いた。
 女々しいのはわかってる。
 けれど泣き続けた。

 泣くことが、彼女への罪滅ぼしになると信じて。