二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【ハリー・ポッター】白と黒の鎮魂歌<1話UP!> ( No.7 )
- 日時: 2010/12/21 16:22
- 名前: リオ (ID: slitpE5G)
第1.5話 「もう一人の女の子」
「あの人は無実だわ! 何も、何もしてない!」
泣き叫ぶ女性。その腕には小さな赤ん坊が抱かれている。その女性を宥めつつも説得しようとしている男—魔法省の人間だろうか—は苦い顔をした。
「そうよ、ね? アミ—…!」
アミ、と呼ばれた赤ん坊は反応するかのようにキャッキャッと笑った。
女性は愛しそうな目でアミを見ると、男をキッと睨みつけた。冷ややかな青い瞳、しかし今は悲しみと怒りが混ざったような赤い瞳をしている。男がたじろいだ。
女性の手に赤ん坊はもう居らず、ただ一本の木—いや、杖だ—がある。
何時の間に、と男が呟いた刹那の事だった。
「出て行って! じゃないと殺すわ!」
女性の高い声が綺麗に手入れされた屋敷に響き渡った。しかし、誰一人此方に来るものはいない。
それもそのはず、この屋敷に住んでいるのは「屋敷しもべ妖精」と赤ん坊と、この女性だけなのだから。
女性相手に冷や汗を浮べる男の姿はそれはそれは滑稽だ。もう一度女性が口を開いた。
「出て行って」
冷ややかな声—男は慌ててバシッという音と共に消えた。女性は満足そうに息を漏らすと、バタンをドアを閉めてアミを抱えあげた。
「アミ、—あの人のように、強くなってね」
「あーっう!」
アミは嬉しそうな声で返事を返すと、にっこりと愛らしく笑った。女性も思わずにっこりとした。
「奥様!」
其処に甲高いキーキー声が響いた。普通の赤ん坊なら泣き出すのだろうが、アミはまったくと言っていいほど泣かない。それどころか、笑っている。
何、と女性が振り向けば其処には「屋敷しもべ妖精」と呼ばれる—外見的には醜い妖精—が居た。
「ああ、さっきの男なら逃げていったわ。気にしなくて結構よ。それより今日はもう休むわ」
「わかりましたです、リン様!」
「おやすみ」
女性—リン、というらしい—はアミを抱き上げて二階へと上がっていってしまった。