二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.101 )
日時: 2011/06/25 22:03
名前: 勾菜 ◆QyplZtgIXg (ID: 9Q/G27Z/)

〜麗菜〜

「麗菜…お前は俺に何を隠している?」

この言葉を聞いた瞬間、心臓が凍りつく。
私は倒れないようにするのが精いっぱいだった。

そんな様子をいぶかしんだ青龍が険のある声で問う。
「麗菜、何を隠している?」
「関係…ない、でしょ」

震えそうになる声を必死にこらえる。
ともすれば、体が震える。
怖い怖い怖い…
急速に顔が青ざめていく。
「麗菜…おい!」
そのまま一歩近づこうとする青龍に私はそのまま下がる。

「来ないで…お願いだから…」
頭の中に何かをささやく声が聞こえる。
『妾のもとへ…来い、娘。妾にはそなたが必要なのじゃ。』
その声にゾクリと悪寒が走る。
怖い怖い怖い…恐ろしい——!

「麗菜!」
さすがに不審に思ったらしい青龍は、怯える麗菜に近づき肩に触れる。

「…私に触れるな、十二神将青龍!」
その言葉に青龍はすっと無言で手を離す。しかしその眼にはなぜ、という問いかけの言葉が宿されている。
私は懐からピシリとなにかが割れる音を聞いた。
しかしそれを気にしている余裕はなかった。
瞬間、体にあふれる神気。その力の奔流は凄まじい。
しかし、それに臆さず青龍の深い蒼色の瞳を見つめる。その眼に宿るのは神に近しい鋭い瞳、だがどこかやさしい雰囲気いを纏っている。
そのまま、私は口を開いた。
「宵藍、これが……私が隠していたこと。私たちは神の血をひいている。私は父の血を濃く引いているから…緤菜は母の血のほうを多く引いたようだけど…」
そういって私は目をぎゅっと瞑る。
相変わらず頭の中に恐ろしい囁きは聞こえ続けている。

「部屋に戻る…落ち着いたら、探しに行くから…宵藍は探しに行っていて。」
私は顔を上げずにその場を立ち去った。
小さくごめんと呟きながら。


部屋に戻った麗菜はくずおれるように寝台に倒れこんだ。
息苦しいほどの圧迫感。それを抑え込むように寝台の上でぎゅっと体を丸める。
そして、頬をつたう涙に瞠目する。しかし、それはそのままにする。

それは、神格の差。神の末席に連なる十二神将より上の神位をもった神の力。
私は一番やりたくなかったことを…誰よりもこれを使いたくなかった宵藍に初めて使ってしまった。
それが悲しい。

その時、空間が歪み廉狼が現れる。
「っ…どこから——っ!?」
強引に上向かされる。
「いた…いっ…はなし…て」
「だいぶ、染まったね。そろそろ潮時かな…ちょっと眠ってね」
「ちょっと…っ……」
廉狼が手をかざすとふっと意識が遠のいた。
その際、頭の片隅によぎるのは…———ん…

完全に落ちたことを確認し、廉狼は現れた時と同じように空間を渡り麗菜を連れ去った。


*             *             *
ほの暗い明かりの中に長い黒髪をおろし、道反の巫女に似た装束をまとった女がのろのろと目を開く。
そのそばには廉狼が控えていた。

「時は、満ちた。あの娘の心も完全なる闇にもうすぐ染まる。あの娘…時司大神の娘…」
「…………様。」
「さあ、廉狼。あの娘…緋月麗菜を妾のもとへ連れてまいれ。そのあと、妹のほうに妾の正体を告げて来い」
「…麗菜のほうはわかりますが……よろしいのですか?」
「かまわぬ…麗菜…あれは妾の巫女としてここに置く。あとは任せよ。わかったのなら、行け」
よく通る声で厳かに命じる女にはどこか威厳を感じた。
「御意…」
そのまま廉狼は姿を消した。

女の命を受けた廉狼が緤菜たちの前に現れるのはそれから少したった時だった。


翡翠≫
敵の名前はよろしくね〜