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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 少年陰陽師*双月恋妖絵巻* ( No.155 )
- 日時: 2012/02/24 19:49
- 名前: 翡翠 (ID: VYLquixn)
〜緤菜〜
二つの声が私の脳裏に強く強く響いた。
一つは、父様の声。
『緤菜、この体をお前に返すよ。……借りた礼だ。時の力の加護をお前に与えよう』
と、そう優しい笑顔を浮かべながら言い残し、この体から去ってしまった。
そして、それに入れ替わるようにして私の耳に心に届いた声は、大切な人の声……麗菜のものだった。
————緤菜!!
力強く発せられた言霊は私の意識を再び現実へと引き戻した。
瞼を開け、視界を染め上げたのは一面の“白”だった。
その白い世界で自由に動けることが不思議だった。
……目が慣れてくると状況が良く分かった。
この中で動けるのは私と、麗菜だけということも。
あの、妖気を放っていた珠櫻でさえも止まっている。
そして、これは父様の神気。
視線をずらして、麗菜の姿を探す。
が、真っ先に目に映ったのは麗菜ではなく、囚われてる昌浩の姿だった。
……取り返すなら私達しか動くことの出来ない今がチャンス。
そう思い、昌浩の方へと駆け寄った。
不思議と体は軽く、霊力に満ち溢れてる気がした。
——……だけど、これは間違いだった。
何故、最初に麗菜を探さなかったのだろう?
完全に油断していたのだ。
この中で、私達以外に、もう一人“時”の影響を受けずに動ける者が居たというのに。
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